大丸梅田店は、顧客から引き取った廃棄傘をアップサイクルする取り組み「モトカサプロジェクト」を開始した。製作したオリジナルバッグを6月23~29日、同店1階の婦人洋品売り場で販売する。
同店では傘の買い替え時に顧客から引き取る傘が年間約300本ある。婦人洋品担当の高山朋子さんは「買い替えで不用になった傘や、修理するのに時間がかかるために処分したいというお客様からの申し出に応え、不用傘を引き取ってきた」と言う。ただ、不用傘は産業廃棄物として処分されるため、廃棄コストもばかにならない。
「傘を捨てたら終わりでいいのか、(傘の骨が折れていても)生地部分がきれいな傘もあってもったいない。他に何かできることはないのか」。疑問を抱いた高山さんは、産休から職場復帰してすぐに社内の提案制度「チャレンジカード」に応募した。梅田店独自の企画提案の場「ハツメッセ」で廃棄傘の企画が採用され、2020年9月にプロジェクトがスタートした。
廃棄傘を回収して商品化すると同時に、ゴミとなる廃棄傘を減らすのが目標だ。当初は飛沫感染防止シートや自転車、ランドセルなどの雨カバー、ディスプレイやオブジェなどリユースやリサイクル、リメイクの観点で検討した。だが衛生面の問題を解決できる協力先がなかなか見つからず、ようやく出会えたのが、ビニール傘から生まれたブランド「プラスティシティ」を製造販売するモンドデザイン(東京、堀池 洋平社長)だった。置き忘れや廃棄されたビニール傘を独自のアップサイクルなモノ作りで新たなバッグに生まれ変わらせる。
工程はすべて手作業で、廃棄傘を解体、洗浄後、ビニールと傘の生地、芯地とペットボトルのリサイクル生地の4枚を重ねて圧着。国内の技術力のある職人が裁断、縫製し、トートバッグとサコシュを製作した。傘の生地の形状をそのまま生かしたデザインが特徴で、トートバッグの両端のホックを留めればコンパクトなフォルムになる。価格はトートバッグ1万6940円(税込)、サコッシュ9680円(同)。
29日まで営業するポップアップストアでは、ビニール傘だけを使ったプラスティシティのオリジナルトートバッグ(1万5400円)とクラッチバッグ(9900円)、マルチショルダーケース(7370円)も販売する。購入者には傘生地から作ったエコバッグやマスクケース、折りたたみ傘ケース、ティッシュケースをノベルティとして無料で提供する。政策は障害者を支援するNPO法人トゥギャザーが運営する店舗「パティスリーとっと」に依頼した。お気に入りの傘からエコバッグが作れるオーダーも受け付ける。
今年3月から店内で同プロジェクトの告知と傘の回収を呼びかけたところ、初日から問い合わせがあり、1人で10本の傘を持ってきた人もいるという。
すでに洋服のリサイクルは広まっているが、傘の引き取りはこれまでなかった。高山さんは「地球に良いことをしたい人に対して行動に移すキッカケ作りができればと思う。ビニール傘廃棄問題の解決にもつながるので、今後も活動を続けていきたい」と意欲的だ。