ベスト販売が運営する都内最大級の時計専門店「ベスト新宿本店」が大規模リニューアル工事を終え、名称を「イシダ新宿」と変えて6月19日にオープンした。地上5階・地下1階(2022年4月開業予定)からなる売り場は、600平方メートルから800平方メートルに増床された。リニューアルに懸けた思いについて、20年12月に社長に就任した石田充孝氏に聞いた。
“チェンジ&チャレンジ”を掲げ、
“感動、笑い、夢”を届ける
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WWD:店名まで改称したリスタートの意図は?
石田充孝ベスト販売社長(以下、石田):当社の祖業は時計、ジュエリーのディスカウントおよび中古販売であり、これを“ベスト”の名前で行い、一方で1996年にスタートした正規販売を“イシダ”とした。この両輪をどう最大化するかが課題であり、“ベスト”に懸けた父の思いと“イシダ”を興した兄の思いを胸に前進したい。イシダ新宿は中古と正規の融合店だが、メインは後者であり、そのため店名はイシダとした。ただし、両輪によるシナジー効果が重要であると考え、ロゴに“BEST”の文字も残した。
WWD:改称に伴い、“本店”の表記を外した。
石田:今後も“イシダ新宿を超える店をつくる”との意思表明だ。逆に、既存の表参道や船橋の店舗が本店になってもいいと思っている。全店を並列関係とした。ベスト販売は“チェンジ&チャレンジ”をスローガンに掲げており、私のモットーは“感動、笑い、夢”だ。これらをお客さまや従業員に届けたいと日々考えている。
WWD:リニューアルの目玉は?
石田:大きく3つある。まずは“3大時計ブランド”の一つである「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」の拡充だ。3階にコーナー展開し、売り場面積を2倍以上にした。お客さまに感動や夢を届けるため、ブランドのストーリーやコンセプトをきちんと伝えるための空間が必要だった。ここで「ヴァシュロン・コンスタンタン」の卓越した伝統と格式、一方で革新性を示し、語り尽くしたい。他のブランドについても今後、同様にアクションしていければと思う。
WWD:店舗づくりでほかにこだわった点は?
石田:“壁を設けない”のがイシダ新宿の最大の特徴だ。お客さまの目線に立ち、世界観の連続性を重視した。ご賛同いただけず取り扱いを休止せざるを得なかったブランドもあるが、志を優先した。
多様な客に対応すべく
導入したコンシェルジュ制度
WWD:ソフト面の話も聞きたい。
石田:時計が好きで、時計に精通したスタッフは当社の財産だ。イシダ新宿はブランド数も都内最大級で、中古品の取り扱いもある。価格の幅も広く、その分多様なお客さまが来店される。新宿は人種のるつぼであり、交通の要所でもある。買い物客もいれば、通勤・通学者もいる。外国人も多い。彼らに最高のサービスを提供するために、新たにコンシェルジュ制度を導入した。これが2つ目の目玉だ。コンシェルジュはフロアを縦断して接客する。お客さまのニーズを的確に把握し、迷わず買い物を楽しんでいただきたい。
WWD:コンシェルジュは何人?
石田:2人を起用した。イシダ新宿のリニューアルオープンのタイミングで、表参道店にも別に2人を配置した。ブランド、そして店のストーリーを伝えられる人材か、幅広い客層に対応できるかが選定基準だった。ただし、今後コンシェルジュ職は、基本的にスタッフ全員がローテーションで担当すべきだと考えている。偏りがちなブランド知識が一律にベースアップされ、それによってスタッフの時計愛も深まるはずだ。百貨店などとは異なる、イシダ流のコンシェルジュ術を模索してほしい。
「ビンテージは時計の
歴史そのもの」、
価値をきちんと伝えたい
WWD:地下1階の中古専門フロアも「ベスト ヴィンテージ」とした。
石田:これが3つ目の目玉だ。SDGs(持続可能な開発目標)の機運が高まり、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の考えが浸透した。これに伴い、中古品に対する見方も近年大きく変わってきた。そこで“価値あるもの”であることを明確にするために改称した。6月19日に地上階と合わせてオープンすることもできたが、リニューアル工事のために路面に仮出店した店舗の反響が良く、期間を延長した。リニューアル前は少数派だった若年層や女性客も取り込めており、いっそう認知を高めて、2022年4月にあらためて地下でオープンしたい。
WWD:中古と正規でスタッフの配置換えも行ったと聞いた。
石田:スタッフがそれぞれを知ることで、お客さまに伝えるストーリーの厚みを増したい。ビンテージは時計の歴史そのものだ。一方で、正規は新たに歴史を刻むもの。ここでも両輪が大事。当社は中古が祖業で、この分野で圧倒的に先行できている。
他社とも協力して日本の時計を
活性化したい
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WWD:イシダ新宿の売り上げ目標、さらには今後のビジョンについて聞きたい。
石田:いまだコロナの影は大きく、同時に早期収束への願いも込めて、2年目にコロナ以前の水準の1.5倍を目指したい。この窮地を乗り切るためには、“うちだけが良ければ”の考えではいけない。例えば新宿なら、伊勢丹や近隣の商店街などとも力を合わせて“時計の街”としてアピールしていかなければ、市場は活性化しないだろう。中国が伸び、相対的に日本のポジショニングが下がりつつある中で、新宿、ひいては日本が元気でなくては良い商品を入荷することはできない。
WWD:次なる店舗オープンの予定は?
石田:都内を中心に出店地探しは常に行っている。父の出身が京都なので関西という選択肢もあるだろう。しかし、まず着手すべきは表参道店の“チェンジ&チャレンジ”だ。“感動、笑い、夢”を届けるため、新米社長である私にはやるべきことがまだまだたくさんある。
ベスト販売
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