昨今のオーガニックブームから、“オーガニックコットン”と聞くと、「体に良さそう」「肌触りが良さそう」といったイメージを持っている人は多いはず。確かに体には良いのだが、それ以外にも私たちがオーガニックコットンを選ぶべき理由がある。
私が手掛けるブランド「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS=以下、PMD)」では、ブラント設立当初からオーガニックコットンを可能な限り使用してきた。最初は、「きっと何か良いはず」くらいの理解で選んでいたが、さまざまな取り組みを通じて、知らなかった真実が見えてきた。
私たちは、ひょんなことがきっかけでオーガニックコットンを選ぶ重要性を意識するようになった。始まりは、初の展示会の準備中に、「インビテーションは無駄な資源だし、お金もかかるからいらないよね」というチームとの会話だった。ただメールだけだとインパクトが薄いし、それ以外の何かが必要だった。であれば「せっかくお金と資源をかけるなら、意味のあることをしよう!」と調べているうちに、児童労働から守るために活動するNPO団体ACEと出合った。彼らから世界で起こっているおぞましい事実を聞き、私たちは驚愕した。その1つがコットンに関する問題だった。
まず最初に、オーガニックコットンと他の無農薬食材は共通している。おいしいものとそうでないものがあるように、オーガニックコットンTシャツにも着心地のいいとものと、そうでないものがある。おいしさや美しさに、無農薬かそうでないかは実は関係がない。要はアレンジ次第なのだ。では、なぜオーガニックのものを選ぶ必要があるのか?
NPO法人の日本オーガニックコットン協会の発表によると、「綿花は耕地面積全体の2.5%を占めており、使用する農薬は全体の7%、殺虫剤は16%を使用している。発展途上国ではコットン栽培に使用する農薬は全体の50%を占めており、毎年7700万人もの綿花労働者が農薬の中毒で苦しんでいる」という。オーガニックコットンは農薬や肥料などの合成化学物質を使わないため、従来のコットンより水質汚染を98%も抑えることができる。これにより農家の人々は、安全な水路と飲み水を確保することができるというわけだ。
コットンの栽培に貴重な資源である水を大量に使用するという課題にも、オーガニックコットンは対応している。アパレル・繊維業界の持続可能性に取り組む国際NGOの「テキスタイル・エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)」は、「オーガニックコットンは従来のコットンより河川・湖沼の水の使用量が91%も少ない」と2017年に発表している。コットンを使用するならオーガニックを選ばない理由はないのだ。
こういった現状を知り、現在「PMD」では最高級のオーガニックコットンであるアルティメイトピマを多くのアイテムに使用している。さらに、展示会では素材の魅力や選ぶ理由を来場者に説明し、彼らが知識として持ち帰れるよう取り組んでいる。そうやって、消費者のショッピングの選択肢を少しずつ変えていきたい。
次週、コットンにまつわる児童労働問題につづく……