中国・国家市場監督管理総局は「インターネット取引監督管理弁法(以下、新弁法)」を公布し、5月1日に施行した。新弁法はライブコマースやソーシャルコマース(SNSを活用したEC)、ECプラットホームに関する新たな規定を行う。また、25日にはライブ配信に対する「インターネット ライブ・マーケティング管理弁法(以下、ライブマーケティング弁法)」が施行した。中国の2大セール「618」を前に始まったこれらの弁法は、どういった経緯で制定され、またどういった影響を与えるのか。中国越境EC支援やマーケティング事業を行うトレンドエクスプレス(トレンドExpress)の運営メディア、中国トレンドエクスプレスの森下智史・編集長に話を聞いた。
森下編集長は2つの弁法の意図について「実はこれまでライブコマースに関する法律はなく、トラブルが発生した時の責任の所在があいまいだった。新しい2つの弁法はライブコマース市場が拡大する中で出てきた課題を解決するためのもの。政府もライブコマースの成長を願っており、妨げるものではない」と語る。
この数年で急拡大したライブコマースでは消費者トラブルが増加。昨年、ライブ配信には合計2万5500件の苦情が寄せられ、そのうち80%近くがライブコマースによるもので前年比357%増の件数となった。その内容は品質の悪さや、消費者を駆り立てるため使われた売り文句、返品や交換などの保証問題など多岐にわたる。また商品に関する誤った表示やレビュー、トラフィックデータの偽造、架空取引などの不正もあり、消費者の適切な商品検討の妨げとなっている。
配信にはプラットホームやライブ配信者、ライバーを束ねるMCN(Multi-channel Network)、広告代理店など多くの人と企業が携わる。そこで責任の所在を明確化するべく、新弁法ではECプラットホームや出典企業に加え、ライブコマースとソーシャルコマースの従業者をEC従業者として規定。またECプラットホームと旗艦店を含む販売者の責任分けをし、販売者の権利を尊重してプラットフォームの立場を利用した不公正な要求を禁止した。さらにライブコマースを含むEC全体に、消費者の権利確保のため、取引時には消費者の知る権利を十分に保障すること、同意を取ることが義務付けられた。例えば同意なしの抱き合わせ販売や、過去の取引設定を再び適用することなどを禁じる。
ライブマーケティング弁法では、ライブプラットホームはライブ運営者・配信者を管理し、販売者の身元や違反情報を各省に報告し、違反者に配信停止などのペナルティを課す義務を負うことが定められた。
さらにライブコマースを含むライブ配信を活用したマーケティングにおいて、広告法が準拠法になることが定められた。森下編集長によると「これまで明確な規制がなかったため、製品の販売において誇張表現を用いるライバーもいた。また、有名なライバーでも誤った情報を発信することがあり、問題視されていた」という。ライブ内容が商業広告となる場合には、ライバーがその商品のスポークスパーソンとしての責任を負うことも明記された。今後は商品に関する説明により正確性が求められ、違反する場合にはライバーが痛手を負うこととなる。
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