服は縫製されて完成ではない。美しいシルエットに欠かせないのがプレス加工だ。
東京・足立区の住宅街にあるセキグチ(関口謙一郎社長)の本社工場では、今の時期、夏物の追加発注品のプレス加工が行われている。手がけるのは主に国内の縫製工場から届くブラウスやワンピース。縫製工程の縫い針などが紛れ込んでいないか調べる検針、アイロンによるプレス加工、値札つけ、最終検品などを行う。その後、ハンガーに掛けられた状態で百貨店やセレクトショップの店頭に出荷される。
プレス加工はシワを伸ばすだけでなく、服の魅力を最大限引き立てる作業である。スカートのドレープ感、シャツのパリッとした印象、ジャケットやコートの曲線、フリルやプリーツの微妙なニュアンスをアイロンの技によって完成させる。服の素材だけでなく、その日の気温や湿度にも出来上がりが左右される繊細な仕事だ。工場内では熟練の技術者が手際よくブラウスにアイロンをかけていた。店頭での商品の印象に大きな影響を与えるため、ブランド側もプレス加工の出来を厳しく確認する。
1963年創業の同社の本社工場では、この道40年のベテラン技術者を含め約20人が働き、1日平均500着の服のプレスや検品を行う。イトキン、トゥモローランド、TOKYO BASE、アルページュなどの大手から新興のデザイナーブランドまで幅広い服を扱っている。