REPORT
9.11に愛を謳う
「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(GIVENCHY BY RICCARDO TISCI)」は、発表の場を通常のパリからニューヨークに移し、現地時間9月11日に2016年春夏コレクションのショーを開催した。これは8月28日にニューヨークのマディソン街747番地に旗艦店をオープンしたのを記念して開催したもので、ファッションスクールの学生や近隣の住民、抽選で当選した人を含む、約1200人の一般客を招待した。また、ニューヨークの街中では、タイムズスクエアを含む数カ所のパブリックビューイングでショーをライブ中継し、できるだけ多くの人たちがショーを見られる環境を作った。
会場は直前まで明かされなかったが、ワールドトレードセンター跡地に建てられた超高層ビル、ワンワールドトレードセンターを一望することができるハドソン川沿いの桟橋に野外ランウエイを設置した。会場にはマイケル・コースやアレキサンダー・ワン、「ディースクエアード」のディーンとダン・カーティン、「オープングセレモニー(OPENING CEREMONY)」「ケンゾー(KENZO)」のウンベルト・レオン、「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」のジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスらデザイナーたちの他に、ジュリア・ロバーツやリヴ・タイラー、スティーブン・タイラー、カニエ・ウエスト、キム・カーダシアン、ニッキー・ミナージュといった豪華な顔ぶれが集まった。
「9月11日は、アメリカ国民にとってとてもセンシティブな日だと思うから、ショーは家族や愛情を祝福するものにする」とリカルド・ティッシが事前に語っていたように、それを感じさせる演出が随所に見られた。次第に日が暮れ、ワンワールドトレードセンターがライトアップされ、ブルーの閃光が天まで昇る頃、ショーの幕が開けた。 コレクションの序盤は黒と白で作る世界。レースを贅沢にあしらったランジェリーやスローブ、パジャマ風セットアップなどが、官能的かつ繊細、そして艶やかに女性の身体を包み込む。白のレースの上に黒のレースを重ねたり、長短のレースをレイヤードしたり、アシンメトリーにあしらったりなど、バリエーション豊富に見せる。パンツスーツやトレンチコートといったメンズライクなアイテムまでも、レースを部分的、または全体で使用する徹底ぶりだ。終盤にかけてゴールドのスタッズがあしらわれた構築的な白のロングジャケットやフェザーをふんだんにあしらったドレス、ベルベットのベアトップドレスなどが、よりゴージャスな装いへと移っていく。
今回のショーでは、ティッシの親友であり、アーティスティックパフォーマーのマリーナ・アブラモヴィッチが演出に関わっており、ランウエイにはところどころにリサイクル廃材を組み合わせて作った箱型の空間を用意し、その空間をモデルが歩いた。これは、どんなものも無駄にすることなく構築または解体されるべきというメッセージが込められている。 またショー中には、6つの異なるカルチャーや宗教のジャンルから選ばれた歌や生演奏が披露された。これは、差別することなしに人々がひとつになるパワーを持つ願いが込められているという。アヴェ・マリアの澄み切った歌声で幕を閉じたショーは、拍手喝采で幕を閉じた。