2022年春夏シーズンのコレクションサーキットが本格開幕した。ほぼデジタル発表だった前シーズンから世界の状況は少しずつ好転し始めており、リアルでのショーやプレゼンテーションを開催するブランドも増えた。パンデミックを経て街はどう変化し、ファッション・ウイークはどう進化しているのか。現地からリポートする。
おはようございます!ミラノ最終日、ようやく晴れました。最高気温30度、体温36.2度。明日パリへ戻るのに48時間以内のPCRテスト陰性証明が必要なため、午前中に病院でテストを受けました。イタリアやフランスのPCRテストの方法は、長い棒を鼻の中でグリグリされるタイプです。夜届いた結果は陰性だったので、問題なく帰国できそうで一安心。さあ“現突リポ(現地突撃リポート)”のミラノメンズ最終日、元気にいきましょーー!
10:30 ジエダ
病院からホテルに戻ってくると、ちょうど「ジエダ(JIEDA)」のデジタル発表が始まるタイミングでした。ミラノメンズへの参加は4回目。今季は写真家、内山英明の作品集「JAPAN UNDERGROUND」から着想を得たそうです。地下世界の暗闇の中の人工光を希望の光と捉え、映像でも溢れ出す光が描かれています。こういう希望を込めた内容って、個人的に大好き!光に焦点を当てたコレクションとあって、パキッとしたグリーンが印象的でした。ただリアルクローズがベースのためスタイルに軸が見当たらず、個性派ぞろいの海外でインパクトを残すためには、もうひと押し欲しいのが正直なところ。逆を言えば、「『ジエダ』といえばコレ!」という武器さえ見つければ面白そうです。映像の完成度はぐんぐん上がっているし、ルック写真の見せ方もカッコいいし、ディレクションは冴えていますね。
12:00 プラダ
本日最初のアポイントメントは「プラダ(PRADA)」の展示会です。会場はこれまでと同じく、デジタル発表の映像の撮影セット。赤いトンネルの先にビーチ!……はもちろんないけれど。それでもコレクションに胸キュンしたし、実物のディテールを見てテンション上がりました!ビーチに集う異なるライフスタイルを持つ人々、パラソルからのインスパイア、特にトラウザーをあえてルーズに履く仕掛けなどなど。詳しい内容とたくさんの写真は別記事でリポートしております。
「プラダ」展示会場は私のお気に入りマーキングスポット(笑)。トイレがキレイだしデザインがカッコいいので必ずお借りします。展示会場のプラダ財団はアートコレクションを展示する美術館としての用途もあり、ミラノ旅行の目的地の1つとしてオススメです。ついでにトイレもチェックしてくださいませ。
14:00 フェデリコ チーナ
お次は「フェデリコ チーナ(FEDERICO CINA)」の展示会へ行きました。デザイナーのフェデリコ・チーナが拠点にする、イタリア・ロマーニャの地の自然からインスピレーションを得たコレクション。2021年度「LVMHプライズ」のセミファイナルまで残っていた新進デザイナーです。19日にデジタルで発表した映像は、ビーチで撮影されたのどかな雰囲気にほっこりしましたが、肝心の洋服が全然見えない……。コレ、若手あるあるですよ。展示会場には、デザイナー本人が描いたペイントをプリントしたシルクシャツやシグネチャーであるブドウが描かれたコットンシャツなどシャツ多めで、キャンバスのオーバーサイズコートなどユニセックス向けのアイテムが並んでいました。Made in Italyで品質は高く、懐かしく優しいムードを持っているのは素敵ですが、他ブランドと差別化を図れるほどの個性がまだ少し足りないようです。コンセプトが似ている「ジャックムス(JACQUEMUS)」ともイメージが重なるので、2019年立ち上げ当時の原点であるテーラーリングに磨きをかけると良くなるかも。
14:30 ディーゼル
14時にデジタルで発表された「ディーゼル(DIESEL)」の映像を、ベンチに座ってスマホで見ました。今季は、昨年10月にクリエイティブディレクターに就任したグレン・マーティンス(Glenn Martens)によるデビューコレクションです。映像は1人の女性がアフターパーティ、憂鬱な通勤、オフィスに出勤、火星に辿り着くという幻覚的な4つのシーンで構成されていて、映像のクオリティがめちゃめちゃ高い。マーティンスはデニムを自由に解釈し、「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」でも見られるような遊び心とねじりの利いたクリエーションが光ります。「Y/プロジェクト」ほどコンセプチュアルではないけれど、これまでの「ディーゼル」のイメージからはほどよく脱皮をしており、良きバランス。新生「ディーゼル」は上々のスタートを切りました!
15:00 ヴァレクストラ
今日は電車ではなくトラムで移動します。電車より遅いんですが、外の景色を眺められるし、あくせくしておらずリラックスしながら移動できるんです。ゆったりと到着したのが「ヴァレクストラ (VALEXTRA)」の展示会場となっている旗艦店。店内奥で、今年1月に新CEOに就任したグザヴィエ・ルジュー(Xavier Rougeaux)が新作の説明をしてくれました。男性向けのビジネスバッグやトラベルバッグ、ユニセックス提案のクロスボディーは機能性重視の作り。私のお気に入りは、1960年代のアーカイブを復刻させた“トリック トラック(Tric Trac)”で、折り紙のような構造で口がパカッと開くバッグです。デザインにロゴを使わないし、ミニマルで洗練された大人向けのブランドというイメージでしたが、新作は若年層を意識したアイテムが多い印象を受けました。
18:00 ジョルジオ アルマーニ
ホテルに戻って原稿を進めた後、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のショー会場へ。早くもミラノメンズでの最後の取材です。ゲストの数は100人ほどで、座席は2席分の間隔を空けて配置していました。昨日の「エトロ(ETRO)」のショーよりもゲストの数は少ないものの、会場前はこちらの方が混雑しています。
今季のテーマは”Back to where it started(原点回帰)”です。ショー会場は、ブランドの歴史が始まった本社の中庭です。私にとって初となる「ジョルジオ アルマーニ」のショーに、胸が締め付けられました。洋服が美しすぎて、目に涙が浮かび、瞬きさえも惜しかった。スーツの素材感や光沢のあるまばゆい生地、歩くたびに流れるようになびいたり、リネンやシルクの上質さだったり――全てが「美しい」以外の言葉で形容するのが難しく、メモを取る手が止まります。ショーに文字通り釘付けになったため、写真もほとんど撮れていません(ごめんなさい)。アルマーニさんはフィナーレに登場し、最初のアシスタントであるレオ・デルオルコ(Leo Dell'Orco)に手を取られながら挨拶していました。来月で87歳になるアルマーニさん。魂を込めて丁寧に服を作る生き様に感化され、「私はまだまだ甘っちょろい、頑張らないと!」と英気が養われました。
日本人のゲストは少なく私以外に現地在住の通信員の方1人しか見かけなかった一方で、他国から業界人が多数訪れていました。ロンドンからは「フィナンシャル・タイムズ(Finacial Times)」ファッション批評家兼「アナザー・マガジン(Another Magazine)」ファッション・ディレクターのアレキサンダー・フューリー(Alexander Fury)、「WWD」マーケット・エディターのティエンウェイ・ツァン(Tianwei Zhang)、「ヴォーグ ランウェイ(Vogue Runway)」ジャーナリストのアンダース・クリスチャン・マドセン(Anders Christian Madsen)、香港拠点のスタイリスト兼インフルエンサーのデクラン・チャン(Declan Chan)や、ニューヨークからはフォトグラファーのスコット・シューマン(Scott Schuman)も見かけました。
ショー後はエンポリオ アルマーニ カフェ(EMPORIO ARMANI CAFFE)で着席のカクテルイベントが開かれました。私は最初の方に到着したので他のゲストはあまりいない状態でしたが、終盤にはテーブルがほぼ埋まるくらいだった賑わっていたようです。アフターパーティーのようなイベントに参加するのは1年ぶりだったので本当はもっと楽しみたかったのですが、ショーやデザインーご本人を見てからは仕事熱に油が注がれ、ホテルに戻って原稿原稿!
本日のジェラート
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今日は新しいジェラート屋を開拓したくて、帰路の途中で見つけた夫婦が営むお店で持ち帰りをオーダー。ダークチョコレートとストラチャテッラ(チョコチップ入りミルク味)は私好みの甘さ強めなのに、後味はスッキリしていて大正解でした!ジェラートを食べた後に水が飲みたくなるような、甘ったる〜いのは好みじゃないんです。人間もジェラートも、いさぎよい後味が大切!しかもオジサマが「セイ ベーラ(君キレイだね)」って言ってくれたので、なおさら好き(笑)。 褒めてくれる人は、基本的に全員好き。ルンルン気分で最終日を無事に終えました。自宅に着くまでが出張なので、感染対策しつつ明日パリへと戻ります。チャ〜オ!