「ディーゼル(DIESEL)」が2022年春夏ミラノ・コレクションをショートフィルムで発表した。昨年10月にクリエイティブ・ディレクターに就任したグレン・マーティンス(Glenn Martens)のデビューコレクションだ。若々しく、楽しみにあふれるムードを継続しながら、実験的な手法で「ディーゼル」を新たなフェーズへと導く。
デニムの新境地を見せる
4つの章
映画監督のフランク・ルボン(Frank Lebon)と共同制作したショートフィルムは、赤髪の女性モデルが主人公。“ハウスパーティ”“ロード”“エレベーター”“エイリアン”の4章で構成した、夢と現実を行き交うようなストーリーだ。
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もっともクリーンな
デニムコレクション
「ディーゼル」はブランドのコアアイテムとしてデニムを発信し続けている。今シーズンから資源利用を最小限に抑えてデニムを生産するプロジェクト“ディーゼル ライブラリー(DIESEL LIBRARY)”を始動。オーガニック繊維やリサイクル繊維、メッキ不使用のレザーパッチや非亜鉛処理のメタルボタンなどの低負荷素材と、水や化学薬品の使用を削減した新技術による加工を採用し、環境に配慮したデニム作りを行う。ストレートをベースとした普遍的なカッティングと、ブラックやグレー、ミディアムブルー、アシッドウォッシュブルーといったベーシックな色をメインに、パンツからジャケット、トップス、スカートまで、シーズンを問わず長く使えるアイテムを用意。プロジェクト全体のうち50%は定番品として継続していく。
僕らはラグジュアリーじゃない
より汎用的で楽しいブランドへ
WWD:どんなコレクションを目指した?
グレン・マーティンス(以下、グレン):「ディーゼル」というブランドをたたえるコレクションだ。「ディーゼル」のデニムは誰もが知っていて、みんなが着ているアイテム。いわば世界的な言語だ。そのヘリテージを自分なりに解釈し、4つ章に分けて発信した。いずれもアクティブで、ファンで、ジョイフルで、セクシー。そして今まで以上に着やすく、汎用性のあるコレクションになっている。
WWD:ユニークな映像にした意図は?
グレン:「ディーゼル」は、ラグジュアリー・ブランドとは違うし業界のメインストリームとも一線を画している。インディペンデントでオルタナティブな存在だ。だからこそ他のブランドにはできない、変わった映像を作りたかった。最終章に「エイリアン」と名付けたのも、そんな思いを込めている。
WWD:「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」と「ディーゼル」のデザインアプローチは異なる?
グレン:「Y/プロジェクト」はテーラードを主軸とした極めて実験的なブランド。一方「ディーゼル」は、デニムというキーアイテムを起点とするリアルで誰でも楽しめるストリート。今回は、異なるアイテムを縫い合わせた生地にコーティング加工を施したり、アーカイブ生地をアップサイクルしたりと、実験的な加工を中心に汎用性のあるスタイルの価値向上を目指した。それらはケーキに置かれたチェリーのように、コレクション全体に輝きを与える。
WWD:企業としての「ディーゼル」の魅力は?
グレン:ブランド創始者であるレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)OTBグループ会長の個性的なキャラクターかな。それが会社にも色濃く反映されていて、他にない企業になっている。あとは、活発で効率の良い社内コミュニケーション。物事がとてもスピーディに、そしてラディカルに進むんだ。僕は就任直後からサステナビリティの問題に着手して、6カ月で“ディーゼル ライブラリー”の開発に成功した。とても大きな企業だが、意思決定とアクションが早いのは何よりの強みだ。
WWD:大企業だからこそ、ビジネスが社会へもたらす影響も大きい。
グレン:大きな利益を生み出す会社のトップに立つのだから、企業活動が環境に及ぼす影響は絶対に考えなくてはいけない。「ディーゼル」のような世界的なブランドのトップは、単に服を作るだけではなく、責任を負うことが不可欠だ。
WWD:過去に「ディーゼル レッドタグ」で同ブランドと協業したが、当時と今で求められるクリエイションの違いは?
グレン:「ディーゼル レッドタグ」は、デザイナーそれぞれの視点から「ディーゼル」を捉え、シグネチャーと融合させてより個性的なコレクションを作ることがミッションだった。今は自分のブランドとの融合ではなく、実験から設計、生産まで、「ディーゼル」の一員として建設的なデザインを行う必要がある。
WWD:「ディーゼル」は若い世代の取り込みに成功しているブランドの一つ。あなたは今の若い世代をどのように分析し、どう洋服で表現している?
グレン:若い世代は、人生で何が起こっているのか、常にそれを知りたがっている。これはどの時代でも変わらない。そんな彼らに向けて自分ができるのは、とにかく楽しみながら洋服を作ること。コレクション映像の制作期間は、若いモデルと一緒に仕事ができて本当にワクワクしたし、彼らが「自分たちのお金でも買うくらい価値があるよ」とコレクションを評価してくれたこともうれしかった。これからも、僕自身が服作りを楽しみながら、そのマインドを届けていきたい。
ディーゼルジャパン
0120-55-1978