ナイトプールのプロデュースやスイーツや化粧品などの商品企画、広告の制作までを手掛けるアルカ(ARCA)の辻愛沙子最高経営責任者(CEO)は、クリエイティブ・アクティビストを名乗り、クリエイティブの力で世の中に対話を投げかける。社会課題に対しても向き合う楽しさとしんどさを行ったり来たりしながら、「それでも触れない選択肢はない」と覚悟を決める。社会に向き合い、意志を発信しなければ共感されない今、それでも“間違った”発信をしてしまうのが怖い、だから、できれば考えるのを先延ばしにしたいという葛藤もあるだろう。でも、もうそれではダメなのだろうか?
WWD:社会課題に向き合い続けることは、果てしなく終わりのない問いに思える。それでもなぜ対峙し続けるのか?
辻愛沙子アルカCEO(以下、辻):子どもの頃から、理不尽な校則などに対して違和感を感じると声をあげる生徒でした。仕事をはじめてからはお台場のナイトプールやタピオカ専門店「タピスタ(TAPISTA)」など、フォトジェニックなものをプロデュースしたり、同世代に届ける広告を考えたりしています。すると、若い女性が発信源のトレンドやコンテンツに対するステレオタイプを感じるようになったんです。例えば、ナイトプールに対してはワイドショーで「泳がないのにプールに行くなんて馬鹿がやること」と非難するコメンテーターがいました。それぞれが自由に過ごす平和な空間で、来場者も誰も傷つけていないのに、「なんでこんな風にあげつらうのだろう!?」と疑問に思ったんです。タピオカ専門店でも、お店に並ぶお客さまの写真とともに、"バカ女どもがゴミのようにタピオカに群がる"という、信じられない週刊誌の記事がでました。女性向けの商材を担当することが多いため、「"女性ならでは"の企画を」というご依頼を頂くことも多くありました。
しかし、女性といっても一括りにはできないはず。一人一人好みも考え方も多種多様なのに、社会が思う画一的な"女性像”が強固に存在するんだと考えさせられました。私自身も在学中に仕事を始めたこともあり、「女子大生なのに」とか「女性起業家」という言葉で褒められることが多く、その度に違和感が残りました。良かれと思って用いられた言葉にもステレオタイプが存在することを体感したんです。メディアへの露出が増えると、今度は見た目に対してコメントが寄せられるようになりました。ビジュアルをアイデンティティにする職業ではないのに、褒め言葉も中傷も含め、こんなにも見た目で品定めされるのかと驚きました。こんな風に日々生まれたモヤモヤや疑問を払拭するために、社会について学び始めたんです。逆算して、「社会課題がこれから大事になるから勉強しよう」と掲げたわけじゃありません。自分自身の視点を通じて感じた違和感に向き合っていった結果、社会課題にアプローチするクリエイティブを作るようになりました。
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