近年の消費者は環境問題に対する意識が高くなっており、サステナビリティに取り組む企業も増えている。バイオテクノロジー企業の米ジェノマティカ(GENOMATICA)が、米国の消費者2000人を対象に行ったサステナビリティに関する調査によれば、86%の人が「誰もがサステナビリティに取り組むべきだ」と回答。一方で、48%が「サステナブルな服をどこで買えばいいのか分からない」と答え、42%が「どういう服がサステナブルなのかが分からない」としている。環境保護に貢献したい意欲はあるものの、情報や認知度の不足によって行動に結び付けられていない状況が鮮明となった。
例えば、55%の人はアパレル企業に対して「自社製品が他社と比べてよりサステナブルな理由を分かりやすく説明してほしい」と考えており、38%は「より分かりやすい情報があればサステナブルな服を買う」としている。そして31%の人は「サステナブルでない服には“ファストファッション税”をかけてもいいと思う」と答えており、低価格が強みの大量生産品に一定のブレーキをかけることで、サステナブルな製品の普及をサポートしたいという意識も垣間見える。
ほかにも、52%の人が「よりサステナブルな商品を意識して選んでいる」と答えているが、「サステナブルな服を選びたいと思いつつも便利さを優先してしまう」という回答も47%に上り、ほぼ同程度となっている。手軽に購入できることはやはり非常に重要で、34%の人は「サステナブルな服のみを扱っている店がもしあれば、買い物は全てそこでする」とし、31%は「チェーン店で売っていればサステナブルな服を買う」としている。
一方で、アパレルブランドをあまり信用していない消費者も多いようだ。88%の人は「環境保護に取り組んでいるというブランドの主張をそのまま信じることはできない」と考えており、51%は「ファッション業界では“グリーン・ウォッシング(見せかけの環境配慮)”が横行していると思う」と答えている。アパレルブランドのエシカル度(倫理的かどうか)の比較サイトを運営する英コンペア・エシックス(COMPARE ETHICS)が2020年11月に発表した調査結果でも、「サステナブルな商品を扱っているというブランドの説明を信頼する」と答えたのは回答者の20%にすぎなかったことからも、消費者が企業やブランドに対して漠然とした不信感を抱いていることがうかがえる。
ジェノマティカのクリストフ・シリング(Christophe Schilling)最高経営責任者は、「消費者はよりサステナブルな服を買いたいと思っているし、多少高くても環境に優しい商品を選びたいと考えているが、企業やブランドのことをあまり信用していない。ブランド側は消費者の信頼を勝ち取る必要があり、サステナビリティに本腰を入れているブランドは、いっそう明確で分かりやすい情報発信を行うようになっている。カーボンフットプリント(温室効果ガスを二酸化炭素に換算した排出量)を服のラベルなどに記載することは、他社製品との差別化や競争力の向上につながるだろう。それに加えて、今後はサステナブルな選択肢を増やして広く提供していかなければならない」と語った。
同社の調査では、ほかに注目すべき事項として、コロナ禍により消費動向が大きく変化したことを挙げている。49%の人は「コロナ禍によって“毎日違う服を着なければならない”というプレッシャーが軽減した」と答え、44%は「コロナ禍以前よりも買う服の枚数が減った」としている。なお、パンデミック中のほうが服を多く買っているという人の30%は、「不安感や気分の落ち込み、孤独感などを紛らわせるために買い物をした」と回答している。