LA発のファッションブランド「アミリ(AMIRI)」は、2021-22年秋冬シーズンに日本への本格上陸を果たした。これまでも伊勢丹新宿本店メンズ館や阪急メンズ東京、エストネーション、アディッション アデライデなどで扱われていたが、現地パートナーは不在だった。今季からスタッフ インターナショナル ジャパンがディストリビューターとして参画し、国内ビジネスに本腰を入れる。
同ブランドは、CEO兼クリエイティブ・ディレクターのマイク・アミリ(Mike Amiri)が2014年に設立した。“ラクジュアリーのニュージェネレーション”を掲げ、ほぼ全ての工程をハンドメイドで行うパッチワークジーンズや、72時間以上かけてロックバンド風のグラフィックを編み込むカシミアニットなど、クラフツマンシップとLAのオーセンティックなカルチャーを融合したスタイルを提案。ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やビヨンセ(Beyonce)ら数々のセレブを顧客に持ち、現在、世界で130以上のアカウントに卸している。
今年3月には若手クリエイターの発掘を目指すアワード「アミリ プライズ(AMIRI PRIZE)」を始動させたマイク=クリエイティブ・ディレクター。独自のアプローチで業界の発展を目指す彼に、ファーストシーズンから変わらないデザイン哲学や次世代クリエイターへの思いなどを聞いた。
マイク・アミリ(以下、マイク):このコレクションは、DTLA(ダウンタウン・ロサンゼルス)時代の初期に思いを馳せたものだ。DTLAは、工業ビルに次々とアーティストが入居し、現在のアートコミュニティーの基盤を築いた時代で、コラボレーティブでフリーダム、そしてイノベーティブなムードに街が包まれていた。それにリスペクトを込めて、フォーマルとインフォーマルを遊び心たっぷりにミックスした。
WWD:具体的にどんなデザインにその思いを込めた?
マイク:高級素材とデイリーなテキスタイルを並列して使ったところかな。ストリートとギャラリーが隔てなく扱われるDTLAの多様性を表現している。他にも、スニーカーとスーツの組み合わせやラグジュアリーなニットアイテム、ゆったりとしたジーンズなど、ドレスアップの精神を大切にしながら、ナイトライフのロマンスや快適さも重視した。
WWD:夜のストリートシーンを切り取ったデジタルショーはとても「アミリ」らしかった。どんな思いを込めて制作した?
マイク:洋服と同様に、LAのダウンタウンの文化と歴史にリスペクトを込めた。ダウンタウンはLAの中でも急成長したアート・ファッションのエリアで、ブランド創設時に最初のスタジオを開いた場所でもある。この場所で始まる、クリエイティブでユニークな体験を想像した。
WWD:ジーンズで10万円〜、Tシャツで4万円〜と高価格帯でありながら支持される秘訣は?
マイク:「アミリ」のコレクションの根幹には、品質の良さとクリエイティビティー、そして信頼がある。これらを一貫して生活者に届け、ブランドの世界観を多様なカテゴリー・ストーリーへと発展させることが鍵だと思う。それに、自分たちのルーツを大事にすると同時に、常に新しさに挑戦する姿勢も必要だ。
WWD:日本市場は拡大している?
マイク:シーズンを追うごとに成長している。製品の流通をコントロールし、厳選したラグジュアリーショップだけに卸しているが、需要に追いついていない状況だ。アジアのどこかに直営店を開けないかも検討している。
WWD:日本のパートナーにスタッフ インターナショナル ジャパンを選んだ理由は?
マイク:同社はさまざまなブランドでディストリビューションの実績を持つ。彼らと組むのは自然な流れだった。日本進出においては、彼らの専門知識とマーケットの分析力、文化的な理解がとても頼りになった。
WWD:設立10周年の2024年に向けてブランドをどう運営していく?
マイク:組織を成長させながらも、ファーストシーズンに抱いていたエネルギーとマインドを維持してブランドを継続していく。そして、真のラグジュアリーブランドとしてもっと生活者を魅了していきたい。
若手育成に本腰
「よりオープンなファッション業界へ」
WWD:今年3月に若手クリエイターを発掘するアワード「アミリ プライズ(AMIRI PRIZE)」をスタートした理由は?
マイク:SNSを通じて若手クリエイターからクリエイションやビジネスのアドバイスを求められることも多く、彼らがファッションビジネスのさまざまな課題に直面しているのを目の当たりにしてきた。個別で対応することもあったが、何か大きな働きができないかと考え、次世代に投資するプラットフォームを作ろうと決意した。
WWD:アワードの副賞は?
マイク:賞金10万ドルの授与と技術指導だ。「アミリ」はインディペンデントな立場にあり、新進気鋭のデザイナーたちを柔軟に手助けできる。資金だけでなく、例えばテーラリングの知識を提供するなど、ブランドの軸を見つけようと努める人たちの一助になる働きをしたい。
WWD:次世代の育成は業界の課題だ。
マイク:そう。ファッション関係者は、もっと業界全体を潤すことを考え、オープンで包括的なマインドを持つべきだ。自分のビジネスが成功しても「自分1人の力でここまで来たのではない」と自覚しないといけない。そうするだけで、アクションにつながり、今よりも多くのチャンスが生まれるはず。生活者は単に商品を買うだけでなく、自分の考えと共鳴するブランドを求め始めている。業界自体も変化しないといけない。