「ダブレット(DOUBLET)」は2022年1月、キノコの菌糸体から作った“人工マッシュルームレザー”を用いたアイテムを発売する。価格はライダースジャケットが68万円、レースアップシューズが8万2000円、ミニポーチが3万2000円、ブローチが2万8000円。
“人工マッシュルームレザー”は今最も注目を集める環境配慮型素材で、「エルメス(HERMES)」は米スタートアップ企業のマイコワークス(MYCOWORKS)と協業して開発した“シルヴァニア(Sylvania)”を用いたバッグを今年中に、「アディダス(ADIDAS)」は米スタートアップ企業のボルトスレッズ(BOLTTHREADS)が運用する“マイロ(MYLO)”を用いた“スタンスミス(STAN SMITH)”を来春発売予定だ。
「ダブレット」が協業相手に選んだのはインドネシアのスタートアップ企業マイセル/マイコテック ラボ(MYCL / MYCOTECH LAB)」で、同社はキノコの菌糸を活用した人工レザー“マイリー(Mylea)”を開発。協業のきっかけは井野将之デザイナーが「ネットで見つけてダイレクトにコンタクトしたこと」で、「彼らも僕のことを知っていてくれて一緒に取り組もうとなった」。“人工マッシュルームレザー”だった理由を井野デザイナーは「前回用いたサボテン由来のレザーは表情が綺麗でとても良かったのですが逆にいえば味がなかった。(もう少しレザーに近いものがないかと)いろいろ調べていくと“マイリー”にたどり着いた」と振り返る。実際に用いた感想は「強度にまだ問題があるなど、難しい部分もあった」といい、井野デザイナーは新素材を扱うときに「1年研究するよりも1回本気で作ってみると分かる」という。今後使い続けるかもその出来栄えで決めるというが、“マイリー”は「今後も用いていきたい」と話した。
今コレクションで井野デザイナーは、さまざまな環境配慮型素材を採用しており、その多くも同様に自身でリサーチしてアプローチしたという。
マイコテック ラボはインドネシアで2015年に設立。天然の接着剤として菌糸体を用いた育てることを目的に、地元のキノコ農家と協力して、キノコの菌糸を天然接着剤として使用したバインダーレスボード“BIOBO”やキノコの菌糸体を完全の成長させた革のような素材“マイリー”を生産している。米クランチベース(CRUNCHBASE)によると、累計の資金調達額は83万3000ドル(約9080万円)。マイコテック ラボのロナリディアス・ハータンチョ(Ronaldiaz Hartantyo)共同創業者兼チーフ イノベーション オフィサーは8月に行われる京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab主催の「スクール オブ ファッション フューチャーズ」のオンラインレクチャーに登壇し、開発中の“人工マッシュルームレザー”や“キノコブロック”について紹介する予定だ。