「合わせる」んじゃない「合ってくる」んだ
先週発売した「多様な美しさ」を考える「WWDJAPAN」は、入社2年目の若手と一緒に作りました。彼女に、リアルに推定30回くらい伝えたのは、「ファッション&ビューティ業界人が“自分ごと化”できるように」。コロナの影響で業界の皆さんと触れ合う機会に恵まれていない彼女よりは、私の方が業界人、そして読者を知っているつもりです。だからこそ彼女の原稿を、読んでほしい業界人に届くように、切り口・構成・単語に至るまで添削し、時には赤ペンで真っ赤にして戻したこともありました。きっと彼女は、自分の目線と読者の目線を合わせようとする意義、合わせる難しさを感じてくれたことでしょう。
話は変わって、先日は学生を対象にしたデザイナーのトークセッションでファシリテーターを務めさせていただきました。きっと学生が知りたいと思うだろう質問は、例えば「自分が作りたいものと、ビジネスとして売れそうなもの、最終的に優先するのは、どっち?」みたいな質問。ご参加いただいたデザイナーの多くは「お客さまが支持してくれるもの」を選ぶそうで、つまるところ「ビジネスとして売れそうなもの」というチョイスです。すると視聴してくれた学生からは、「作りたいものが作れないなら、悲しいです……」なんてコメントが届いたそう。そこで「ううん、それは違うよ」って、お話したくなる衝動に駆られました。
多分、参加したデザイナーは、「お客さまが支持してくれるもの」を選びたい、作りたいのです。だから学生の「作りたいものが作れないなら……」は早合点かも。デザイナーは、「作って欲しいものを作りたく」なっているのでは?と思います。事実、そのデザイナーは、「自分では『あんまり』と思っていたプリント柄を同僚が『かわいい』と意外にも評価してくれて、それが実際売れた時から考えが変わった」と言います。そこからは「作って欲しいものを作りたく」なってきたのだと思われます。もはや「お客さまが支持してくれるもの」を作るのはイヤイヤではなく、やりたいことになっているのでは?です。
私たちも一緒です。入社2年目の若手は、まだ目線が合ってないから、今回の特集は大変だったかもしれません。でも目線は、無理やり合わせなくても、合ってくるもの。事実私は(多分)、読者の皆様の多くと同じ目線だと思うのです。無理やり矯正したのではなく、結果、そうなったんだと思います。
目線や嗜好は、「合わせる」んじゃなくて「合ってくる」ものですよね?
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