国際オリンピック委員会(International Olympic Committee以下、IOC)のアスリート委員会は、東京2020オリンピックでBLM(Black Lives Matter、黒人の命も大切)運動に関連するアパレルの着用といった一部抗議行為を禁止した。オリンピックのテーマにダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包括性)を掲げるが、なぜBLM運動にまつわる意思表示および抗議活動は禁止となったのか。その影響力や背景を考える。
オリンピックと抗議行為をめぐる動き
オリンピックでの抗議活動はもともと五輪憲章第50条で「競技会場や選手村で政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じる」とされている。同条約に基づきIOCは2021年5月、「Black Lives Matter」というフレーズの発言・使用を禁止する方針を示唆したが、同運動の勢いもあって抗議活動にまつわる議論は長く交わされてきた。選手間でも、「オリンピックで抗議行為はするべきではない」と賛同する人もいれば、「意思表示をしたい」と声を上げる人も。複数の見解を考慮してIOCは7月、人権やスポーツ法に精通する識者らに相談した上で禁止ルールの緩和を発表。BLM運動に関連するウエアやアイテムの着用は禁止したが、選手村や競技中、表彰式、国歌斉唱中に行わないことや、ほかの選手を対象としないことなどを条件に、抗議行為の一部を認めた。
声明の中で「アスリートにとって特別な瞬間であるオリンピックを尊重し、大会の焦点がパフォーマンスやスポーツ、オリンピックが掲げる価値観にとどまることは最優先事項だ。今回はそれらに加えて、表現や言論の自由も尊重する決断に至った」と説明する。選手の表現の自由のため、記者会見や報道機関を通じての発言、SNSなどでの発信は処分の対象外とした。アスリートが議論を交わすプラットフォームとして「アスリート365(Athlete365)」を提供するなど、オリンピックの中でも社会課題を取り上げられるよう対応した。
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