中国のファッション市場は昨年の新型コロナ禍でも成長し、流通取引総額(GMV)は前年比91%増となった。この成長をけん牽引するのが、1995年以降に生まれたジェネレーションZ世代(以下、Z世代)だ。
アリババ傘下のデジタルマーケティングプラットフォーム「アリママ(Alimama)」によると、昨年3月からの1年間でファッション消費の30%をZ世代が占め、成長率は前年比106%増と市場全体を上回った。中国のZ世代は個性の表現を重視する傾向が強く、トレンドも独自性が高い。Tモール(Tmall)と動画共有アプリ、ビリビリ(Bilibili、B站)の共同調査が発表した「2021年春夏10大新トレンド」と「2021春夏新ファッションレポート」 からは、その消費者ニーズの変化が読み取れる。そのうち6つのスタイルを紹介する。
【1】日常ベルサイユ
日常のコーディネートに、Z世代が憧れるハイセンスな要素を加えたスタイル。「ベルサイユ(凡尔赛)」とは中国の若者言葉で、豪華な生活やアイテムをさりげなく自慢することを指す。ショートパンツとジャケットスタイルや、プリーツシャツ、タッセルローファー、サドルバッグなどが特徴。「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」「イザベルマラン(ISABEL MARANT)」や、バッグブランド「エークラウド(A.CLOUD)」などのブランドが代表的。
【2】逃亡プリンセス
お姫さま様のようなパフスリーブやワンピース、大きなリボンやカチューシャ、またはまたディズニープリンセスを想起させる色やアイテム使いなどを特徴とする。パンデミックによる外出制限や鬱々とした気分からの開放を望む若者により昨年春から流行した。そのためお城で待つお姫さま様ではなく、自由に“逃亡”するという意味合いが込められている。 「ジマーマン(ZIMMERMANN)」や「セシリーバーンセン(CECILIE BAHNSEN)」などが人気に。
【3】洗練されたフィットネス&キャンプスタイル
中国はフィットネスとアウトドアがブームで、ウエアやグッズなど、こだわりの品を持つ人が増えている。 ソフトバンク・ビジョン・ファンドも投資した 中国のフィットネスアプリ「キープ(KEEP)」が販売する商品は、ヨガマットからインターネットに接続できる自宅用のフィットネスバイクまで本格的。アウトドアの中でZ世代に人気が高いのがSNSに投稿するおしゃれなキャンプ。 「スノーピーク」や「牧高笛(MOBI GARDEN)」「火楓(FIRE MAPLE)」などのブランドが人気だ。
【4】破次元クラブ
中国のZ世代の多くがゲームやアニメ、漫画に強い関心を持っている。そうした背景から、コスプレアイテムや、日常服とコスプレの中間のアイテムに注目が集まるが人気だ。2019年頃から人気があるのがロリータ、JK制服(学校制服)、漢服の3つで、この3つを合わせて「破産三姉妹」とあだ名がつけられている。またキャラクターなどのIP(Intellectual Property)とコラボするアイテムも増えており、ドラえもんなど日本のキャラクターのアイテムも多い。
【5】ニッチな中国デザイナーブランド
中国ではインフルエンサー・KOL(Key Opinion Leader)や芸能人が大きな影響力を持つ。しかし一部のZ世代はそういった人たちを盲目的に崇拝するのではく、独自の表現をする次世代デザイナー、特に近年登場した中国のデザイナーブランドに注目している。例えば「シュシュ/トン(SHUSHU/TONG)」 や印象的なミニバッグを販売する「古良吉吉」、アクセサリーの「KVK」、アイテムではチョーカーやボーイフレンドシャツなどが取り入れられている。個性の表現やオリジナリティーは中国Z世代の関心が高い分野で、ファッションだけでなくフレグランスやメイクでもニッチなブランドが好まれている。