サステナビリティ

バンブー素材はコットンに代わる天然繊維になるか

 「WWDJAPAN」6月21日号では、ファッションビジネスと水リスクの関係性について特集した。同号でファッション産業が水資源に与える負荷の一つとして触れたのが、綿花栽培だ。コットンは天然繊維のうち最も生産量が多く、世界資源研究所によると、綿花が栽培されているエリアの57%が、水リスクの高い地域だ。WWFジャパンの安村茂樹自然保護(淡水・教育・PSP)室長は「企業は、原料の生産、加工拠点の水リスクの分析を行い、サプライチェーンを含め、持続可能な調達を促進する必要がある」と警鐘を鳴らす。

 これを踏まえ、オーガニックコットンの選択肢に加えて、バンブー素材に着目するブランドがある。原料となる竹は、栽培時の水使用量が少なく、農薬も必要としないことからサステナブルな素材と言われてきた。バンブー素材に着目する3つのブランドにそのメリットやデメリット、今後の可能性について聞いた。

オーストラリア発のアンダーウエアブランド「ブーディ」

 オーガニック先進国として知られるオーストラリア発のアンダーウエアブランド「ブーディ(BOODY)」は、2018年に日本に上陸した。主販路の自社ECサイトのほか、バラエティーストアを中心に卸先を広げている。

 「ブーディ」は、竹が雨水でも育ち、農薬を使用しないこと、バンブー糸の柔らかさと吸湿性の高さから、快適さと環境への配慮を両立できる素材として採用した。同社が第三者機関に委託して調べたデータによると、コットンと比較して水の使用量は66%削減できるという。現在同ブランドで使用する竹は、中国・四川省のもので「エコサート」の有機認証を取得する。加えて糸から最終製品に至るまでの350以上の有害化学物質が対象となる「エコテックススタンダード100」も取得することで、商品の安全性を保障している。

 日本総代理店のJORICO ENTERPRISES PTY LTDの坂爪恒日本支店長は「日本で販売を開始したのは世界22カ国中20番目。本国からは日本がエコ後進国だと認識されていたが、この1年の業績の伸びを見てその認識が変わり始めている。国内では、滑らかな肌触りや抗菌・防臭・吸水といった魅力が口コミで広がっているようだ。ECでのリピート率は48%と、他国と比較して高い顧客率を獲得できている」と話す。ブラ(税込2640円)やパンツ(同1375円)、ボクサーパンツ(同1760円)などのほか、竹を約90%含んだスエットパンツなどのラウンジウエアが特に人気だという。

 今年5月にはスポーツシーンに対応するアクティブウエアのカテゴリーを新設した。坂爪支店長は「竹のデメリットは吸水性が高いこと。アクティブウエアの中でもスパッツなどを減らし、体に張り付かない商品開発を進め、あくまで竹が天然で持ち合わせる機能性をどう活かすかを軸に改良を重ねている」という。

鮮やかな発色のオーガニックタオル「ヒポポタマス」

 竹はその肌触りの良さや天然の機能性の高さから、パジャマやタオル製品での需要も高い。オーガニックタオルブランド「ヒポポタマス(HIPPOPOTAMUS、以下HPS)」もその一つ。「HPS」のタオルは、アート作品に着想を得た美しい色が特徴だが、それを叶えたのがシルクと同じ凹凸のある構造を持つバンブーレーヨンだった。金澤怜HPS取締役は、「海外で見る鮮やかなカラーのタオルを作りたいという思いから、中空糸のバンブーに着目した。繊維の凹凸で光沢のある発色が魅力だ」と話す。

 バンブーは水と摩擦に弱いという特徴があるが、同社はバンブー糸を単糸で取り扱う工場と手を組み、オーガニックコットンを交織した生地を使用し、バンブーのメリットを生かした商品を生み出した。「HPS」では、「エコテックススタンダード100」の中でも最も基準の厳しいクラス1の認証を取得している。

人を健康にしたいという思いから生まれた「テイクス」

 「メヤメ(MEYAME)」を手掛ける染谷裕亮クリエイティブディレクターは、バンブー繊維「タケフ(TAKEFU)」を核とした新ブランド「テイクス(TAKES.)」を2021年秋冬シーズンに立ち上げた。

 「タケフ」は、ナファ生活研究所(東京、相田雅彦社長)が開発した竹原料100%で作られたセルロース繊維で、これまで竹は化学繊維と混紡されることが多かったが、ナファ生活研究所は竹の抗菌性に着目し、竹100%の医療用ガーゼを開発。染谷裕之テイクス創業者は「(ナファ生活研究所の)相田社長が、バンブー素材でたくさんの人を健康にしたいという想いから20年間かけて開発に取り組んできた話に感動し、興味を持った。実際に『タケフ』のオリジナル商品を着用してみると抜群に着心地が良い。相田社長から、着心地が良い衣服を身にまとうと筋肉が緩み、血液の流れが良くなり、免疫力を高めてくれるという話を聞き、これを用いたカッコいいオリジナルTシャツを作りたいと思った」と話す。

 「タケフ」100%では型崩れやピリングなどの問題があるが、少なくとも50%使用することでその効果が期待できるため、3種類のオーガニックコットンを混紡して糸を開発した。シルクのような肌触りと、消臭性や抗菌性、遠赤外線効果などの機能性を備えたTシャツ(同8800円〜)が完成した。アイテムはユニセックスで、ロンハーマン、東京・銀座の和光、「シンゾーン」で販売する。

 染谷クリエイティブディレクターは、「『TAKEFU』はオーガニックコットンよりも買いやすい値段だ。ただ相田社長は志を共にする企業を慎重に検討しているので、みんなが『TAKEFU』を使用できるとは限らない。しかし、バンブー素材自体はオーガニックコットンよりも普及するハードルは低いのではないか」話す。今後は、「TAKEFU」50%と異素材の組み合わせでラインアップを拡充していくほか、竹100%の生地開発にも挑戦していくという。

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