ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、不祥事による株価の影響と外見と年収が相関するルッキズムの話。
■賢者が選んだ注目ニュース
「リファ」のMTGは3〜5月が前年実績超え
“多様な美しさ”の尊重で業界のアプローチはどう変わってきた?
上場から1年もたたない2019年5月に、連結子会社MTG上海で不適切な会計処理問題があったMTGだが、このコロナ禍で業績が黒字転換している。日経平均がこの1年間で約30%上がっているのに対し、MTGは100%以上上がっているほどだ。この復活劇は、家ナカ需要によるドライヤーやヘアアイロン、シャワーヘッドの好調や、これまでアプローチしてこなかった若年層を取り込めたことなどがある。そして、不祥事後に役員を一新したこと、さらにJAL再建時に当時の稲盛和夫会長を右腕として支えた大田嘉仁氏が19年9月に会長に就任したことも大きい。
不祥事の根本は業績低迷
そもそもなぜ企業不祥事が起きるのか。それは、経営の監督を行う役割の社外取締役を導入しているか否かが大きい。しかし社外取締役がいても不祥事を起こす会社はたくさん存在する。企業不祥事の根本にあるのは業績の低迷だ。業績が低迷するから不正をしてしまう。企業不祥事と一口にいっても不適切会計、商品不正、工場爆発などさまざまだが、どの不祥事が最も株価の低迷が長引く要因となるのか。過去のファイナンス研究によると、最も影響が大きいのは商品不正、次いで会計不正だ。他業界ではあるが、00年の雪印乳業(現・雪印メグミルク)の乳製品による集団食中毒事件はブランドイメージも下がりグループ会社全体の経営が悪化した。
また、13年7月のカネボウ化粧品の美白製品による白斑問題は故意ではなく過失だが、商品に関することのため株価にも一時的に影響はあった。しかしその後株価がすぐに回復しているのは、自主回収のほか白斑の症状が確認されたら「完治まで責任をもって対応する」という方針を早期に出したことが大きいだろう。商品不正はマーケットに最も影響が大きいが、不正が起きたときはすぐに発表し対応することが大切だ。MTGは商品不正ではなく会計不正だったため、役員を一新することでこの2年で一気に回復した。同社は2年で必ず黒字化すると決めていたそうで、そうしなければ従業員が全員辞めてしまうのではないかという危機感があったからだ。従業員としても勤め先が再生に3、4年もかかるようでは、社長を信頼できなくなる。
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