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クィア・アイ出演のKanが同性婚を発表 自分らしく生きるためにファッション&ビューティ業界に期待することは?

 ネットフリックスシリーズ「クィア・アイin Japan!」に出演し、その後インフルエンサーとしてジェンダーやセクシュアリティーにまつわる発信を続けるKan(カン)は、性的マイノリティー当事者としての発信に加えて、企業・学校での講演なども行っている。そんな同氏が26日、イギリスに住むパートナーと9月にイギリスで同性婚をすると発表した。普段は化粧品会社に勤務しながら、ジェンダーに包括的な製品開発やキャンペーンを行うブランドなどのモデルも務めている。等身大で明るい発信が共感を集めるKanに、同性婚に至るまでの経緯や法律上同性間での結婚が認められていない日本の現状、ファッション業界に期待することなどを聞いた。

WWD:自分のセクシュアリティーを認識したのはいつごろ?
Kan:中学生3年生ごろからじわじわとセクシュアリティーについて違和感を持ち始めました。友達が異性を前提に恋愛の話をしている時に、「僕は同じグループにいる男の子に惹かれるのにな」と思ったり。最初は「同性愛者」という言葉すら知らなくて、世の中でネガティブに使われる「オカマ」として括られてしまうことがものすごく怖くて、できるだけ考えないようにしたり、同性に惹かれる自分の気持ちを否定したりする生き方をしていました。

WWD:インフルエンサーやアクティビストとして活動するようになったきっかけは?
Kan:21歳の時に、大学を1年間休学してカナダのバンクーバに留学しました。そこで幸せそうに生きる性的マイノリティーの人たちを初めて目の当たりにし、世の中の見方が180度変わりました。当事者であることをオープンにしても幸せに生きることができると気付き、むしろ問題があるのは自分ではなくて、社会の方だと感じたんです。そこから大学時代にはLGBTQ+の権利向上を目的に活動するサークルの設立や、出張授業をしたりしていました。本格的にインフルエンサーとして活動するようになったのは「クィア・アイ」に出演したことが大きかったです。

WWD:今回、イギリスで同性婚をすることになった経緯は?
Kan:現在のパートナーとは、大学院に留学しているときに出会いました。勉強を終えた後は日本で就職することになり、遠距離恋愛に。新型コロナウイルスの感染拡大が長引き会えない期間が一年半くらい続いているんです。仕事をしていると隔離期間を含む長い休みはなかなか取れないので……。交際を始めて3年目の今年、6月のプライド月間に合わせて、9月に結婚することを公表してイギリスに移住すると決めました。結婚すること自体は本当にうれしいんです。でも「日本で結婚することが選べない」というのは、やっぱり悲しいです。パートナーは日本に憧れているので、将来は日本に住めたらとも話していますが難しい部分です。

WWD:日本の同性婚にまつわる現状についてはどう思う?
Kan:純粋に「なんで?」と思います。なんで反対するんだろう?なぜ実現しないんだろう?という疑問です。生まれた時から結婚という選択肢を持っている人から僕たちが何かを取り上げるわけでもなく、選択肢がより多くの人に増えるだけなのに。主体的に自分らしい決断をする機会を奪っていますよね。

WWD:日常生活で生きづらさを感じる時はどんな時?
Kan:僕の性自認はジェンダークィアで、完全に自分を男性のカテゴリーに当てはめることに違和感があります。でも、世の中は男女二元論で語られることが多い。異性愛を前提とした会話に触れたり、「男らしさ」を求められたりすると結構苦しい。もっと可能性を含んだ表現が浸透してほしいと思います。

WWD:ファッション&ビューティ業界に期待することは?
Kan:もっと「女性らしさ」や「男性らしさ」の輪郭をぼやかす提案があってもいいと思う。僕自身これまで、自然に男性のフロアに行って服を買っていましたが、例えば古着屋さんにはジェンダー分けがはっきりしていないお店も多いんです。だからこそ、ウィメンズもメンズも全てを見た中で本当に自分の好きな服に出合うことができ、ファッションで自分らしさを表現できています。

WWD:ファッション&ビューティ業界もプライド月間に合わせてコレクションを出し、それを寄付活動につなげるなどしてLGBTQ+コミュニティーの権利向上を支援するスタンスを表明している。一方で一時的なレインボーの打ち出しという否定的な見解もあるが、Kanさんはどう受け止めている?
Kan:プライド月間に合わせたキャンペーン自体は悪いことではないと思います。でもその目的はもっと大事。何を達成したいのかによって、キャンペーンの内容や商品は変わってくると思います。キャンペーンやクリエイティブに起用する人以外にも、開発の過程に携わる方も当事者なのか、もしくはアライなのかは大切ですよね。お金はどこに寄付されるのか、ほかのコレクションでもLGBTQ+に配慮したメッセージが発信できているのかなど、一つ一つ見ていく必要があります。大きな企業であれば、社内に当事者がいる可能性も高い。社内に向けたキャンペーンや啓蒙活動がもっとあってもいいと思います。

WWD: LGBTQ+の存在が社会的に可視化されてきたと思う?
Kan:10年前だったらセレブリティーもカミングアウトをするとバッシングされていた記憶があります。でも今は例えばリナ・サワヤマ(Rina Sawayama)やリル・ナズ(Lil Nas X)といった歌手もクィアな恋愛を歌にもするし、自身のセクシュアリティをオープンにしている。ジェンダーやセクシュアリティのトピックに触れるSNSアカウントも増えてきた気がします。でも、僕がそのコミュニティーにアクセスできるようになったからなのか、実際に社会が変わったのかはわからない。人の経験やバックグラウンドによって差はあると思いますが、僕も含め社会を変えたいと思っている人たちはたくさんいます。そういう人たちの民意がきちんと政治に反映されてほしい。

WWD:今後の目標は?
Kan:SNSを軸に発信を続けます。僕の挑戦が、それを見た人の半歩踏み出すエネルギーになるかもしれない。9月から拠点はイギリスに移します。日本で結婚する可能性を全く検討できなかったことが、僕もパートナーもとても悲しいし、悔しい。いつかはパートナーと日本で住みたいです。

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