毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。 (この記事は「WWDJAPAN」2021年8月2・9日合併号 からの抜粋です)
大塚千践/副編集長:メンズ・コレクション取材歴5年目。デジタルオンリーの取材に飽き始めていたところ、ELIE INOUEさんからの熱量たっぷりな現地リポートでコレクション熱が復活 (右)ELIE INOUE/ライター:武庫川女子大学卒業後、ニューヨークで4年過ごし、パリ在住6年目。今季ミラノ&パリメンズのコレクション取材を担当。ファッションウイーク中の息抜きは中川家の漫才鑑賞 ILLUSTRATION : UCA
大塚: コレクションはコロナ禍で1年半くらいオンライン発表が続いて、その表現の幅がすごく広がった。一方でリアルショーが徐々に復活していて、その良さを改めて実感。皆の「待ってたぜ!」というポジティブなムードを伝える2022年春夏メンズコレ特集にしたかった。エリさんのコレクションリポート(ウェブ)に対する数字もすごく良くて、関心の高さも感じました。
井上: ショーの復活を願う人はどれくらいいるのだろうと思っていたけれど、関心が得られてうれしいです。特に「ディオール(DIOR)」と「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」は本当に感動しました。
大塚: 見たかった〜!この1年半、閉ざされた環境で一部の人だけが見ることは本当に必要か?と自問した人は多いだろうし、なくなることもあるのではと僕も思った。でもやっぱりあの特別な空間には価値があると改めて思ったし、そこにデジタルがいい形で加わると、「最新コレクションの発表の場」はまだまだ面白くなると心強く感じた。このリアルが復活し始めたタイミングでデザイナーは何を考えているのかも気になっていました。
井上: ジョナサン・アンダーソン(J.W.Anderson)と「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」のアレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)が同じことを言っていたのが印象的で。二人とも「このコロナ禍で外に出られない状況の中、自分の心の中に居場所を見つけた」と語っていました。これからの時代を生きるうえでは自分自身との関係性も大事だなと、その言葉にすごく共感。ジョナサンは「ロエベ(LOEWE)」では外に出るワクワク感を出していたけれど、「JWアンダーソン」では家の中でルックを撮影していたので、「来年の春夏も家の中にいると思う?」と聞いたら、「物理的な“家”ではなくて、自分の心の中の平和な場所を表現したんだ」と。面白いと思いました。
大塚: 先シーズンは内に向いて、自分のルーツを掘り下げるコレクションが多く見られたけれど、そこからさらに発展しましたね。そこに居場所を見つけるって新しい考え方だし、模索の結果な感じがして期待が持てる。特集には「ロエベ」でのインタビューを収録したけれど、「JWアンダーソン」の記事がウェブにアップされるのも楽しみです!