プロテニス選手の大坂なおみが心の健康などを理由に全仏オープンを棄権したことを受け、ナイキ(NIKE)など複数のスポンサーが同選手を支持する声明を発表した。
大坂選手は今大会への出場に先立ち、「選手のメンタルヘルスがないがしろにされている」として、自身の心の健康を守るため記者会見に出席しないことを5月26日に表明。30日に行われた初戦の後、実際に会見場での取材に応じなかったため、大会主催者は「契約上の義務を怠った」として同選手に1万5000ドル(約163万円)の罰金を科した。
同選手は31日、「大会やほかの選手、私の健康のためにも棄権することが最良だと思う。みんなテニスに集中してほしいし、大会の邪魔をしたくない」と棄権を発表。その際には、2018年の全米オープン以来、長くうつ状態に苦しんできたことも明らかにした。
こうした事態を受け、ナイキは31日、「われわれの思いはなおみと共にある。当社は彼女を支持し、心の健康に関する自身の経験を共有してくれた彼女の勇気を称えたい」との声明を出した。同社は19年に大坂選手とスポンサー契約を締結。キャンペーンなどに起用しているほか、コラボコレクションも発表している。
21年1月に同選手をブランドアンバサダーに起用したスイスの時計ブランド「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」は、「当社はアンバサダーが勝利したときばかりでなく、難局にあるときも応援している。現在、なおみは困難に直面しているが、いずれ戻ってきてくれることを心から願っている。彼女は素晴らしいチャンピオンであり、プロのテニス選手としても、個人としても、この時期を乗り越えていっそう強くなると確信している」とコメントした。
「タグ・ホイヤー」はLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が擁するブランドだが、やはり同社の傘下である「ルイ・ヴィトン」も、21年1月に同選手をアンバサダーに起用している。
大坂選手はほかにも、18年11月に資生堂とグローバル契約を結んでおり、サンケアブランド「アネッサ(ANESSA)」とミネラルコスメブランド「ベアミネラル(BAREMINERALS)」のブランドアンバサダーを務めている。「ベアミネラル」は、「われわれはなおみのテニスの技術はもちろん、その強さや勇気にもインスパイアされている。当社は彼女と共に立ち、心の健康を優先するという彼女の決断を支持する」と述べた。
全仏オープンは、全米オープン、全豪オープン、ウィンブルドンと共に“テニスの4大大会(グランドスラム)”の一つ。4大大会の主催者らは当初、大坂選手が今後も記者会見に応じない場合は、グランドスラムへの出場停止処分などを受ける可能性があるとの共同声明を出していた。しかしこうした対応への批判の高まりや、同選手が今大会を棄権したことなどを受け、「大坂選手にできる限りの支援をしたい。メンタルヘルスは非常に難しい問題であり、彼女が感じているプレッシャーや不安を自らの言葉で語ってくれたことを称賛する」と1日に共同で発表。「選手、ツアー、メディア、そしてテニス界とより広範囲に協力し、意義ある改善を行うつもりだ」と表明した。