みなさんは、今着ている洋服の素材をご存知ですか?
普段からWWDJAPANを読まれている方は感度が高く、洋服の素材を認識していらっしゃるかもしれません。でも、それはレアケース。ほとんどの人は、毎日何かしらの素材に身を包み過ごしているのに、それが何でできているか知りません。
今日はその中でも、現在最も多く衣類に使われているというポリエステルのお話。
そもそも、ポリエステルって何か知っていますか?ポリエステルは、人工の合成ポリマーの短縮名。最も一般的な材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)です。 簡単にいえば、ポリエステルはプラスチックの一種なのです。
歴史的に1941年に発明され、70年代に需要が急増しました。 世界中に大きく広がったんです。シルキーな光沢感があるため、キラキラした未来に心躍らせる青春映画の衣装や、バブル時代のスーツにもぴったりの素材として、時代にマッチしたとも言われています。そう、世界の高度成長期とポリエステルの人気は、ぴったり一致すると考えられます。ポリエステルの生地は、縮みや伸びに強い、シワになりにくい、形状記憶性が高い、お手入れが簡単、自宅で洗濯もできちゃう!など、嬉しいことがいっぱい。さらに他の素材に比べると一般的には手頃です。
でも、新しいポリエステルを生産し続けることは、地球からしたらちっとも嬉しくありません。ポリエステルはプラスチックですから堆肥化できません。土壌で分解できません。そんなプラスチック素材を我々は現在最も多く、衣類に使用しているのです。
「ずっと捨てずに使うなら、いいんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるかと思います。ですが、なんと!洗濯のたびに、今世界で問題になっているマイクロプラスティック、大量のマイクロファイバーが家庭から海へと駄々流れなのです。マイクロプラスティックやマイクロファイバーが、海や魚、人間に与える影響は計り知れません。
私自身、この事実を知った時はショックでした。普段から一生懸命、ペットボトル飲料を買わないようにして、エコバックを持ち歩いているのに、まさかそんなところに落とし穴が!?といった絶望感を覚えました。最初は私も、ポリエステルがプラスチックだなんて知りませんでした。海を汚しているのは、プラスチックボタンのカケラなどかと思っていました。でも洗濯機にたまる“繊維のゴミ”こそが流れ出ているのです。特に2000年代初頭に大ブレイクしたフリース素材から出るプラスチックマイクロファイバーはあの時、各家庭から海に大量に排出されていたのでしょう。洋服は、手入れや洗濯まで、すべてがファッションの一部。サステナブルなアクションは、細部まで大事だと気づかされました。
もちろん、明るい未来のため、環境に優しい素材の開発を続けている会社があることも忘れてはいけません!例えばテイジンは、洗濯による繊維脱落量の削減を実現。タオル構造のフリース代替素材は、通常のフリース素材と比較して繊維脱落量を約1/3まで削減できるそうです 。「パタゴニア(PATAGONIA)」は家庭内で簡単に使用できる、マイクロプラスティックやマイクロファイバーの流出を防ぐ洗濯ネットバッグを販売しています。
自分がなんの素材で身を包んでいるかを知らないと、知らないうちに地球を汚してしまいます。使う洗剤も含め一つ一つ丁寧に、時代と共に、ファッションの流行りが変わるように、我々の常識もアップデートすることが大事。購入する時はもちろん、ケアして、手放す時まで。その全てがファッションなのです。