6月14日発売の「WWDJAPAN」は、クリエイティブの力で社会に対話を投げかける辻愛沙子アルカ最高経営責任者(CEO)が監修する。社会課題にまつわる“新しい教養”を対話しながら育む学び場、「ソーシャルコーヒーハウス(Social Coffee House)」を立ち上げた彼女を招き、ファッション&ビューティ業界だからこそ大切に考えたい、見た目や容姿にまつわる“美の基準”について対話する。一般的に「ルッキズム」として知られる見た目に対する偏見について触れ、意志の発信により生まれる共感が欠かせない時代にビューティ業界が消費者に寄り添いながらできる提案のあり方を考える。美容ライターとしてビューティ業界を日々ウオッチする長田杏奈に、“多様性”への意識の高まりを受けた業界の動向や最新事例、消費者と新しいコミュニケーションを築くためのヒントを聞く。
多様化する企業の発信のあり方
ルッキズムという言葉を日本で目にしたり聞いたりするようになったのは、今から3〜4年前。美容業界に海外の動向として入ってきたのが始まりだったと記憶しています。2019年頃からは、社会課題に対して感度の高い人たちがルッキズムという言葉を使ったり、自分の発言がルッキズムに荷担していないかを意識しはじめたりするようになりました。昨年には個人として発信する人が少しずつ増え、企業もより意識するようになった感覚があります。化粧品メーカーが「美白」という表現をやめるというニュースも一例です。そして21年。外界と接触する機会が減り、自分と向き合う時間が増えたことも相まって、「人を目に見える表面的な部分で判断したり差別をしたりするのってどうなの?」という考えが腹落ちしてきた人が多いのではないでしょうか。
企業に関しても、SDGsの認知拡大とともに社会に目を向けるようになり、ルッキズムを助長しない意識が高まっているように思います。ビューティやファッションの媒体でも、長年培ってきたテンプレートに頼らない表現を模索する姿勢が見えてきました。今は間違えちゃうこともあるけれど、現場の工夫が垣間見えるように。具体的な表現方法に関してはこれから多様化が進むでしょう。これまでは「美しさ」のステレオタイプに縛られないメッセージを発信しようとしたとき、ルッキズムの影響を跳ね返してくれそうな強いアイコン、例えばお笑い芸人を起用して、その方が持つ力に頼ってきた印象も受けます。ボディー・ポジティブの表現に関していうと、いろいろな体型の方が横並びで笑っている表現をよく見るようになりました。
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