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大坂なおみ選手のドキュメンタリーの見どころ5選 ネットフリックスで配信

 プロテニスの大坂なおみ選手の軌跡を追うドキュメンタリーシリーズ「大坂なおみ」がネットフリックス(NETFLIX)で配信された。シリーズは全部で3エピソードからなる。グランドスラム(ウィンブルドン選手権、全豪オープン、全仏オープン、全米オープンの四大大会)チャンピオンとしての実績に加えて、日頃から人種差別といった社会問題に触れて次世代のリーダーとしても注目を浴びる大坂選手の心の内に迫る。

 ドキュメンタリーでは、2018年の全米オープンで憧れのセリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)選手に打ち勝ち、優勝して以来激変した大坂選手のキャリアや私生活を、本人によるナレーションを交えて振り返る。ここでは、ドキュメンタリーの見どころ5つをお届けする。

1 子どもの頃からテニスに自信を持てなかった大坂選手が、プロを目指すときっかけとなった母親の存在

 大坂選手の両親は、子どもたちにはテニスを楽しめる子に育ってほしいと夢を抱いており、スポーツをしたことがないにもかかわらず他の選手のコーチングを見て学び、熱心にテニスを教えた。子どもの頃から大坂選手は姉のマリ(Mari)と毎日コートに足を運んでは、少なくとも8時間はプレーしていた。当時、大坂選手は自身のテニスの腕前に自信がなく「あまり得意ではなかった」と語る。

 そんな彼女がプロを意識するようになった背景には、母親の存在が大きい。テニスの大会にも参加するようになるなってから、大坂選手は送り迎えを通して母親と過ごす時間が増えた。「母が残業し、車の中で寝ているのも時々見かけていた。彼女に幸せになって欲しかったし、仕事を辞めてもらいたかった。それがテニスをする上で一番大事だった。チャンピオンになるか、ずっと苦しい生活を続けるかしかなかった」と語る。

2 故コービー・ブライアン選手の死が大坂選手に与えた影響

 バスケットボール界レジェンド、故コービー・ブライアント(Kobe Bryant)選手は大阪選手にとっても尊敬の的。2020年1月の訃報は世界中のファンを悲しみに包んだ。大坂選手はニュースの直後に動画を撮影し、「彼と初めて話した時、私たちはとても似ていると感じた。“敵”の懐に入り込む戦法など、私もやろうとしていることだ、と。だから彼をがっかりさせてしまった気がする。彼の教えをテニスで引き継いでいきたいのに、試合に勝てず精神的にも弱い。彼はそんな人ではなかったのに……」と自身とブライアント氏の写真を見せながら語った。

 ドキュメンタリーでは、彼女がブライアント氏に送ろうとしていたテキストメッセージも公開している。「彼に、苦しい時にどうやって向き合っているのかを聞きたかった。でも悩んだ末に結局送れなかった。その後事故が起こったので彼と話す機会を永遠に失ってしまった。信じられなかったよ」。その後大坂選手は、20年フェデレーション・カップで同じ選手相手に敗れている。大阪選手のコーチは当時を振り返り、「彼女は試合の時、心も体も完全でなかった。それだけブライアント氏の死は彼女の心を揺さぶった。とても近しい2人だった」という。

 20年全米オープンのインタビューで大坂選手は、「ブライアント氏が誇りに思ってくれるようなことを、続けていきたい。彼と友人になれて、いろんな話ができてとっても幸せだった。だから、私が何をしてもきっと彼は怒らないだろうし、見守っていてくれるだろう」と述べた。

3 黒人と日本人のミックスレースとしてのアイデンティティー

 日本語について、常々「もっとうまく話せたら」と思っている大坂選手。母親や妹とは日本語で会話しているが、「そもそもみんな文法も適当なので、お互いに指摘することはない」のだという。しかし脚光を浴びるにつれて、自身の言語能力について考えることが増えた。「私はメディアで取り上げられることも増えた。黒人と日本人のミックスレースの一人として、間違った“ハーフ”へのイメージを植え付けてしまっているんじゃないかと考えてしまう」と語る。

 ドキュメンタリーでは、彼女の両親が日本で“外国人カップル”として直面した数々のハードルについても触れている。彼女の父、ハイチ共和国南東県ジャクメルにルーツを持つレオナルド・フランソワ(Leonard Francois)は北海道に留学生として滞在していた時に母に出会った。大坂選手のアイデンティティーについて、「何をどうしても、移民として完全な日本人になることはない。娘の名前を選ぶ時に気をつけたのは、どの国に行っても通じるような名前にすること。(名前に惑わされず)彼女たちがどんな人物であるか、を見てもらいたかった」と述べた。

4 オリンピックに日本枠で出場することで受けた批判の声

 大坂選手は2019年に、20年の東京オリンピックで日本代表として出場するために米国籍を放棄すると決めた。彼女は人生の大部分をアメリカで過ごしているが、妹とともにいつも日本人としてのアイデンティティーも大事に生きており、22歳を迎えたタイミングで日本国籍を選択した。

 日本からプレーすることを決意したというニュースによって、アメリカでは多くの批判を受けたという。ドキュメンタリーでは、「私は14歳の時から、日本の国旗を掲げてプレーしてきた。だからアメリカを選ばなかったことはすごく自然な選択だった。オリンピックのために日本でプレーすることを隠していたわけでも、突然決めたわけでもない。すると、『ブラックアイデンティティーを捨てた』『黒人としての立場はこれで無くなる』と言われてしまった。アフリカ系アメリカ人だけが“黒人”ではないのに……。多くの人は国籍と人種の違いがわからないように感じる。ブラジルには黒人がたくさんいるが、その人たちはブラジル人なのだ」と語る。

5 BLM運動をきっかけに、発信のために立ち上がると決めた

 多くのアスリートや著名人が考えるように、大坂選手も“炎上”を避けるために自分とは関係のない問題には干渉しないべきだと思っていた時期があったという。さらに彼女は、自分の考えを発信することを「怖い」と感じていた。そんな大坂選手だが、20年5月に黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて派生したBLM運動に参加した。その背景について「私はいつも人の後を追って、誰かが残してくれたヒントをもとに生きていた。実際は自分の好きなこともやりたいことも見つかっておらず、すぐに行き詰まった。そこで、自分が自分のために道を作ってあげないといけないのだと気がついた」と語る。

 8月には、黒人男性のジェイコブ・ブレイク(Jacob Blake)氏が射殺された事件を受けて、米国の男子プロバスケットリーグ、ナショナル・バスケット・アソシエーション(National Basketball Association以下、NBA)などをはじめとする多くのアスリートがボイコットをした。ウエスタン・アンド・サザン・オープン(Western & Southern Open)の準決勝を控えていた大坂選手も、「声をあげる必要があった。トーナメントを棄権することが反響を呼ぶのなら、それを使って関心を向けるのが私の使命だと思った」とし、その日はプレーをしないと決めた。「声を上げるのは怖かった。でも今は自信も少し付いてきた。これが今自分のやるべきことだと迷いなく感じている」と振り返る。

 彼女のコーチは、「私たちは一緒にNBAの選手らが声を上げるのを見ていた。彼らはチームとして発信して選択し、チームメートとともに団結して立ち上がっていた。他のテニスプレーヤーに支えられることなく、彼女はたった一人で向き合った。自分で受け止めて考え、立ち上がった。歴史上初めてテニスの試合を止めた」と語る。

 その後も全米オープンで彼女は被害者の名前がプリントされたマスクをつけて抗議活動を続けた。その狙いについて聞かれると、「こうやって、人々の間に社会についての対話を生みだしたかった」と答えている。ドキュメンタリーでは、アクティビストとして社会課題に声を上げ続ける彼女について両親に尋ねるシーンも。2人とも「素晴らしいことだ」と支持を示し、父親のフランソワは、「マスクに関して言えば、彼女は私のためを思って立ち上がっているような気がしている。彼女が自分で考え抜いて決めた決断を、素晴らしいと思う。正しい歴史を築いている」と語った。

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