ファッション

「ユニクロ」21−22年秋冬展から【前編】 すべての人の、より健康的で、よりよい生活のために

 「ユニクロ(UNIQLO)」2021-22年秋冬の展示会に行ってきました。コロナ禍を背景に、引き続き機能性や快適さの追求やアウトドアシーンを意識したデザインが豊富でしたが、一方で都会的なムードのクリーンなアイテムも打ち出しており、「ファッションを楽しむ」といった気持ちが久々に戻ってきている印象を受けました。今回の記事では、前者の「機能性や快適さの追求」「アウトドアシーンを意識したデザイン」について紹介します。後者についてはまた別記事で。

 秋冬は4つの編集軸で商品を構成しています。1つ目は、「アクティビティーと日常生活との境目がなくなること」を意識した“フリーダム・イン・モーション(FREEDOM IN MOTION)”です。スポーツウエアやアクティブウエアではない日常着も、機能性や快適性を高めることでよりよいものになる、という考え方は「ユニクロ」の幹の一つですが、世の中全体のニーズとしてもそういった傾向はますます強まっていると感じます。スポーツメーカーやアウトドアメーカーが軒並み業績好調なのも、単純にキャンプがはやっているからというのではなく、服に機能性や快適さが求められるようになった結果、日常着としてもスポーツウエアが買われるようになったから、ということなんだと思います。

 「ユニクロ」流のアクティブウエアと日常着の融合としては、例えばメンズのワークジャケットをジャージーで作ってゴワつきを抑えていたり、ウィメンズのストレッチジーンズで、腰回りがゆったりしたペグトップシルエットを企画していたり。コロナ禍で自転車人気も世界的に高まっているといいますが、これらの服なら自転車を漕ぐ際も動きを邪魔しません。また、定番の“ウルトラライトダウン”では、室内着としてのニーズが高いことを受け、表地をより柔らかく仕立て、サイドスリットで座ったときなどのもたつきを抑えたカーディガンタイプをウィメンズで出していました。

素材や細部のアップデートで定番商品をより快適に

 2つ目の軸は、まさにアウトドアシーンを意識した“ニード・フォー・ネイチャー(NEED FOR NATURE)”です。日常の防寒インナーとしてすっかり定着している“ヒートテック”は、ウィメンズでムレにくくするドライ機能を追加し、メンズは繊維を細くすることで、着心地のよさをさらに追求。日常からキャンプやハイキングなどのシーンまでカバーします。シームレスダウンや“ウルトラライトダウン”では、腕を動かしやすいように袖付けのパターンを変えたものを複数企画していました。サステナビリティの意識も引き続き拡大。“ファーリーフリース”は、21-22年秋冬からメンズだけでなくウィメンズも全て再生ペットボトル繊維製にするそうです。

 3つ目の軸は、“レスト&リチャージ”と名付けたホームウエアやリラックスウエアのカテゴリー。21年春夏にルームウエアとして企画したウィメンズのサテン地のパンツは、実際には外出着とする客が多かったことを受け、インナーショーツなどのあたりが出ないように生地をやや厚めにアップデートしました。人気の“ヒートテック毛布”に、敷きパッド、枕カバーが加わった点もポイントです。

 冒頭で「秋冬は4つの編集軸で商品を構成」と書きましたが、残りの1カテゴリーは「ファッションを楽しむ」のムードにリンクするものなので、次回の記事でご紹介します。このように書いてくると、“ウルトラライトダウン”や“ヒートテック”を筆頭に、毎シーズン出している定番商品の素材やデザインを少しずつアップデートすることで、より着心地や機能性を高めていることに気づくと思います。「ユニクロ」が取り組むこうしたアップデートの考え方については、昨年秋冬の展示会の記事も参照ください。

「服の基礎研究所」設立、アスリートの声を日常着に

 最後に、今回の展示会では6月7日に発売する「ユニクロプラス(UNIQLO +)」の商品も展示していました。「ユニクロプラス」とは、スウェーデンの現役トップスポーツ選手ら13人からのフィードバックをもとに開発した、「アスリート仕様のLifeWear」商品群です。アスリートの求める機能性を実現するために、ユニクロは有明本部内に「服の基礎研究所/ラボ(人工気象室)」なる施設を19年に設け、「世界のあらゆる人々の体形、生理、生活環境を研究し、科学的視点でLifeWearを開発」するように実験を重ねてきたのだとか。

※ユニクロはスウェーデンオリンピック・パラリンピックチームとメイン・オリンピック・パートナー兼オフィシャル・クロージング・パートナー契約を結んでおり、東京五輪・パラ五輪のスウェーデン代表選手団に選手団制服や競技用ウエアを提供しています。

 同研究所の存在は、実は今回初めて明らかにされました。同様の研究施設は、機能性の追求が他社との最大の差別化ポイントになるスポーツやインナーの専業メーカーは持っていたりしますが、ユニクロはそういった専業メーカーではなく、あくまで老若男女に日常着を提供する総合SPAです。そんなユニクロも今後は同研究所を旗振り役に、専業のスポーツメーカーと同じレベルで機能性や快適性の研究を進めていくぞ、ということなんだと思います。

 ユニクロはこれまでも、テニスのロジャー・フェデラー(Roger Federer)選手やゴルフのアダム・スコット(Adam Scott)選手、スノーボードの平野歩夢選手らとグローバルアンバサダー契約を結び、彼らの声を取り入れた商品開発は行っていました。今回、研究所ができたことでそういった動きがますます進み、その成果によってわれわれ一般人にとっても着心地のよい日常着ができるということですね。あらゆる人が、より健康的で快適に暮らせるための服。それが、ユニクロが掲げる「LifeWear=究極の普段着」なんだと改めて感じる展示会でした。

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