「ゲイは、アーティスティックなの?」
「ゲイは、アーティスティックなの?」。
時々聞かれたり、そんな話を聞いたりしますが、当事者として言わせていただけるのなら、「人それぞれ」って思います(笑)。
とは言え世間一般においては、根強いイメージかもしれませんね。実際、世界的なブランドのデザイナーにはゲイが多く、ミラノやパリ、ニューヨークのファッションウイークに赴けば、バイヤーやメディア関係者も含め、当事者はたくさん。当事者同士として仲良くなる例もあるせいか、自分の周りにはファッション&ビューティ業界の当事者が大勢います。端から見たら、そう思えるのかもしれません。
とは言え、「ゲイは、男性の気持ちも、女性の気持ちもわかる」という人には、「いや、それは違うと思います」と答えます。わかろうと努めるしわかり合いたいと願っていますが、正直、どっちもわかんない(笑)。いや、「男性だから」とか「女性だから」と「わかる」には因果関係なんて存在せず、それは、みんな一緒だと思うんです。リンク2本目の記事でH&Mの下久保さんが話す通り、それは間違いなく、セクシャリティーではなく個性の問題です。以前、このお手紙では「デカい主語を使おうとする時は要注意」なんて話をしましたが、「ゲイは〜」なんて文章は典型だと思います。ホント、人それぞれ。同じゲイでも、逞しさを追い求める人から、所作が柔らかな人まで、人それぞれ。だから「ゲイは、男性の気持ちも、女性も気持ちも分かる」ってのは、違うと思うんです。
ただ一つ言えることは、他の業界よりも心地よく感じる、ことはあるでしょう。私自身、前職の地方紙の新聞記者よりは、ファッション&ビューティ業界の今の方が、心地良い。この業界にいなければ、カミングアウトはできなかったでしょう。つまり居心地が良いからファッション&ビューティ業界に飛び込んだり、居心地が悪かったから他の業界を離れたり、居心地が良いからファッション&ビューティ業界では公言できたり、居心地が悪いから他の業界では隠していたり。そんな理由で、「ファッション&ビューティ業界にはゲイが多いのかもしれないし、ゲイが多いように思える」は真実だと思います。
「ファッション&ビューティ業界だから、そうなった」のか、それとも「そうだから、ファッション&ビューティ業界」なのかと問われたら、それもまた分かりません。卵が先か?ニワトリが先か?ってハナシです。昔はそんなことを真剣に考えましたが、最近はやめました。もう、あんまり重要じゃないかもって思うのです。
むしろ重要なのは、一応真実であろう「ファッション&ビューティ業界にはゲイが多いのかもしれないし、ゲイが多いように思える」をどうにか役立てることはできないか?です。その意味で、P&Gのアライ育成プログラムの外部提供は、ステキだな、って思います。「ゲイが多い、もしくは多いように思える」業界の知見は、LGBTQ+に対する包括性を模索する他の業界にとって「参考になる」と思われそうです(無論、業界の中でもP&Gの取り組みは、本当に素晴らしく先進的だと思います)。「ゲイは〜」ではなく、「ゲイが多い(多そうな)業界は〜」という文脈で考えるってアリかもな。そんな風に思うのです。
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