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「マルジェラ」や「ジル サンダー」を擁するOTBとモンクレール、イタリアを代表する二人の実業家が語る

 OTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)=プレジデントとモンクレール(MONCLER)のレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)はこのほど、ミラノのビジネススクール、RCSアカデミーが主催するオンライン・トークセッションに登場した。その中で、ビジネスに対する考え方や後継者の計画から二人で行ったマウンテンバイクの旅まで、幅広い話題を語り合った。

 「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」「ディースクエアード(DSQUARED2)」などを傘下に抱え、3月には「ジル サンダー(JIL SANDER)」も買収したOTBについて、ロッソ=プレジデントは「(イタリアを拠点とする)ラグジュアリーブランド・グループを確立しようとしている。パンデミックによって拍車が掛かり、今は集合体を作るのにふさわしい時期だ」とコメント。かつてから親交のあるルッフィーニ会長兼CEOも「イタリアの実業家の中で、ラグジュアリー・グループを構築しようとしているのは、レンツォだけ。どんな時代にも資金力のある人はいるが、このようなビジネス文化がなければ成功する可能性はほぼない」と称える。そして、モンクレール自体も2020年12月に「ストーン アイランド(STONE ISLAND)」の親会社スポーツウェアカンパニー(SPORTSWEAR COMPANY)を買収しているが、ファッショングループを設立する考えがないことを改めて示した。

 二人のビジネスに対する考え方において共通しているのは、業界のため、従業員のため、そして自分たちが率いる会社の存続のために価値を創造するということだ。「今の時代に会社を経営するには、文化的な変化と新しいビジネスマインドセットが必要だ。全ての企業がこの変化に対応できるわけではないが、自分たちだけで成し遂げられない企業はいつでも提携することができる。OTBは各ブランドの飛躍的な発展を支援することに尽力するが、そのためには多くの投資と人材が欠かせない」とロッソ=プレジデントは語る。一方、ルッフィーニ会長兼CEOは「私の肩書きはモンクレールの会長兼CEOだが、実際にはそのどちらでもない。5人からなる委員会があり、毎週集まって意思決定をしている」と明かす。「私は所有権や出資比率にこだわるよりもむしろ価値を生み出すことに専念している。イタリアでは皆、完全な所有権を求めていて、自分の会社の99%を保持したいと考えているようだ。その気持ちは分かるが、そのせいでイタリアにラグジュアリー・グループができないのだと思う」。

 13年にミラノ証券取引所に上場したモンクレールにとって経営陣の後継者計画は最重要課題だが、同社の経営幹部の多くはすでに自分の跡を継ぐ人材を育成している。ルッフィーニ会長兼CEOは自身の息子たちに引き継ぐことも否定しなかったが、それは彼らが他の候補者を凌ぐことが条件になるという。一方、OTBではロッソ=プレジデントの7人の子どものうち3人がすでに社内で働いており、時期が来れば彼らにバトンタッチすることに前向きだと話す。それと同時に、これまでも語ってきたことではあるが、会社の存続を確実にするため、将来的にOTBグループを上場させる可能性も否定しなかった。そして、「上場企業では個人企業では得られない後援を生かすことができ、その成功により多くの人々が携われるという考え方を気に入っている」とコメント。「私たちも、数年後にはそういう段階に達するだろう。そうすれば、異なる方法で会社を経営することができるようになる。私も、自分だけの小さな庭を育てるような所有権にはこだわっていない。しかし、大きく重要な何かを作り上げるという責任感と、私たちのグループを素晴らしいものにしてくれている7000のファミリーに対しては満足している」と続けた。

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