ファッション

国内有力ブランドの元営業担当者による新ブランド「AYA」 “宇宙”をコンセプトに七夕に始動

 「トーガ(TOGA)」「ファセッタズム(FACETASM)」などで経験を積んだ山口文(やまぐち・あや)が、自身のプロジェクト「宇宙計画 AYA(エーワイエー)」を立ち上げる。ローンチコレクションである“エピソード ゼロ”では、生地にこだわったユニセックスのTシャツ1型(2万2222円=本体)を7月7日の七夕に自社ECで発売。山口のネットワークを生かし、ロゴデザインなどのアートディレクションは河村康輔、ブランド動画などの音楽はミュージシャンのmaruosaが担当する。

 国内の有力デザイナーズブランドで経験を積んだとは言っても、山口が担当してきたのは商品企画ではなく営業。「(デザイナーズブランドは人数が限られることもあって)営業という枠に留まらず、企画や生産に携わることもあった」(山口)というが、自身でブランドを立ち上げるのは大きな挑戦だ。「数年前から、大好きなニット(編み地)を使ってブランドを手掛けたいという思いはあったが、資金も必要でなかなか決断ができなかった。しかし、コロナ禍もあって自分が本当にやりたいことは何かを突き詰めて考えた結果、やはりブランドがやりたいと思った」というのが立ち上げの経緯という。

 自身のブランドで掲げたのは“宇宙世界”というコンセプト。そう聞くと非常に壮大でやや身構えてしまうが、「地元の福岡ではない場所に住んでみたいと思って上京したのが34歳のとき。東京には住んだので、じゃあ次はどこに住もうかと考えたら宇宙だった。実際、宇宙旅行も現実になりつつある」と山口。もともと「目に見えないものを突き詰めて考えることが好き」といい、コロナ禍で変わったライフスタイルや人が宇宙で暮らすことをイメージしながら、シンプルで着心地がよいだけでなく、「着ていてテンションが上がる」アイテムを追求する。

 そうして生まれたローンチコレクションのTシャツは、山形の米富繊維の編み地を採用。ブランド立ち上げにあたり、理想の編み地を探しまわったがなかなか納得できるものに出合えず、米富繊維には無理を承知で飛び込みで編み地の製作を依頼したという。そこで、ローゲージの編み機を使ってハイゲージに編み立てる手法に出合った。編み地の表に出るのはポリエステル、裏はコットンにしているため、ハリがあってシワにはなりづらいが、肌あたりは柔らかい。Tシャツはユニセックスのワンサイズ展開で、生地のハリ感を生かしてワンピースのように着こなすことも可能だ。

 これまではフリーランスとして他ブランドの営業担当も引き請けてきたが、「AYA」立ち上げにあたって一旦そうした仕事は全てストップした。なかなか勇気のいる決断だが、「やりたいことがあっても、勇気が出ずに悩んでいる若い人がいるとしたら、『やりたいことをやればいいんだよ』と背中を押せるような存在になりたい」という思いもある。今後はファッションだけでなく、スキンケア商品やライフスタイルグッズなど、アイテムの幅を広げた提案を目指す。「AYA」の売り上げの一部は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の子どもたちに向けたプログラムに寄付予定で、機会があれば宇宙飛行士の宇宙滞在時の被服などにも応募したいという。

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