ファッション

ファッション&ビューティも政治を語るVol.3 性暴力サバイバーの視点で捉えるファッションの力

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 4月に「クロエ(CHLOE)」のサステナビリティに関する外部アドバイザーに抜擢されたアマンダ・グエン(Amanda Nguyen)は、性暴力サバイバーの権利保護を目的とした非営利団体「ライズ(RISE)」の設立者でもあるアクティビストだ。ファッションと社会正義、政治、性差別、そしてエンパワーメントとのつながりについて自身の考えを発信している。

 グエンはワシントンを拠点に活動するアクティビスト。ハーバード大学在学中にレイプ被害に遭い、2014年に「ライズ」を立ち上げた。ナサ(NASA)で宇宙飛行士としてのインターン経験も持つ彼女は、19年には性暴力にまつわる法改正への取り組みが評価され、ノーベル平和賞の候補者にもノミネートされた。ノミネーション用の宣材写真の撮影には、レイプ被害に遭った時の洋服で臨んだ。その意図について、「レイプされた時の格好をしたのは、何を着ていても被害に遭う可能性はあり、レイプにファッションは関係ないというメッセージを伝えたかったから。全く同じ洋服を着ていても、キャンパスでレイプ被害に遭う可能性もあれば、ノーベル平和賞にノミネートされることもある」と語った。米「WWD」はそんな彼女に対し、社会問題とファッションのつながり、そしてファッションがどのようにして問題解決に貢献できるかを聞いた。

WWD:社会正義や平等問題、公民権活動において、ファッション業界は他業界に比べて進んでいると考えるか?

グエン:ファッションはいつでも政治的。毎日みんなが何かしらの洋服を身にまとうが、特に女性にとってはどのように着飾るべきか、たくさんの暗黙のルールが存在している。その中でも「クロエ」が洋服を通じて描く女性像は自信に満ちていて、変革を起こす力を秘めているか、すでに起こしてきた存在だと思う。私にとってファッションは政治だけでなく、エンパワーメントでもある。

WWD:最近では、米国で増加するアジア系住民に向けたヘイトクライムに対しても、先陣を切って問題提起している。ファッション業界にできることは?

グエン:アジア人への差別に抗議するハッシュタグ「#StopAsianHate」が広まった背景には、ファッション業界の多くのインフルエンサーやデザイナーの後押しがある。私自身、問題への意識の高まりを一時的なもので終わらせないために、何ができるかをプラバル・グラン(Prabal Gurung)やフィリップ・リム(Phillip Lim)、ティナ・リュン(Tina Leung)、エヴァ・チェン(Eva Chen)と電話で話した。ハリウッド在住のデザイナーから国会議員、活動家、ファッションデザイナーやインフルエンサーを集めて語り合った。ともにディスカッションができて良かったし、みんなには感謝している。ファッションでは、全ての業界内がアジア人の権利向上に働きかけ、あらゆる形の暴力の根絶に立ち上がるべきだ。ファッション、とくにラグジュアリーは大きな力を持っている。だからこそデザイナーにはこの問題について関心の高い人が多く、うれしい。そして実際に「クロエ」のように、ジェンダーに基づく暴力やサステナビリティの向上に取り組むブランドが多いことは、素晴らしいことだ。

WWD:ファッションは多くの分野で表面的なものとして扱われることが多く、真剣に受け止められないこともある。社会正義に関わる中で、なぜファッションに目をつけたのか?

グエン:正直に言うと、ファッションへのそういった偏見の根底にはセクシズム(性差別)があるように感じる。女性が中心のトレンドや女性が好むもの、発信するもの、全てが薄っぺらく中身がないと思われがち。その根底にあるのは、女性がファッションを楽しむことを蔑ろにしていること。ファッションとは、(洋服を通じて)世の中に見せたい自分を表現することなので、とても政治的なものだと思う。例えば、元アメリカ国務長官マデレーン・オルブライト(Madeleine Albright)は、決議の際に自身のスタンスを表現するブローチを身につけていた。歴史的瞬間を思い返すときも、その人物や団体の後世と並んでシンボルなどを思い浮かべることが多いのではないか。女性の投票権を求めて戦ったサフラジェットは白の装いを取り入れた。ファッションはステートメントであり、エンパワーメントできるもの。人を動かす力を持っている。

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