ファッション

ベイクルーズ杉村CEOに聞く 独立系セレクト、ヌビアンと提携した理由

 ベイクルーズグループは、9月1日付での組織再編を予定している。それに先駆ける形で6月には、セレクトショップのヌビアン(NUBIAN)を運営するヴェイパース(東京、吉野誠社長)と資本業務提携を締結した。約40のファッションブランドを手掛けるベイクルーズにとって、独立系セレクトショップとして唯一無二のポジションを築くヌビアンとタッグを組む狙いとは。杉村茂ベイクルーズCEOに話を聞いた。

WWD:ヴェイパース吉野社長との出会いは?

杉村茂ベイクルーズCEO(以下、杉村CEO):吉野社長はコロナ以前から、ヌビアンをさらに成長させていくための方法を模索していたようで、経営課題などの相談に乗ったり、情報交換をしたりしたのが始まりだった。吉野社長は非常に真面目で、夢や希望を持っている人物だ。これまでは会社の総務・経理といった細かい業務もこなしてきたが、彼のさまざまなアイデアを生かし、よりビジネスのクリエイティブな部分に集中できる環境を整えたいと考えていたようだ。ヌビアンが、3坪(約10平方メートル)の小さな店でスタートし、卸売りという業界の仕組みを知らなかった吉野社長が一人で海外へ飛んで現地で現金で買った商品を販売していたといった話は、ベイクルーズの原点とも似ている。ファッションを基盤にするベイクルーズと、ヒップホップなどの音楽カルチャーを基盤にするヌビアン、スタンスの違う両者がそれぞれ持っているものを合わせることで何か面白いことができると感じ、興味を持った。

WWD:杉村CEOにとって、ヌビアンの魅力とは?

杉村CEO:“ラグジュアリーストリート”テイストの人気に火がついた約3年前頃から、4、5万円のTシャツを売るパワーのある店として注目していた。ヌビアンの最大の魅力は、圧倒的なお客さまへの影響力だ。同じテンションでうちのブランドが発信しても、集まるブランドや人は変わってくる。特に、われわれのメンズブランドはトラッドがベースだが、ヌビアンは音楽に根差した趣味嗜好の異なる客層を持っている。

WWD:ヌビアンと提携することで、ベイクルーズの課題だった若年層の獲得につながると考えた?

杉村CEO:まさにそうだ。正直、われわれが自社で“ラグジュアリーストリート”の店を作り、10年頑張ったとしても行き着けない領域にヌビアンはある。一方で、ヌビアンはわれわれと組むことで、われわれの人事や経理などのサポートを役立ててもらえる。互いにメリットがあるのではないかと考えた。

WWD:どのようなシナジーを期待する?

杉村CEO:ヌビアンにとっては、営業管理や財務管理などのわれわれのサポート部門が持つノウハウが役に立つはずだ。メーカーが祖業であるベイクルーズとして、ヌビアンに(オリジナルブランドを作る際の)モノ作りの背景も提供できる。ベイクルーズとしては、吉野社長との会話の中で、「次、こんなブランドが流行る」「こういう人がくる」といった、感度の高い情報を得ることができる。ヌビアンの持つマーケットに間接的に関われることはわれわれにとっても大きなメリットだし、ヌビアンの時代の捉え方が、今後のベイクルーズグループの成長につながると確信している。

WWD:ヴェイパースにはベイクルーズから役員などを出向させるのか。

杉村CEO:それはない。ベイクルーズグループとして、ヴェイパースをわれわれの色に染めるつもりは全くない。ヌビアンはヌビアンのまま成長してほしいし、その上でこちらがアドバイスできるところは手を貸していく。ヌビアンの若い会社ならではのチャレンジ精神を削るようなことがあってはならない。彼らが彼ららしい挑戦ができるようにサポートするつもりだ。

WWD:飲食事業などのノウハウも提供していく?

杉村CEO:まだ具体的な話は進んでいない。ただ吉野社長から提案したいアイデアはあると聞いている。その際にはうちのチームがバックアップできるだろう。

WWD:今後の展開は?

杉村CEO:吉野社長も事業を拡大したいという思いはもちろんある。今後5年でコロナ前の3〜5倍くらいに売上規模を拡大していきたいという話はしている。個性を保ったまま規模を大きくしていくためには、国内だけで出店を考えず、アジアなど海外への出店も視野に入れている。将来的に両社のリソースをドッキングした新規事業も始める。

WWD:ベイクルーズでは今後も資本業務提携やM&Aに力を入れる?

杉村CEO:さまざまな話はいただいているが、会社の規模を大きくするためだけのM&Aはしない。ベイクルーズにはないようなマーケットや魅力を持っている企業やブランドなど、うまく相乗効果が出せそうな相手とは検討していくつもりだ。

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