伊藤忠商事繊維カンパニーは、低重心経営を徹底する。21年3月期に繊維カンパニーは純利益が16億円と、前期に比べ75億円減少した。苦戦の最大の原因は、これまで利益の大半を稼ぎ出していた事業会社が苦戦したため。主要子会社では副資材卸大手の三景が82億円の赤字(前期は15億円の黒字)、エドウインが17億円の赤字(前期は13億円の赤字)だった。常務執行役員で繊維カンパニーを率いる諸藤雅浩・繊維カンパニープレジデントは「21年3月期で負の遺産の処理を思い切って行った。今期は低重心経営を掲げ、改めて傘下の事業会社を磨き直す」と語り、主力の事業会社の立て直しに注力する。
繊維カンパニーはこれまで、15年3月期の純利益320億円をピークに、145億円(16年3月期)→252億円(17年3月期)→125億円(18年3月期)→298億円(19年3月期)→91億円(20年3月期)→16億円(21年3月期)と年度ごとにばらつきがあった。諸藤繊維カンパニープレジデントによると「ばらついた要因の多くは買収した企業の減損だった。今後は目先の利益にとらわれず、減損を行わないような経営を徹底する」。各事業会社には本体から部課長だけでなく、担当者を派遣するほか、部門を横断し、アパレル企業などの事業会社に派遣し、小売りの経験も積ませる。特に強化するのが、全社で推進する自社EC事業だ。伊藤忠がインポートしたり、ライセンス権を保有する一部のブランドの公式通販サイトを本体の社員が自ら担当する。ECの売り上げを伊藤忠グループ全体で数年内に数百億円規模にまで拡大させる方針。
伊藤忠商事は21年度から3年の中期経営計画をスタートしており、最終年度の23年度には全社で純利益6000億円を掲げる。繊維カンパニーは2015年3月期の純利益320億円が過去最大で、諸藤繊維カンパニープレジデントは「もっと上を目指す必要がある」と語っており、今年度には低重心経営を徹底した後には、新たな成長戦略に取り組むと見られる。