日本一のショッピングセンター「成田空港」の試練
2021年3月期決算が出そろう中、小売業関係者の注目を集めたのが成田国際空港(以下、成田空港)でした。成田空港は「日本の玄関」であると同時に、売上高日本一を誇るショッピングセンター(SC)としての顔を持っています。ラグジュアリーブランドや化粧品、酒類などの免税店や飲食店を中心に、コロナ前の19年3月期は売上高1432億円。長年、都心のSCを抑えて売上高トップが定位置でした。特に近年はインバウンド(訪日客)の追い風で2ケタ増収が続いていました。
ところがコロナで暗転します。5月に発表された21年3月期の成田空港のSC売上高は86億円でした。コロナ前の一昨年に比べて94%も減ったことになります。成田空港を利用する航空旅客数が前期に比べて92%減の325万人に激減したためです。
コロナ下の都心のSCや百貨店の売上高は、およそ前期比20〜40%で推移しました。東京や大阪の百貨店では訪日客による免税売上高が9割以上も減少。もちろん、これも死活問題になるほど厳しいわけですが、空港内のSCはその比ではないことが分かります。前回5月27日配信のエディターズレターで、小売業は人の移動によって需要が発生する商売だと書きましたが、空港内SCは人の移動でしか成り立たない商売です。EC(ネット通販)などのデジタル化の推進でどうなる話ではありません。
国内外の空の移動は今が底で、今後、世界中でワクチン接種が進めば、少しずつ回復に向かうでしょう。成田空港の運営会社は、ビジネス需要などオンライン会議で代替されるケースが増えるとしても「長期的にみれば、アジアをはじめとする世界の経済成長を背景に、人とモノを運ぶ航空需要は世界全体で回復・再成長していく」と見通しを述べています。
コロナ後の航空需要はどうなるのか。屋台骨だった中国人旅行客は再び日本に来てくれるのか。旅客数が戻ったとしても、旅のスタイルや消費行動は変わるのではないか。空港関係者のみならず、訪日客に依存してきた小売業の模索が始まっています。
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