女性が抱える健康問題を技術で解決する“フェムテック”市場が、日本独自の傾向で盛り上がりを見せている。漏れに着目した吸水型サニタリーショーツ(通称:吸水ショーツ)は、今年「ジーユー(GU)」や「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」をはじめとする大手も参入。続々と新規ブランドや商品が開発され、デザイン性や機能性、価格帯の選択肢が増えてきた。
吸水ショーツは女性のライフステージに合わせて、生理周期やおりもの、軽い尿漏れ、不正出血などの使用を想定しているが、現状は薬機法の観点から「生理用品」として販売できない課題がある。そこで、フェムテック商品の輸入代理店や支援事業などを担うフェルマータ(fermata)の近藤佳奈・最高執行責任者(COO)に、吸水ショーツを扱う上での注意点などを聞いた。
薬機法改正でメディアや
インフルエンサーも罰則の対象に
吸水ショーツを扱うには薬機法(旧薬事法)について、知る必要があります。吸水ショーツは、今は雑品として販売されています。医薬部外品である使い捨て生理用ナプキンや、一般医療機器である月経カップなどとは違って、まだ薬事承認を受けていないため、吸水ショーツを「新しい生理用品」と説明したり、「経血を吸収する」「ナプキンがいらない」と訴求したりすることはできません。商品説明文で「生理中にナプキンやタンポンを使用せずに着用できる」などの文言が入っていると、薬機法違反になる恐れがあります。これまではメーカーのみが対象でしたが、8月1日の薬機法改正でメディアやPRを担うインフルエンサーも罰則の対象になるため、吸水ショーツを取り上げる際には表現に注意が必要です。
吸水量を高めることによって、ユーザーが自分の生理についてよく知る機会が減りかねないことも懸念しています。厚労省が公開している「正常な月経」は「3~7日間の出血期間で、20~140mL(個人差有)」「経血量は多くても1日30mL以内ぐらい(30mLは大さじ2杯程度)」と記されています。しかし、自分の経血量が何mLなのか把握している人はごく少数。これが吸水ショーツ選びを難しくさせる一つの要因になっています。吸水量が多ければ良いということはなく、むしろ婦人科系の病気に気が付きにくくなる可能性もあります。一方、多い場合や就寝時の不安を解消するためには、吸水量が多くないと話にならないということも考えられます。「とりあえず多め」ではなく、自分の量はどのくらいだろう、と知ってもらえる工夫も大切です。企画や販売をする際には吸水ショーツが普及して便利になる一方で、見落とされていることにも目を向けて、啓蒙していかなければなりません。