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年商100億超えのゴルフブランドの好調要因 エディターズレター(2021年7月14日配信分)

※この記事は2021年07月14日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

年商100億超えのゴルフブランドの好調要因

 TSIの業績回復に貢献する「パーリーゲイツ」の好調要因については、コロナ禍のゴルフやレジャー、アウトドアブームというマクロ的な要素も大きいと思いますが、酒井昭征「パーリーゲイツ/ピージージー」ディレクター兼チーフデザイナー率いるチームというミクロな理由の方が大きいと思っています。

 私が酒井ディレクターの存在を知ったのは今年ですが(遅っ!)、その前から、「パーリーゲイツ」のスゴさは知っておりました。あの(で通じますよねw?)、カタログ経由で、です。酒井ディレクターが、「ホント大変なんですよ、コレ(苦笑)」と話すカタログは、私にとっては歌舞伎みたいなモンです。シーズン毎のスタイルに応じて、背景は総とっかえ(ちなみに、最新コレクションはゼブラですw)。だけどモデルや彼らの表情、ページ構成は、安定感しか漂わない(良い意味での)予定調和。ページを開くたびに「あ、またこのオジさんだ(笑)」とか「あ、またみんな並んでる(笑笑)」「背景、今シーズンもウエアとシンクロしすぎ(笑笑笑)」と思うのは、演目は変われど「待ってました!!」という見栄の切り方は変わらない歌舞伎っぽいなぁ、と感じています。ここまで「あ、届いた!見なくっちゃ!!」って思うカタログは、ファッション界広しと言えど、そんなに多くありません。ゴルファー、そして「パーリーゲイツ」のファンなら、なおさらでしょう。ここまで確固たる世界観を築き、ファンの気持ちを裏切らず、でも飽きさせないって、大変なコトだと思うんです。余談ですが、プロ(一応)としては、毎回キャッチーでわかりやすい英語のタイトルにも注目しています。英語のタイトルは、紙面の横幅いっぱいの長さがほとんど。見出しをつける人のセンスとこだわりを感じます(時々、無理やり紙面に詰め込んでいるので長体がかかっており、その時はちょっとガッカリしていますw。と書くと、酒井ディレクターは「次からは文字数も完璧にしなくっちゃ」と余計なプレッシャーに駆られることもわかっていますw)。

 とまぁ、私が「パーリーゲイツ」のスゴさを体感しているのは、長らくカタログ経由だったワケですが、上述の通り縁あって今春、酒井ディレクターにお話を聞いて、ますます好きになりました。単純に、ブランドへの、ゴルフ界への、ファッション界への愛がにじみ出ていたのです。いや、どっちかと言えば、ダダ漏れですね(笑)。

 愛の一端を垣間見たのは、このコロナで「これまで通りのビジネスを続けていいのか?」と考えて作ったムービーです。酒井ディレクターは「強制的に大きく変化した世の中になった今、その最中で感じたつらい気持ちを記憶して、前に進む糧となるものを発信」しようと、一ブランドとしては遠大すぎるムービーを製作・発信したのです。皆さん、振り返ってみてください。昨春、アナタにはそんな気構えがあったでしょうか?もちろん個人レベルでは、そう思った人は少なくないでしょう。でも、携わるビジネスさえ明日をも知れず、急激な売り上げ減で会社の財布のヒモはガッチガチの中で、「つらい気持ちを記憶して、前に進む糧となるものを発信」したいと考え、結果、肝心の洋服はほとんど登場しない遠大なムービーを、みなさんは企画し、上に通し、制作できたでしょうか?酒井ディレクターの“勢い”の源泉は、店舗や展示会を通じて触れ合っていた顧客や関係者への愛、そして、世間がゴルフやファッションどころじゃなかった時だからこそのゴルフやファッションへの愛だったのではないでしょうか?

 最初にお会いした時、彼はサステナブルなブランドと協業しようと話を持ちかけたら門前払いで「悔しかった」経験を教えてくれました。人工的な自然、正直、かつては農薬なども大量に使っていたゴルフ場で着用するブランドを門前払いしたサステナブランドは、筋が通っていると思います。でも、それでも「パーリーゲイツ」なりのサステナブルを実践したいと願い、突破口を探ろうと画策し、それでもやっぱり門前払いされて、素直に「悔しかった」とこぼせる酒井ディレクターは、ステキです。

 このブランドには、そんな人たちが溢れている気がします。ゴルフブランドながら年商100億円を超えてなお順調な理由は、そんな想いだと思うのです。

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