「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」はこのほど、東京・表参道のフラグシップストアをグランドオープンした。「トッズ(TOD’S)」店舗の跡地で、建築家の伊東豊雄がデザインした建物の1~3階のスペース。上階には「ボッテガ・ヴェネタ」をはじめ、「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などを傘下に持つケリング(KERING)の日本本社が入居している。674平方メートルの同店では、ウィメンズとメンズのウエアやバッグ、シューズ、革小物、ベルト、ファインジュエリー、アイウエアなどを扱う。
21日まで、店舗のファサード(建物の正面壁面)をグラフィックデザイナーの萩原卓哉(Hagihara Takuya)による作品でラッピングした。「WWDJAPAN」6月14日号でも萩原のグラフィックを採用したカバーオンカバーを付録。16日からは米マイアミにある「ボッテガ・ヴェネタ」店舗でも萩原の作品がファサードにラッピングされている。
ブランドは4月からデジタルジャーナル「Issue」を発行しており、有名無名を問わず、世界中のさまざまなアーティストと協業している。21日には2号目となる「Issue 02」が公開となる。今回、新旗艦店のグラフィックデザインに抜てきされた萩原に、「ボッテガ・ヴェネタ」との仕事について話を聞いた。
個性的なフォームやテクスチャーを持つ
「ボッテガ・ヴェネタ」のアイテムをイメージ
WWDJAPAN(以下、WWD):「ボッテガ・ヴェネタ」からはどのような経緯で声が掛かったのか?
萩原卓哉(以下、萩原):「ボッテガ・ヴェネタ」のチームがどこで私の作品を見かけたのは分かりません。 ただ海外からお声掛けいただく場合は、過去に私の作品が掲載されたファッション誌やデザイン誌、 オンラインインタビューなどをチェックされ、私のインスタグラム(@hagiharatakuya)やタンブラー(Tumblr)にアップされた作品を見て、連絡されることが多いです。
WWD:アートワークの制作はどのようなお題が与えられたのか?
萩原:リクエストを頂いた際に「ボッテガ・ヴェネタ」のデザインチームが、私の過去の作品から気に入ったものを数点ピックアップしていました。また「ボッテガ・ヴェネタ」のアイテムには、個性的なフォームやテクスチャーのものが多くあるので、そういったイメージを生かしていこうということだけ、最初に話し合いました。
WWD:どのように制作に取り組んだ?
萩原:私は過去の作品とは異なるものをつくることを心掛けています。その時代その瞬間の鮮度や色気は、即興性の持つ柔軟性からでしか、形にすることができないとも思っています。そういった形で自由につくっているうちに、アイデア数が計画していたものよりも膨らんでいきました。最終的にそれらを「ボッテガ・ヴェネタ」のデザインチームがピックアップし、ブラッシュアップをしていき、最初の提案とは異なる新しいものができました。
ファッションビジュアルには
時代の移り変わりを反映させることが大事
WWD:テーマやコンセプトはあるのか?
萩原:今回のビジュアルでは、広告宣伝を組むというようなコンセプトを用意していません。その時代のカルチャーのあり方や、時代の移り変わりを反映させることが、ファッションビジュアルに大事なものであると考えています。今の時代の複雑化した情報のエッセンスをミックスさせてみて、そこからは説明不可能な突然変異的なものができます。ただそれをジャンクとして捨てるのではなく、結果論としてファッションビジュアルに整えています。
WWD:表参道のフラグシップストアの壁面ラッピングに起用された感想は?
萩原:サイズの大きな作品は、ただそれだけで感覚的に訴えかけるものも大きくなるので面白いと思っていました。またそのデザインをするという、稀なチャンスを頂けたことがうれしかったです。東京の表参道という、世界でもここにしかない、ユニークでもあり独特な景色の中にこのデザインが混ざり合い、新たな感覚を放ってくれる事を期待しています。
萩原卓哉(Hagihara Takuya) /グラフィックデザイナー
PROFILE:大学時代に電子工学を専攻。デザインオフィスに勤務し、2009年からフリーランスのグラフィックデザイナーとして東京を拠点に活動する。デジタルコンポジションやグリッチ・アートなど、認識できるものを非現実的で認識できないものへとわずかに歪ませた作品で知られている
■BOTTEGA VENETA OMOTESANDO FLAGSHIP
住所:東京都渋谷区神宮前5-1-5
営業時間:11:00~20:00