ウエルネスを事業領域とするスタートアップ企業のオイテル(東京都、小村大一社長)は、商業施設やオフィス、学校、公共施設などの個室トイレで生理用ナプキンを無料で提供するサービス「オイテル(OITR)」を開始した。8月下旬から、三井ショッピングパークららぽーと富士見のほか、横浜市、川崎市、東京都中野区、豊島区と連携し、同地域の公共施設などで順次導入する。
同サービスは、デジタルサイネージ広告が流れるディスペンサーを個室トイレに設置。利用者は無料のアプリをダウンロードし、アプリを起動した状態でスマートフォンをディスペンサーにかざすと生理用ナプキン1枚を取り出せる。2回目以降は初回の2時間後から利用でき、25日を期間とし一人につき最大7枚無料で取り出すことができる。収益は企業から募った広告収入で、提供する生理用ナプキンとシステム運営管理費は同社が負担する。導入施設の生理用ナプキンの在庫は、災害時には備蓄品として活用してもらう。
中でも、依然として女性の正規雇用率が低いことや、女性特有の健康問題に対する社会インフラが整っていないことに着目した。飯﨑専務は「特に女性は生理用品の購入のために、男性よりも多く税金を支払っていることや、生理休暇が名ばかりの制度で、女性の働きやすい環境には寄与していないことなどに課題感があった。リサーチを重ねる中で、『なぜトイレレットペーパーは当たり前に常備されているのに、生理用品はないのか?』という不満を見つけ、ハッとした。より良い社会の実現のためには、違いを理解して補いあう仕組みが必要で、『オイテル』はそれに向け、必要不可欠な社会インフラだと確信した」という。
ららぽーと富士見で実施した実証テストでは、同サービスへの需要の高さが証明された一方で、「『生理の貧困』には当てはまらないため使って良いのかためらった」というコメントもあった。飯﨑専務は「日本で『生理の貧困』とは、金銭的な貧困と解釈されているが、私たちは心理的なストレスも含めた広義の意味でこの問題を解決したいと思っている。例えば、急に生理になった女性がトイレットペーパーをあてがって、コンビニまで走らなければいけない事例もある。生理にまつわるさまざまなストレスから女性を解放し、不均衡を是正することが狙いだ」と強調する。
今後は商業施設や大学などで導入を予定しており、初年度でディスペンサー3000台の導入を目指す。さらに、学校などの広告配信ができない施設に向けてボックスでの生理用ナプキンの提供や、アプリのダウンロードを必要としないディスペンサーの開発も進める。飯﨑専務は「ビジネスで社会課題を解決できないかという思いから始まった。『オイテル』を通して、企業が社会課題に貢献できるエコシステムを構築していきたい」と話す。