「ダブレット(DOUBLET)」は27日、都内郊外にあるオーガニック農園で2022年春夏のファッションショーを行った。今季もパリ・メンズ ・コレクションの公式スケジュールでのオンライン発表に合わせた配信で、日本のメディア関係者やバイヤーを現地に招待。都会を忘れる緑豊かな農園のエントランスでは、子ヤギがお出迎え。一方で、その自然の景色とは相反するカラフルなライトとロック音楽の爆音で、ショーは幕を開けた。
ファーストルックは、缶バッジやスタッズを総刺しゅうしただまし絵のライダースベストとニットワンピース。モデルはブロンドのカーリーヘアで、伝説の英バンド、セックス・ピストルズ(SEX PISTOLS)のシド・ヴィシャス(Sid Vicious)の恋人として知られていたナンシー・スパンゲン(Nancy Spungen)のような風貌だ。次々登場するモデルたちは、パンクロッカーやヤンキー、不良のようなコワイ雰囲気。しかし、彼らがまとうド派手な服は最新のサステナビリティの技術を駆使したアイテムだった。
コワイ人たちが着る
環境に優しい服
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今注目のキノコの菌から作った“人工マッシュルームレザー“は、インドネシア企業のマイレア(MYLEA)との協業し、ライダースジャケットに仕立てた。その背中には毒キノコの“テングダケ“をプリントし、シュールな笑を誘う。廃棄されたバナナの茎からできた糸は、バナナ柄のセーターに。これは有名なロックバンドのアルバムジャケットや果物ブランドのロゴなど、「ダブレット」らしいパロディーだ。その他にも、コーヒー染めしたミルクプロテインの糸や、玉ねぎの外皮を使った染色技術、食べ物や植物の廃棄物から抽出された液を使った染色など、数々の食べ物を使った新しい技術を採用。農園というロケーションとコレクションがリンクする。
また「洋服の青山」で知られる青山商事と協業したアップサイクルにも挑戦。コロナ禍で出たスーツの余剰在庫を買い取り、解体し、オーバーサイズのジャケットやセットアップへと生まれ変わらせた。他にも「スイコック(SUICOKE)」とのシューズ、「ブラン(817 BLANC LNT)」とのアイウエア、「エドロバートジャドソン(EDROBERTJUDSON)」のバッグなどのコラボレーションも披露している。
“不良が猫を助ける“ような服作り
これまでも進めてきたサステナビリティへの取り組みを、よりグレードアップさせたが、井野将之デザイナーは制作する上で矛盾を感じていたという。「環境にいい素材で、“いいことでしょう?“という服作りに違和感があった。だから、環境に悪くない素材をボロボロに加工して、“環境にいい、悪い関係なく、洋服だ“というものを作りたかった」と明かした。「学校で不良が猫を助けたら、いいこととして評価されるが、学級委員が万引きしたら反感を食らう。不良が猫を助けるほうが生きやすいし、僕はそういう風でありたいと思った(笑)」と説明する。“環境に優しい“エコのイメージと、反骨心たっぷりのクリエイションのコントラストが痛快だ。
今季のテーマは「My Way(僕らのやり方)」。「エルメス(HERMES)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「アディダス(ADIDAS)」も取り入れる“人工マッシュルームレザー”などの最新技術をいち早く採用し、「ダブレット」流に咀嚼。また、見て楽しく、着る人の気分が高揚し、コミュニケーションを生む服を目指してきたブランドの真髄を極めている。