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都内ヘアサロンの進出にも負けない 鎌倉発ローカルサロン「ビアンカ/パドメ」のブランディング

都心からほど近い位置にありながら、歴史と文化の香りがする神奈川県の古都・鎌倉。そこでは近年、都内有名ヘアサロンの出店や、都内から移住した美容師の独立開業も目立つ。そんな中で地元発のヘアサロンとして奮闘しているのが「ビアンカ(bianca)」と、4月にオープンした姉妹店「パドメ(padme)」だ。地域密着型でありながら、中央のサロンに負けないブランド力を備える「ビアンカ/パドメ」の中井宏昭オーナーに、鎌倉という土地でのブランディングについて聞いた。

WWD:美容業界も注目する鎌倉のブランド化をどう見ている?

中井宏昭代表(以下、中井):鎌倉には元々豊かな暮らしをされている方が多く、映画のロケ地になったり海外の人気のレストランやカフェが出店したりで注目を集め、露出の多い町になってきました。12年前に「ビアンカ」が鎌倉でスタートしたのとほぼ同時期に、都内の某有名ヘアサロンが鎌倉に出店。その後も都内から続々とヘアサロンが進出し、神奈川の中でも美容レベルが高い町として一気に認知された印象があります。僕らは完全にローカル発のブランドとして、唯一抗っているサロンかもしれません。

WWD:ローカル発のサロンとしての戦略は?

中井:「ビアンカ」では最初からサロンというよりもブランドと捉え、何が人の心を揺さぶり残っていくのかを深く考えてきました。今でも外部の広告系アカデミーに参加し、業界外のクリエイティブやブランディング、マーケティングなどを掛け持ちで学んでいます。
 今の鎌倉は、東京からの移住者がとても多い。ということは東京から進出してきたサロンは有利と言えます。ただ、僕らは永続的にカルチャーにフィットした人材を採用し、育成・成長させることができれば大丈夫だと思っています。「ビアンカ/パドメ」の経営理念は“つくる人を創る”。常に時代に合ったクリエイターを生み出すことが未来につながります。人材を育てるのは難しいと言われますが、僕はそこに特化してやってきているので難しいとは思っていません。美容業界のキャスティングボードには、枠というか“穴”が必ずあります。デザイン力のある人、ファッションセンスの高い人、ケミカルに強い人など、何でもいいのですがスタッフの能力や個性を強くして、うまく美容業界のキャスティングボードの空いた穴にはめていくのが僕の仕事だとも考えています。

WWD:ヘアカラーのレベルが圧倒的だが、それもブランディングのひとつ?

中井:ブランディングというよりは、いい人材を採用するためにまずは労働環境を高めることが目的でした。ヘアカラーメニューをウリにハイレベルな技術で高単価、高生産性のサロンにする。そして休日や給与、保険なども一般企業並みの待遇というベースを築き、整備をしてきました。クリエイティブだけでなく、そういった面もあり「ビアンカ/パドメ」にはすごい人数の美容学生が見学や応募をしてくれます。この業界で長くやっていくためには、いい人材を採らないと沈んでいく。ローカルでいい人材を確保するのは相当難しいことですが、その危機感がすべての原動力になっています。

WWD:新ブランド「パドメ」を立ち上げた背景は?

中井:「パドメ」のブランドディレクターを務めるHITOMIは新卒で「ビアンカ」に入社し、今では彼女のつくるクリエイティブな作品が様々なコンテストで評価されたり、美容業界のイベントや撮影のオファーが相次いだり、全国規模で名前の知られる存在に成長しました。これからはHITOMIが次の世代を育てていく時代。そのステージとなるのが「パドメ」です。鎌倉エリアで最もかわいいヘアサロンを作ったと思っています。美容学生たちにも「ここで働きたい」と思ってもらい、同世代、同じファッション感を持つZ世代以降のゲストを呼び込んで、一緒に成長してほしいとですね。

WWD:これからの展望は?

中井:時代が変わり美容業のあり方も多様化していますが、お客さまに喜んでいただける美容師の本質やその答えはローカリズムの中にあるのではないかと思います。いろんな波が鎌倉に押し寄せる中、地元のお客さまに技術やセンスを提供するだけでなく、人間味のあるお付き合いをしながら長く認められ続けたい。そのような職人性と精神性をきちんと継承していきたい。その思いを実はサロン名にもこめています。「パドメ」は蓮の花という意味ですが、「スターウォーズ」のキャラクターのイメージでもあります。「スターウォーズ」は端的に言えば“フォースの継承”の物語。僕が主役のサロンだった時代から、HITOMIを中心に外に向けて戦いを挑んできた時代に続き、これから育てる次世代のスタッフに「ビアンカ/パドメ」のストーリーを繋いでいってほしいと願っています。

坂本尚子:島根県松江市出身。総合ライフスタイル誌や育児雑誌の編集を経験したのち、美容業界専門誌を発行する出版社に入社。美容師が作るリアルヘア、クリエイティブヘアの作品ページやインタビュー企画を担当するうちに、すっかり美容業界の虜に。2009年から美容業界に特化したフリーライターとして活動中

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