REPORT
10年を振り返るストリートカジュアルの全て
「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」は今年ブランド設立10周年を迎える。ファン投票によるアーカイブコレクションの復刻販売やチャリティーグッズプロジェクトなど、「#WANG10」のプロジェクトを行い、今回のショーにも多くの注目と期待が集められていた。会場には、歌手のレディー・ガガやニッキー・ミナージュ、カニエ・ウエスト、ケンダル・ジェンナーとラッパーのタイガのカップル、日本からは女優の二階堂ふみが駆け付け、ブランドを祝った。ステージや演出のこだわりも強いワンは今回、客席数とカメラマンの数を制限。ランウエイは50メートルほどの直線のみ。ランウエイと並行に客席を置き、その向こうにランウエイと同じ長さの巨大スクリーンを設置した。会場が暗くなると同時に爆音のビートが流れ、ショーはスタートした。
コレクションは、自らのアーカイブをヒントにしたワン流のストリートエッセンスが随所に落とし込まれている。例えば、ファーストルックの肩のストラップにシルバーのチェーンを使った白いコットンのクロップドタンクやオールホワイトのスポーティーなタンクドレス、ダメージのデニムショートパンツを重ねたトランクスショーツ、シューズのレースアップデザインを施したワークパンツなど、ワンらしいユニークで遊び心あるディテールがカギとなっている。一つ一つ見ると、09年春夏のデニムとレザーのハイブリッドジャケット、10年春夏のミリタリージャケット、アイコンカラーの黒を一切使わなかった11年春夏の真っ白なドレス、12年春夏のメッシュブルゾン、11-12年秋冬のオーバーサイズのコート、14年春夏のパジャマシャツルックといったアイテムを思い出すファンもいただろう。最近では、手の込んだディテールや高機能素材などを積極的に用い、ラグジュアリーな印象が強かった「アレキサンダー ワン」だが、10周年の節目を迎え、そして今シーズンをもって「バレンシアガ」のクリエイティブ・ディレクターを退任する彼が、改めてブランドの原点であるカジュアルやストリートを見つめ直しているようだった。
さらに今回は初めてメンズもショーで見せ、今シーズンが大きな節目であることを表した。フィナーレでは、巨大スクリーンにこの10年を振り返る特別映像が流れた。ワンがショートヘアだった頃から、過去のファッションショーの映像や広告ビジュアル、12-13年秋冬のショーに登場したジゼル・ブンチェンのインタビュー、「H&M」コラボのローンチショーなどをフラッシュバック。その後、いつものようにワンが、来場者に「Thank you! (ありがとう!)」と手を振り走りながら、ショーを終えた。ワンの次なるステージが始まる瞬間だった。