ファッション

「ミッソーニ」家長女が語る クリエイティブ・ディレクターを辞めた理由

 5月に「ミッソーニ(MISSONI)」のクリエイティブ・ディレクターを退任したアンジェラ・ミッソーニ(Angela Missoni)にメールインタビューを行った。以下はその一問一答。

――まず「ミッソーニ」のクリエイティブ・ディレクター退任の理由は?

アンジェラ・ミッソーニ=ミッソーニ社プレジデント(以下、アンジェラ):ミッソーニ社の中にも最近はいろいろ変化がありました。しかし今回の私の退任はコロナ・パンデミックがきっかけです。私自身の24年間のクリエイティブ・ディレクター人生を振り返り、休む間もなく仕事第一の生活で、プライベートでは、ずいぶんやり残した事が多くあったのを、このパンデミックの中で気付かされました。父オッタヴィオとともにミッソーニの創業者であった私の母ロジータも、ある時、「もう十分にやり切ったわ。これからは、セカンドライフを楽しむわ」と「ミッソーニ」を私に託し、自分のやりたい「ミッソーニ ホーム」に集中しました。私も人生の中で、まだやりたい事、刺激的だと感じる事や興味のある事もたくさんあるし、人生での私のプライオリティであるファミリーや友人たちともっとゆっくり時間を過ごし、セカンドライフを楽しみたいと思ったのです。

――「ミッソーニ」はあなたにとってどういうブランドですか?

アンジェラ:「ミッソーニ」は私の両親によって北イタリアの小さな町スミラゴで1953年に創設されました。巨大なブランドではありませんが、芸術作品と言ってもいいような、アーティザナルな存在です。世界のラグジュアリーブランドと肩を並べる唯一無二の存在です。またラグジュアリーブランドの中でも、常に先駆的でした。その成功のきっかけは1967年にフィレンツェのピッティ・ウオモで発表した「ヌードルック」です。それ以来、あっという間に世界中で愛されるイタリアンブランドになりました。常にファッション界のイノベーターであり続けました。私もそのファミリーの一員であり、クリエイティブ・ディレクターを24年間務めきった事は、私の誇りであり、喜びでした。

――今後、あなたは「ミッソーニ」においてどんな役割を担っていきますか?

アンジェラ:私のミッソーニ社でのタイトルは、プレジデントです。申し添えておけばミッソーニ家はミッソーニ社の株式の58.8%(残りはFSIというミラノ本拠のファンド)を保有しています。「ミッソーニ」は、上場していないファミリーブランドなのです。今後はあらゆる観点から喜んでアドバイスもしますし、手助けもします。例えば、ミッソーニの一番最近のコラボはアメリカの「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」とのものです。今夏商品が発表になったばかりです。すでに「パーム エンジェルス」は2018年の「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」というコラボプロジェクトでも大成功を収めていますが、そのリーダーであるフランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)は、私のライフ・パートナーであるブルーノ・ラガッツィの甥っ子です。今回のコラボでまたファミリーの輪が広がったと思っています。

――24年間のクリエイティブ・ディレクターライフの中で、最も印象的なことはなんですか?

アンジェラ:最も印象的なことと聞かれても、私にとってはたとえ小さなイベントやショーでも、どれも大切で懐かしい思い出ですが、2003年のブランド創設50周年のイベントは、両親のオッタから受け継いだミッソーニ・スピリットを再現、継承できたという証として一つのエポックメーキングなショーだったと思います。

――日本でも、50周年のショーが代々木体育館で行われて、私も拝見しましたが、白い実験着風のガウンを着たスタッフがフィナーレに登場して、感動的だったのを覚えています。

アンジェラ:あれは将来デザイナーを目指す学生たちも含めて数千人を招待した大規模なショーでしたが、今でも鮮明に覚えています。日本は、「ミッソーニ」にとっては特別な存在です。父も母も、私も日本の伝統や文化に深く魅せられています。さらにインスピレーション源にもなっています。「ミッソーニ」はそもそもイタリアのラグジュアリーブランドで日本に本格進出した最初のブランドですから。

――後任のアルベルト・カリーリ(Arberto Caliri)はどんな人物ですか?

アンジェラ:アルベルトは15年以上私の下で私の右腕として一緒にクリエーションをして来たので、忠実に「ミッソーニ」ブランドを継承してくれると確信しています。今一番ふさわしい人物です。

――ミッソーニ社のCEOであるリヴィオ・プローリ(Livio Proli)についてはどうお考えですか?

アンジェラ:彼はとても優秀なオーガナイザーだと思っています。

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