ファッション
連載 本明秀文のノットスニーカーライフ

アトモス社長・本明秀文のスニーカーライフ「ハイプがハイプじゃない」

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 スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く連載。「サカイ(SACAI)」による「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER以下、ゴルチエ)」のショーで、スニーカーフリークを釘付けにしたのはやっぱり足元の「ナイキ(NIKE)」×「サカイ」×「ゴルチエ」のスニーカーだった。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」×「ナイキ」の発表に続き、こちらも発売が待ち遠しいけど、一方で従来の“ハイプスニーカー”(市場で人気があり、熱狂を生むスニーカーのこと)の人気にかげりが見えはじめているとか。(この記事はWWDジャパン2021年7月12日号からの抜粋です)

本明秀文社長(以下、本明):スニーカーブームが落っこちてきたね。売り上げ云々じゃなく、二次流通で値段がつかなくなってきている。僕たちスニーカー業界も“シュプリーム状態”になってきた。原因は確実に、中国人が「ナイキ」を買わなくなってきたことにある。

WWDJAPAN(以下、WWD):中国では今、「ナイキ」の代わりに何が売れているんですか?

本明:中国国内では中国ブランドの「リーニン(LI-NING)」や「アンタ(ANTA)」がめちゃめちゃ売れているんだそう。「ナイキ」も「中国を応援しているよ」とは言うけど、もともと愛国心が強い国民性だから、自国のブランドに嗜好が向いてきた。日本人にとっての「ミズノ(MIZUNO)」や「アシックス(ASICS)」みたいな存在だね。

WWD:日本でも昔から「中国製は粗悪品」「“メイド・イン・ジャパン”は良いもの」という思い込みがありますよね。

本明:そうだね。でも実際には今の中国の技術ってハンパないほど進化している。自分たちで空母や量子コンピューター、半導体を作っているし、スマートフォンなどに不可欠なレアアースも中国からの輸入に頼っているからね。

WWD:アニメ制作も、日本のアニメスタジオが中国企業の下請けになるケースが増えているようですね。

本明:一昔前とは確実に立場が変わってきたよね。14億人もいれば、日本の14倍の力があるわけだし、それだけ優秀な人も多い。エンゼルスだって大谷選手ひとりではチームは勝てないわけだから(地区4位)。これからは中国に向けて商売をしないとダメだよね。

WWD:五輪後、中国人観光客は戻りそうですか?

本明:戻ってくると思うけど、結局ハイプスニーカーしか欲しがらない。以前は正直、なんでも買っていく状態だった。衝撃的なのは、そのハイプスニーカーですら二次流通で定価割れしてきたことだね。

WWD:話題の「オフ-ホワイト(OFF-WHITE)」×「ナイキ」の“50コレクション”が「SNKRS(スニーカーズ)」の“限定オファー(特定の人のみ購入可能な通知が来る仕様)”で販売されるようで、その中に「SNKRS」のコンテンツなどを積極的に見れば“限定オファー”の確率が上がる、みたいなウワサがあるんですが、そのたぐいで「『SNKRS』で返品すると次回から抽選が当たらなくなる」というのがあります。だからみんなとりあえず買って、値段がつこうがつくまいが、返品せずに定価割れしても二次流通に流しちゃうんですよね。

本明:そうだよね。学生なんかは、とにかくすぐに換金したいだろうから定価割れしても売る。それに、これまでのハイプスニーカーがハイプじゃなくなってきているのも問題。もう“フツウ”の「ナイキ」×「サカイ」とか、×「アンダーカバー(UNDERCOVER)」とか、×「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」とか、みんな欲しいと思わなくなってきているじゃん。

WWD:そうですね。もう“フツウ”のコラボには驚かなくなりました。9月に発売予定の「ナイキ」×「サカイ」×「ジャンポール・ゴルチエ」は僕も欲しいですが……。

本明:そんな中でやっぱりすごいと思うのは、カニエ・ウェスト(Kanye West)だよね。「イージー(YEE ZY)」で“イージーフォームランナー(YEEZY FOAM RUNNER)”という一体成形サンダルを発売したら、それ以降、「キーン(KEEN)」や「クロックス(CROCS)」の一体成形型のシューズが売れるようになった。今年は逆に「ナイキ」の“エア リフト(AIR RIFT)”や「テバ(TEVA)」「スイコック(SUICOKE)」が売れない。トレンドを動かすカニエは、離婚しても変わらずすごいなと思ったよ(笑)。

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