大丸松坂屋百貨店は2021年春、大丸須磨店(大丸神戸店の分店)内に約400坪の市営図書館をオープンした。地元の家族連れや若者など、あらゆる世代が交わるハブとなり、活気が生まれている。地方・郊外の百貨店の閉店が進む中、創業40年以上たつ店舗が、地域共生に活路を見いだした。「館のポテンシャルを引き出せば必要な存在になれる」と話すのは、当時の大丸須磨店長で図書館を誘致した岡原良隆・大丸神戸店営業推進部長。澤田太郎社長との対話から、百貨店のリアル店舗があるべき姿を探る。(この記事はWWDJAPAN7月19日号からの抜粋です)
WWD:市営図書館の滑り出しは。
澤田太郎社長(以下、澤田):どうなることかと思っていたが、いざ開業してみたら、いい意味で大丸須磨店を変えるくらいのインパクトがあった。
岡原良隆・大丸神戸店営業推進部長(以下、岡原):初日(3月24日)で3000人ぐらいの貸し出しカードの申し込みがあり、だんだん増やしていく予定だった本が一気になくなってしまった。須磨店では見たことのないようなお客さまが図書館にエスカレーターで次々に上がってくるのが、とても感動的だった。同じフロアには学習塾も誘致し、子どもの英会話教室に送り迎えに来るママ、自主学習する高校生なども日常的に利用している。ベビーカーを引く家族連れも、目に見えて増えた。
澤田:須磨店は典型的な地域密着型の百貨店で、食品や化粧品のニーズが高い店舗だった。開業から40年がたち、近隣には競合のショッピングセンターもできたことで、それらとの差別化も必要になっていた。リニューアルに向けた議論に入ったのが19年春ごろ。どんなふうに計画を練っていたのか。
岡原:目指したのは、地域コミュニティーと共生する館。須磨店がある名谷地区は、若い家族連れも移り住むニュータウン。朝晩は高校生が駅前広場を行き交い、昔から住むお年寄りも多い。さまざまな世代が交わるハブになる場所があれば、地域社会に貢献し、必要とされる館になれるだろうと考えた。
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