イギリスを拠点とするメンズブランド「ニコラス デイリー(NICHOLAS DALEY)」が、日本のファンと交流するデジタルイベントをインターナショナルギャラリー ビームスで開催した。このファンミーティングは、英国ファッション協会(The British Fashion Council、以下BFC)とビームスがタッグを組んで企画したもので、後日BFCの公式サイトでも一部の様子が配信される。ニコラス・デイリー=デザイナーはこれまで、年に2回ほど来日し、バイヤーなどの業界関係者らと交流していた。ビームスからの依頼に「コロナでファンに直接会えないけど、日本はとても大事な存在だから」と快諾した。
ミーティングでは、同ブランドがロンドンで開催したポップアップに合わせて制作した映像の上映会とアーカイブコレクションの展示、そしてデザイナーへのトークセッションを実施。ここでは、WWDスタッフとファンからニコラス=デザイナーに向けた一問一答を届ける。
WWD:デジタルプラットフォームに変わって数シーズン経つが、そろそろリアルショーが恋しい?
ニコラス・デイリー(以下、ニコラス):最後にリアルショーを行った2020-21年秋冬シーズンは、音楽ライブのようなショーケースだった。とても楽しかったのを鮮明に覚えているよ。リアルイベントが実施できる環境になったら、もちろんやりたいね。
WWD:コロナでブランド運営に変化はあった?
ニコラス:大きく変わった。昨年末にはウェブサイトをリニューアルして、音楽が聴けたり、ニュースレターにチャレンジしたりと、新しいコミュニケーションにトライしている。まだまだ小さなブランドだし、コロナの打撃は大きかったけど、「LVMHプライズ」(LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が主催するファッションアワード)のファイナリストに残ったり、今回のイベントをはじめ英国ファッション協議会(The British Fashion Council)からPR面でのサポートを受けたりと、ポジティブなこともあるよ。こうやってファンとつながるのもモチベーションにつながるし、前を見て服作りに取り組んでいる。
【以下、ファンによる一問一答】
―デザインを考えるプロセスは?
ニコラス:おもしろい質問だね。まずは生地からスタートするかな。生地によって相性の良い形が変わるから、アイテムごとにどこを変更すべきか考えて、コレクション全体まで広げていく。
―音楽の造形が深いが、興味を持ったきっかけは?
ニコラス:僕にとってファッションや音楽、カルチャーは当たり前の存在。両親がずっと音楽活動をしていて、1970年代にカリブからの移民向けにレゲエナイトをやっていたからね。そんな環境で育ったから、レコードや楽器にどっぷり浸って、それぞれのカルチャーが自分に蓄積されている。自分では意識していないけど、それがクリエイションにも反映されてるんだと思う。
―ロンドンでのポップアップはマーシャルアーツがテーマの一つだったそうだが、ニコラスは格闘技をやっている?
ニコラス:松濤館流のカラテをやっている。彼女の影響で初めたんだ。頭がスッキリして考えがまとまるから、ロックダウン中は「やっていて良かった」と心から思ったね。ちなみに僕は赤帯の8級で、彼女は黒帯2段。僕よりうんと強いんだ(笑)。
―好きな言葉は?
ニコラス:難しい質問だな……。“Labor of Love“かな。サヴィルロウでテーラーをやっていたときにボスから教えてもらった言葉で、何に対しても好意を持って取り組むという意味。今でもこの言葉を忘れず、毎日の仕事に向き合っているよ。
―両親は移民だが、ニコラス自身はイギリス生まれとイギリス育ち。英国的な要素は洋服のどこに反映されてると思う?
ニコラス:クラフツマンシップだね。音楽などクリエイションの背景がフォーカスされがちだけど、例えば生地はスコットランドで作っていたり、テーラーメイドにこだわるアイテムもあったりと、イギリスの伝統的な手法も取り入れている。
―日本に来たら何がしたい?
ニコラス:空手のオリジンである沖縄に行って、現地の作法を学んでみたい。独自の言葉や食べ物もあるから、東京とはまた違った楽しみがあると思う。他にも東京や広島、名古屋とか、いろんな場所を巡りたいよ。