ファッション

畑オタクのモデルが作る本気の畑ブランドとは

 モデルの岡田章吾は自他共に認める“畑オタク”だ。4年前に神奈川県の貸し農園の一角で畑作りを始めて以来、畑の魅力にハマった。現在はモデル業をこなしながら、空いた時間は自宅から車で30分ほどの畑に足しげく通う。このほど畑オタクのためのブランド「カイメン(KEIMEN)」を立ち上げたという岡田に話を聞いた

WWD:畑に目覚めたきっかけは?

岡田章吾(以下、岡田):東日本大震災の復興ボランティアをコロナ前まで続けていました。最後の作業は、宮城県の金華山黄金山神社の表参道の復興でした。金華芝を剥がしてつなげる作業を2年間続け、芝参道を作りました。東京に戻ってくると、その頃に触っていた土の感覚が恋しくなって。ちょうど僕のモデル事務所で実家の八百屋を継ぐことになったメンバーがいたので、「継ぐ前に少しでも生産者の気持ちが分かった方がいいから、一緒に畑をやろう」と誘い、4年前にこの畑を借りました。

WWD:畑作業の経験は?

岡田:幼少期に祖父母に連れられて畑に行った記憶はありますが、その程度。作物は原産地に似た環境を再現しなければ育ちません。例えば、トマトは乾燥地帯出身なので畝を高くして、水はけが良い環境にしてあげると甘いトマトが育つ。でも1年目は植えたら勝手に育つと思っていて、結果、パクチーと硬いナスくらいしかできませんでした有機農家を営んでいる友達に聞いたり、本で勉強したりしながら、土の上でトライアンドエラーを重ねました。

WWD:途中で飽きたりしなかった?

岡田:全然ないですね。畑って中毒性があるんです。どんなに朝早くても、ワクワクして目が覚めます。ズッキーニの時期は、花が開く朝の7〜8時の間に畑に来て人工授粉させてから、自宅に戻って息子を送り、仕事に出掛けています。でも全然負担には感じません。ズッキーニの授粉もめちゃくちゃ楽しいんです。雄花から隣の雌花へ花粉を付ける作業は、早朝の密会シーンみたいだなとか考えちゃう(笑)。

WWD:いつから畑オタクがあだ名に?

岡田:友達から「ハマり方が異常だ」って言われて以来です。業界でも畑好きは珍しいようで徐々に浸透しました。最近、知り合いのスタイリストが隣の畑を借りました。段々と畑仲間が増えています。

WWD:「カイメン」を立ち上げたきっかけは?

岡田:OEM会社で働く畑仲間の一人が、僕が作業をしている時に「こういうアイテムがあったらいいな」とボソっと言ったのを聞いて「だったら作りましょうよ」と提案してくれたのが始まりです。

WWD:デザインでこだわったポイントは?

岡田:どんな人でも似合うような色やサイズ感にこだわりました。あと、この畑も電車で通う人が多いです。着替えを持ち運ぶのは大変なので、町で着ていても自然なデザインを心掛けました。畑では膝をつくことが多いので、パンツの膝の部分は布を重ねて耐久性を持たせるなど、機能面でも随所に工夫を施しています。実際に僕がサンプルを着て作業し、改良を重ねました。立ち上げ後は、業界の友達も興味を持ってくれましたし、何より知らない農家さんからもたくさんDMが来ました。今後は蚊取り線香を持ち運ぶケースや冬物なども企画します。

WWD:お気に入りの野菜は?

岡田:やっぱり一番はズッキーニ。ニンニクも成長過程で葉っぱを食べたり、芽を食べたりできて楽しいです。スーパーでは見ないような野菜の種類や楽しみ方を学べることも畑の魅力ですね。あと、苗作りの面白さに気付かせてくれたのは枝豆でした。茎が伸びて弱くなった苗を徒長苗というんですが、畑を始めたころはそれが分からず、伸びている分成長していると思って有機農家の友達に話したら、「それ、失敗だよ」と言われて。それがすごい悔しくて苗作りをきちんと学ぶようになったので、枝豆は一番思い入れがありますね(笑)。

WWD:「カイメン」を通してどんなことを発信したい?

岡田:一番は畑をやる人が増えてほしい。僕自身、特に外出が制限されたコロナの間は畑にめちゃくちゃ救われました。人との距離を気にしなくてもいいので、息子にとっても良い遊び場になっています。休日は一日中家族と畑で過ごしています。それから、元祖畑オタクは農家さんです。彼らの知識の深さにはいつも驚かされます。そんな農家さんたちの魅力もこのブランドから伝えていきたいですね。

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