元「アウラアイラ(AULA AILA)」デザイナーの川島幸美は、D2Cブランド「リン(WRINN)」を2020年11月に立ち上げた。オークが生産・販売する。自社ECサイトを主販路に、全国29カ所の卸先で受注販売している。
川島デザイナーは、「アウラアイラ」を19年の10月に退任。「約6年前パリで展示会をしていたころから、気候危機とファッションの関連性を認識し、MDを前提に大量生産するモノ作りの方向性に違いを感じていた。それでも学生時代はデザイナーになることが夢で、ファッションが好きな気持ちでここまで進んできた。自分にできることは、サステナブルなファッションの選択肢を増やし、一人でも多くの人に考えるきっかけを提供することだと思った」と話す。
昨年6月には、オーガニックコットン製のワンマイルウエアセットを販売し、収益の一部をWWFに寄付した。アイテムは即日完売の好評を博し、ワンマイルウエアをさらに“テンマイルウエア”に発展させる形で、11月に「リン」を本格始動させた。
「リン」は、「持続可能なファッションを通して地球の自然環境に貢献すること」をミッションに掲げる。ブランド名は「Wastes(ごみを出さない)」「Recycle(資源を無駄にしない)」「Improve(生産者の生活環境を改善する)」「Nature(土壌を守る)」「No more animals(動物の毛皮を使用しない)」という「リン」のモノ作りの軸となる5つのキーワードの頭文字を並べた。
アイテムは、カットソートップス(8000〜2万5000円)、ブラウス(1万6000〜3万円)、ボトムス(1万8000〜4万円)、ワンピース(2〜4万円)、アウター(3〜8万円)など。素材はオーガニックコットンやリネン、麻などの天然繊維とリサイクル素材を積極的に採用している。オーガニックコットンは、「GOTS認証」取得のものや透明性を担保する豊島の“トゥルーコットン”などのほか、インドの綿花農家の支援を行う「ピース バイ ピース コットンプロジェクト」のコットンを使用し、原料生産者の生活改善に貢献する。
川島デザイナーは「自分を大切にしたい、愛したいというマインドが確実に広がっている。ライフスタイルを見直して、無理のない生活や解放感、癒やしを求める気持ちに寄り添いたい」といい、着心地の良さを重視したアイテムに加えて、20-21年秋冬シーズンはファッションで個性を表現したい女性たちのためにスパイスを効かせたアイテムも提案していく。
余剰在庫を削減するためにセールは行わないなど、サステナブルなモノ作りを追求しながらも、現実的な難しさも感じているという。「立ち上げ時はリサイクル素材100%で作りたかったが、生地の選択肢があまりにも少ないことに驚いた。特に秋冬はリサイクルカシミア以外のリサイクル素材がなかった。小規模ブランドにとって、現在のテキスタイルの供給状況は非常に厳しい。以前はカット賃がかかるために、生地を余分にオーダーしていたが、『リン』ではコストがかかっても増産しないことを徹底している。無駄を出さない視点で見直すべき商習慣がたくさんある。今後は工場の余った生地を活用したり、再生素材の選択肢を広げるために働きかけたりしていきたい」と話す。