ビューティ

“つながり”を通じて大きな渦に サステナビリティへの取り組みを加速した「ビー」

 2017年にスタートした「ビー(BE)」は、ミニマルな内外美容でアクティブワーカーを支援する、という理念のもと自然由来成分を用いたスキンケアとヘア&ボディーケア、インナーケアを展開してきた。この春、スキンケアとヘア&ボディーケアの全ての製品でエコサートコスモス認証を取得し、ボトルやパッケージも刷新。「オーガニックコスメブランドの中で、『ビー』がハブ(中核)のような存在になる。そのために、さまざまな企業や人の力を借りたいし、貸したい」—— 。そう意気込みを語る稲垣社長に話を聞いた。

WWD:改めて「ビー」というブランドとリニューアルのポイントは?

稲垣大輔社長(以下、稲垣):ライフスタイルの基盤(=base)になるようにという意味を込め、baseの頭と末尾をとってブランド名を「ビー」としている。さらに英語の“be”には、「存在」の意味と「〜になる」という“become”の意味がある。製品を使っていただける人に寄り添い、その人の「〜になる」という理想を応援したいという思いでブランドを立ち上げた。これまでもベストな製品を作ってきたという自負があるが、3年を迎えるにあたり「まだできることがあるはず」「特にサステナビリティへの取り組みに関しては大きく踏み込みたい」と考え、刷新に踏み切った。

WWD:「ビー」が考える“アクティブワーカー”とは?

稲垣:仕事もプライベートも全力で楽しんでいて、健康もないがしろにしない人をイメージしている。それは決して仕事をバリバリこなす人だけではなく、子育てや家事に一生懸命な人も、だ。以前手掛けていたイベント会社では経営者向けの講演会などを多く主催していたが、参加するのは仕事に高い目標を持って取り組み、かつプライベートも充実させている人。そんな多忙な方々に何ができるだろうか、という思いからブランドをスタートした。

WWD:そのアプローチが美容だった。

稲垣:母親が食事、サプリ、化粧品含め日用品にこだわる人だった。そんな母を間近で見たり、肌トラブルが起こりがちな思春期に母に薦められたアイテムを使ったりして、「生活や選ぶアイテムで肌は変わる」という感覚が自然と身についたように思う。その原体験とエンジン研究の経験というものづくりへの思いがクロスした。どうせ作るなら、忙しい人たちを“最短距離”で癒せるものをと考え、ミニマルステップのオーガニックのコスメブランドを立ち上げた。これまでのオーガニックコスメは、容器の使いにくさや効果を実感しにくい、といったマイナスイメージがあったかもしれない。だからこそ、機能性も自信を持って打ち出せるアイテムという意味で、「ビー」は、“アクティブな”オーガニックブランドと発信している。

WWD:大きなリニューアルポイントとして、エコサートコスモス認証マークの取得がある。

稲垣:3年前にできなかったことの一つに、より環境に配慮した成分の採用があった。スキンケアのフルラインと“シャンプー”、“トリートメント”、“ボディソープ”でのエコサートコスモス認証の取得がこれからの自社の基準となると確信した。特に“シャンプー”と“トリートメント”は、泡立ち、指通りなど、使い続けたくなるような使用感に引き上げるため、粘り強く改善を重ねた。

WWD:国産オーガニック原料の採用にもさらに力を入れている印象だ。

稲垣:スキンケアとヘア&ボディーケア製品には新たに岩手県産の有機米と島根県産の有機桑の実から製造したオリジナルの発酵原料を加えた。肌と髪への潤い感やハリをより感じていただける製品に仕上がったと自負している。さらに、容器には使用済みのペットボトルから再生されたメカニカルリサイクルPETを新たに取り入れた。外箱にはFSC認証を取得した再生紙を、インクにはベジタブルインキを使用するなど「つくる責任 つかう責任」といったSDGs目標に本腰を入れて取り組んだ。

“選べるオーガニック”がテーマの
旗艦店をオープン

WWD:昨年は東急プラザ銀座に「ビー オーガニック」をオープンした。

稲垣:“選べるオーガニック”をテーマに、日本オーガニックコスメ協会(JOCA)とコラボレーションした旗艦店だ。お客さまに選択肢を用意したい、という思いで「ビー」の全ラインアップに加えて、国内外のオーガニックなスキンケアやメイクアップ、日用品などをそろえている。店舗中央には、“スフィア”というインタラクティブなデジタル地球儀を置いた。過去、現在、未来の海水温や汚染状況、人口増加等の変化までシュミレーションできる。ソイキャンドルやサシェ作りなど、お客さまに好評だったワークショップも、コロナウイルスの感染拡大の様子を見て再開したい。この旗艦店は買い物だけでなく、触れて学んで楽しんでもらえる場所でありたいと考えている。

周囲を巻き込みながら
大きな渦に

WWD:春に行われたアースデー東京への参加は今年で2回目となった。

稲垣:昨年はオンラインでの開催だったため、リアルでは今年が初となった。会場には10〜20代も多く、活気に溢れていた。実際にブースには若い世代も多く立ち寄ってくれ、「ビー」の製品と取り組みに熱心に耳を傾けてくれたことが印象的だった。さらに、食品やアパレルなど異業種の方々と新たな繋がりができたことも大きい。当日は、JOCAやバイオテクノロジー企業であるユーグレナとの対談を配信したが、このように「ビー」単体ではなくて、さまざまな企業や人との出会いから新たな発信をしたいという思いがある。

WWD:新たにブランド名の下に「FOR THE EARTH」というタグラインがデザインされたが、それは勇気のいることだったのでは?

稲垣:(地球環境を配慮した取り組みを)「本当にやっているのか?」「口だけなのか?」という目で見られていると自覚している。だからこそ、このタグラインは私たちの覚悟でもある。リニューアルをしたばかりだが、今後ますますサステナブルな取り組みに真摯に向き合っていく。しかし、それは規模の大きなこと。「ビー」だけで立ち向かうのではなく、ステークホルダーや周囲を巻き込みながら大きな渦を作りたいと考えている。
 例えば、東京の木を使うことを理念に活動する「東京チェンソーズ」とのコラボレーションアイテムもその一つ。国内の木材販売の現状として、真っすぐで節の少ない幹部分のみが市場に並び、流通に出回るときには1本の木のうちの25%しか流通していないといわれている。「東京チェンソーズ」は、ロスを減らし少しでも有効活用すべく、根っこから葉先まで、木1本まるごと販売を行っている。今回はヒノキの香りと触り心地でリラックスできるマッサージボールを作らせていただいた。こうした活動の輪を広げていくことで自分たちの商品から発信し、そして発信したものから新たな商品化といった流れを作っていきたい。

個人の“得意”を生かす
柔軟な働き方

WWD:本社のスタッフの柔軟な働き方を採用する意図は?

稲垣:「ビー」で働く人がそれぞれの得意の分野で力を発揮できる“土壌”を作りたいと考えている。現在本社スタッフの15名は働く時間や場所を自由に選べ、いくつかの仕事を掛け持ちしている人もいる。小売店を展開したり、フリーランスで接客の講師を務めるスタッフもいる。仕事を掛け持ちしている本人にとっては「ビー」の仕事ももう一つの仕事も本業で、双方に学びや成長があるはず。
 また、本社内での役割分担はあるが、上か下かという序列は特に設けていない。会社規模が大きくなると難しい点も出てくるかもしれないが、現時点ではスタートアップならでは自由度があるからこそ、スピード感を持って動けていると感じている。

WWD:「ビー」の今後の展望は?

稲垣:率直に、「ビー」を一人でも多くの人に知っていただき製品に触れていただきたい。昨年同月比は約110%(4月時点)で堅調だ。今後も人や地域、企業といったステークホルダーの力や知恵を借りながら、私たちができることがあれば惜しみなく取り組んでいく。いずれは、「国産オーガニックといえば『ビー』だ」と感じていただけるようなブランドに成長したい。そして、サステナブルな取り組みに関して「ビー」がハブ(中核)的な存在になることが目標だ。

問い合わせ先
ビー カスタマーサポート
03-6869-3969