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服のサブスクに4000人が会員登録
コロナ禍で在宅時間が増えたことで、動画配信などのサブスクリプション(定額課金)サービスを利用し始めた人も多いのではないでしょうか。先日は、自動車メーカーのホンダがトヨタ自動車などに続き、サブスクに参入することがニュースになっていましたね。他にも、家具や家電などさまざまなサブスクが広がっています。
ファッションやビューティの分野でももちろんサブスクは広がっています。その中の一つ、大丸松坂屋百貨店が3月に立ち上げた婦人服の「アナザーアドレス」を体験してみましたが、「借りて着て返して終わり」ではなく、借りることで「ブランドに興味を持って、店頭に行く」ことも一定期待できるのかもしれないと感じました。「アナザーアドレス」は会員登録者数が既に4000人以上で、現在登録するとレンタル可能になるのは年明けからとのこと。注目度の高さがうかがえますね。
百貨店の高額サブスクの実力はいかほど? 大丸松坂屋の「アナザーアドレス」を体験してみた
東京都や大阪府など、9都道府県の緊急事態宣言が再延長されました。4月末以降、休業ないしはフロアを絞って営業してきた多くの百貨店やファッションビルなどは平日の通常営業再開へと向かっていますが、とはいえ引き続き平時とは異なるムードもあり、思いっきり買い物が楽しめないことに息が詰まる思いをしている人は多いと思います。こんな環境だからというわけではないですが、大丸松坂屋百貨店が3月に立ち上げたウィメンズファッションのサブスクリプションサービス「アナザーアドレス(ANOTHERADDRESS)」を体験してみました。「『メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)』や『マルニ(MARNI)』が借りられる!」と話題になったサービスです。
「アナザーアドレス」は1カ月に3着まで借りることができ、料金は月額1万1880円。配送料やクリーニング代は料金に含まれており、気に入った商品はそのまま買い取りも可能です。ちなみに、競合である「エアークローゼット(AIRCLOSET)」の類似プランは6800円(送料別)、「メチャカリ」は5800円(返却手数料別)。「アナザーアドレス」はそれらの約2倍の料金設定ですが、前述の「メゾン マルジェラ」「マルニ」だけでなく、「3.1フィリップ リム(3.1PHILIPP LIM)」など、ファッション好きにはよく知られた海外デザイナーズブランドを多数ラインアップしていている点が競合との差別化ポイントです。
利用する際は、まず公式サイトで会員情報を登録します。LINEアカウントとの連携も可能で、登録は非常に簡単。LINEと連携すると、以降は新着商品やおすすめアイテムの紹介、返却案内などが全てLINEで届きます。通常のメールだと埋もれてしまいがちなので、LINEでつながるという形は私は非常に使いやすいと感じました。何か疑問点が発生した場合も、LINEでメッセージを送れば半日ほどでカスタマーサービス担当者から返信がもらえました。
“自分のほしい服が自分で分かっている人”向け?
会員登録が済んだらいよいよ服を借りるステップへ。競合サービスは好みのテイストを伝えると、それに合わせたスタイリングを自動で送ってきてくれますが、「アナザーアドレス」は自分でサイト上の写真や説明を見ながら借りる商品を選びます。ブランド別やアイテム別、サイズ別で検索ができ、目当てのブランドがある人や、“自分のほしい服が自分で分かっている人”にはすごくいいサービスだと思います。ただ、「“自分のほしい服が自分で分かっている人”って、実はそんなにいないのでは?」とも思うんですよね。正直、私も年齢を重ねる中で最近はよく分からなくなってきています。
そんな人に向いているのがシーン別検索です。「デイリーワーク」「ウイークエンド」「ワークイベント(おそらくプレゼンなどを想定)」「アットホーム」「バケーション」「パーティー」「フォーマル(明るい色柄のパーティーに対して、モノトーン中心でよりコンサバな感じ)」「エッセンシャル」という8シーン別でアイテムを提案しています。今はニーズが減っていますが、結婚式用のゲストドレスや、外せないビジネスプレゼンの服など、借りる目的がはっきりしている人はシーン別検索が便利だと思います。
私は仕事柄、仕事着と週末着が非常にあいまいなので(コロナによる働き方の変化で、世の中の多くの人も同様になっているとは思いますが)、「デイリーワーク」「ウイークエンド」を行ったり来たりしながら借りるアイテムを探しました。そして、「せっかく借りるからには人気ブランドがいい!」という貧乏根性も発揮。その結果、選んだのは「マルニ」のワンピース、「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」のブラウス、プリーツスカート(=セットアップ)の3点でした。
写真のみでスタイリングを考えるのにやや苦戦
正直なところ、ワンピースとセットアップを選んだのは、スタイリングを考えなくていいからです。トップスとボトムス、アウターなどの組み合わせをイチから考えるのは、販売員さんと話しながら何度も試着ができる店頭ではとても楽しい行為ですよね(買い物好きや服好きにとっては)。しかし、写真だけでそれを行おうとすると、かなりのファッション練度が求められると私は感じました。サイト上にはスタイリングサンプルの写真がいくつか載っているのですが、それらのアイテムを一括で借りられるような仕組みには現状なっていないんですよね。ただし、借りようと狙っているブランドのサイズ感やクセなどをもともと熟知しているファッション猛者にとっては、お茶の子さいさいかもしれません。
そのように、自分でアイテムを選び、自分でスタイリングを組む、という点はややハードルが高いと感じましたが、今後会員データがどんどん溜まっていけば、「このアイテムはこちらのアイテムとよく一緒に借りられています」といった自動レコメンドも可能になるのかもしれないし、販売員やスタイリストによるレコメンド機能が搭載されることもあるかもしれません(あくまで私の勝手な想像です)。そうなれば、ファッション大好き層だけでなく、「忙しくて服を選ぶ時間が惜しい」「ファッションはそこまで詳しくないけど、立場上ちゃんとした服を着なければならない」といった女性にとっても、より使い勝手がよいサービスになるのではないでしょうか。
さて、いよいよ指定した商品が届きました。段ボールの中には薄紙も敷かれていて、梱包はとてもきれい。段ボールやハンガーは返送時も使用するので、取っておく必要があります。まず1着目、「マルニ」のワンピースです。ピンク地に大柄プリントという、普段自分では絶対買わないタイプの服をここぞとばかりに選んでみました。このように冒険ができるのがサブスクの醍醐味ですね。こちら、Sサイズが借りられていたので、「オーバーサイズの流れもまだまだあるし、Mサイズでいっか」と判断してみましたが、やっぱり私にはちょっと大きかった。ただ、同僚からは「春らしくていいね」と好評でした。
次は「エムエム6」のブラウスとプリーツスカートです。セットアップで着れば間違いがないし、それぞれをジーンズやセーターなどの手持ちの服ともスタイリングできたらラッキー、と思って借りてみましたが、その狙いは当たりました。特にプリーツスカートは非常に汎用性が高かったです。ここ数年、さまざまなブランドでプリーツスカートがシーズンを問わず売れていますが、改めて「やっぱりプリーツスカートは便利。そりゃあ売れるわ」と実感した次第です。あと、独特のサックスブルーもお気に入りポイントでした。「今後、店頭でも『MM6』のカラーアイテムはチェックしよう」と思ったので、サブスクにはそうした店頭への誘客効果も一定期待できるのかもしれません。
“銘品”アイテムのお試しの場としても期待
あっという間に時はたち、返却期限の1週間前となりました。LINEに返却日を知らせるメッセージが届くので、そのまま買い取りたい場合はここで購入手続きに進みます。私は返却期限当日が「WWDJAPAN」のオンラインセミナーと重なり、セミナーで「エムエム6」のセットアップを着ようと考えていたので「返却日に着ていて間に合うのか?」と当初ヒヤヒヤしたのですが、そんな心配は全くの杞憂でした。終業後、自宅で3着をダンボールに詰め、自宅最寄りのコンビニに持っていて、QRコードを読み込ませた後に専用のボックスにダンボールを入れればそれで終了!「メルカリ(MERCARI)」や競合のサブスクサービスなどと同じ配送の仕組みで、宛名記入なども不要。この点は本当に楽で素晴らしい仕組みです!
正直、ワンピースはサイズが大きかったこともあり1回しか着ませんでしたが、数カ月間サービスを継続利用していけば、サイズ間違いといった凡ミスも減ってより使いやすくなるはず※。
※サイズを間違えた際などは着用せずに返却することも可能。その場合、即次返却して別アイテムを借りることはできず、連絡したうえで1カ月間手元で保管し、他のアイテムと同時に返却する。次月以降、4点借りることが可能になる
あと、個人的には「“銘品”と言われているけれど、実は手に取ったことがない」というような服がもっと充実していると、購入前に検討できていいなと感じました。「バーバリー(BURBERRY)」のトレンチコートや「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のテーラードジャケットといったアイテムが、果たして自分には似合うのか家で試せたらいいなと思いませんか?実際、「ローレン ラルフ ローレン(LAUREN RALPH LAUREN)」の金ボタンのブレザーは私が借りるアイテムを探していたときには出払っていたので、「“銘品”的なものって、需要があるのかも」と思った次第です(ラルフ ローレン社は米国で既にサブスク事業を始めていますね)。後輩のファッション大好き男性記者も「僕はデザイナーズブランドを店頭にも見に行くけど、敷居が高くてなかなか何着も試着できないので、レンタルして家でじっくり他のアイテムとスタイリングできる点がいいな」と話していました。同様に、「アナザーアドレス」を試着室代わりに使っているお客さんは多いのかもしれません。
4000人以上が登録、今登録すると年明けからレンタル開始の見込み
【大丸松坂屋百貨店広報担当者より】
3月のサービス立ち上げ時は会員枠を数百人に絞ってスタートしたが、結果的に4000人以上の会員登録があった。順次利用案内を送っているが、待っていただいている状態だ。待ち時間を短縮するため、取り扱いブランドや商品の拡充に努めている。現在の取り扱いは50ブランドで、サイトに掲載済みのアイテムは約3500着、倉庫にあるものも含むと計4000着。6月時点で会員登録すると、2022年1〜2月から利用いただける見込みとなっている。利用しているお客さまからは、「服を手放すときに生じる、もったいないという心の葛藤から解放された」「1カ月着てみることで、好きな服と似合う服のギャップに気付けた」「値段を気にせずさまざまな服が着られるのが楽しい」といった声があがっている。
コロナ明けのファッション・ウイークはどうなる? 夏から欧米でリアルショー再開
欧米では断続的に半年以上続いた新型コロナウイルスによるロックダウンや規制が緩和され、夏以降のファッション・ウイークの計画が続々と発表されている。EU域内では出発直前に受けた検査の陰性証明やワクチン接種完了の証明書があれば、ほぼ入国後の隔離義務なしで渡航できるようになっており、域外からもワクチン接種済みの観光客受け入れを再開するための準備が進行。現在落ち着きつつある感染状況が再び悪化しないという確証はなく暫定的な計画ではあるが、観客を入れたリアルショー再開の明るい兆しが見える。
2022年春夏コレクションのスタートを切るロンドン・ファッション・ウイークは、デジタルファーストのイベントとして、6月12〜14日に開催される。若手を中心に35組が参加するほか、リアルイベントやパーティーもいくつか行われる予定だ。続くミラノ・メンズ・ファッション・ウイークは、イタリア政府が6月15日から物理的なイベント開催を許可したものの、リアルショーを計画しているのは「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「エトロ(ETRO)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」の3ブランドのみ。グレン・マーティンス(Glenn Martens)新クリエイティブ・ディレクターのデビューとなる「ディーゼル(DIESEL)」をはじめ、「プラダ(PRADA)」や「フェンディ(FENDI)」など60ブランドは引き続きデジタルで発表する。一方、6月30日〜7月2日にフィレンツェで開かれるメンズウエアの国際見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」は、1年半ぶりにリアルでの実施を決定した。ただし、新型コロナの影響により出展社数は従来の1200から300へと大幅に規模を減少。例年1500人を超えるアジアからの来場者は見込めずEU内の業界人が中心になりそうだが、デジタルプラットフォームも活用して100回目の開催を祝う。
また、フランスでも政府からの許可が下り、6月22〜27日のパリ・メンズ・ファッション・ウイーク(以下、パリメンズ)と7月5〜8日の21-22年秋冬オートクチュール・ファッション・ウイーク(以下、クチュール)は、リアルのショーやプレゼンテーションが可能になった。各ブランドがどのような形式で発表を行うかはまだ明らかになっていないが、フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode)は「衛生状況の変化によるが、リアルイベントでは公的機関が定める対策やルールに従って、観客を迎えられるだろう」とコメント。リアルとデジタルのハイブリッド開催になるという。パリメンズの暫定スケジュールには、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」「エルメス(HERMES)」から「ジル・サンダー(JIL SANDER)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTTEN)」「ヴェトモン(VETEMENTS)」まで、計72ブランドがラインアップ。日本からは、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」「カラー(KOLOR)」「ファセッタズム(FACETASM)」「ダブレット(DOUBLET)」「ターク(TAAKK)」「サルバム(SULVAM)」など10ブランドが参加する。また期間中の25〜27日には、合同展「トラノイ(TRANOI)」もパレ・ド・トーキョーで開催される予定だ。
クチュール開幕前日の7月4日夜には、「アライア(ALAIA)」が、長年ラフ・シモンズ(Raf Simons)の右腕を務めてきたことでも知られるピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)新クリエイティブ・ディレクターによるクチュールとプレタポルテをお披露目。期間中には、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が53年ぶりにクチュールを復活させる。創業者クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)が使用していた当時のクチュールサロンを再現し、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける初のクチュール・コレクションを有観客のショーでお披露目する予定だ。さらに、「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PREVE)」もイタリア大使館でショーを行うことを発表。「シャネル(CHANEL)」も9カ月ぶりにゲストを招いたショーをガリエラ美術館で開催する計画を明らかにしている。発表形式は未定だが、阿部千登勢「サカイ(SACAI)」デザイナーがゲストデザイナーとして手掛ける「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のクチュールも、今季のハイライトになる。
ファッション・ウイーク外では、「ディオール」は6月17日にギリシャ・アテネで、「マックスマーラ(MAX MARA)」は6月29日にイタリア南部のイスキア島で、2022年クルーズ・コレクションのショーを計画。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、7月15日にイタリア・ベネチアで21-22年秋冬オートクチュールのショーを開催。会場には少数の観客のみを招き、デジタルでもライブ配信する予定だ。「サンローラン(SAINT LAURENT)」も、7月にベネチアでリアルショーを開くようだ。詳細は明かされていないが、タイミング的に22年メンズ・コレクションの可能性が高い。
秋以降は本格的にリアルイベント再開か
秋の海外コレクションサーキットのトップバッターとなる9月8〜12日のニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)は、コロナからの復活を感じられるものになりそうだ。同イベントについて、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA 以下、CFDA)は、衛生ガイドラインに準拠したリアルショーが再開されると共に、デジタルでの発表も継続されるだろうと推測。「トム フォード(TOM FORD)」や「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」など、すでにリアルショー開催の意向を示しているブランドも多い。また、独自のスケジュールで発表していた「マイケル コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」や、パリコレに参加していた「トム ブラウン(THOM BROWNE)」と「アルチュザラ(ALTUZARRA)」がカムバックするほか、ジェレミー・スコットの手掛ける「モスキーノ(MOSCHINO)」もミラノから参戦。アメリカ人デザイナーたちが結集し、NYコレを盛り上げる。さらに直後の13日には、メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art、MET)の衣装研究所(Costume Institute)によるアメリカファッションを掘り下げる展覧会開幕を記念したガラパーティーも予定されている。
その後のヨーロッパでのファッション・ウイークについてはまだ未定だが、観客の前で発表することへの思い入れが強いデザイナーは本当に多い。このままワクチン接種と制限緩和が順調に進めば、さまざまなブランドがリアルのショーやプレゼンテーションを再開させるだろう。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。