左から、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、川上輝(Dr)、市川仁也(Ba) 2014年8月に3人で活動開始。ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。15年6月11日に開催の渋谷WWW企画「NEWWW」でVJ映像も取り入れたアート性の高いパフォーマンスで称賛を浴びる。葛西敏彦をエンジニアに迎え制作された、デビューEP「EP」を7月8日にリリース。16年4月20日にファーストアルバム「D.A.N.」を発売。「フジロックフェスティバル2016」の1日目(7月22日)にも出演する。 Photo By Ko-ta Shouji
2014年8月に櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人によって結成され注目のバンド、D.A.N.(ダン)。昨年7月にデビューEP「EP」を発売し、高い評価を得ていた彼らだが、今年4月にバンド名を冠したファーストアルバム「D.A.N.」は発売直後から音楽関係者だけなく、多くのクリエイターから絶賛され、一躍注目される存在となった。3人とも同い年の22歳とまだ若いが、ミニマルメロウな楽曲やクリエイティブに対する姿勢からは、新たな時代の感性を感じる。今回、彼らの創造性がどこから生まれてくるのか、ロングインタビューを通してその秘密に迫った。
アートワークの細部までこだわって作る
WWD JAPAN(以下、WWD): まずは「D.A.N.(ダン)」というバンド名の由来は?
櫻木大悟(以下、櫻木):それ、取材の度に聞かれるんですが、残念ながら意味はなくて(笑)。言葉の響きとリズム、覚えやすさだけで決めました。「D.A.N.」の間の「.(ドット)」も字面のよさだけで入れています。
市川仁也(以下、市川):「A.P.C.(アーペーセー)」的な感じだよね。別に何かの頭文字とかではなく、ロゴっぽく考えました。
川上輝(以下、川上):「ドット」がなくて「DAN」だと、見た目の印象が窮屈で味気なくて、それで「ドット」入れようって話になって入れたんだよね。
市川:最後の「ドット」が抜けて記載されることもあって、それだとバランスが悪いんで、絶対入れてほしいです。
櫻木:3人とも、「好き」「嫌い」とか、「カッコいい」「ダサい」と思う価値観が似ていて、共有できるので、そういった話はよくします。
川上:そうしたことをしっかりと話し合えるから、この3人でやっているんだと思います。
WWD:4月にファーストアルバムを発売して、多くの反響があったのでは?
櫻木:僕ら自身は変わらないんですけど、周りからの反響は大きく、SNSとかでも「聴いています」っていうコメントも増えました。多くの人に聴いてもらえていると実感でき、本当に嬉しいです。
市川:同じ曲でも人によって解釈が違っていて、それはそれでおもしろいなって感じます。
WWD:クリエイターやファッション関係者にも人気だが?
川上:僕らがいいと思うものが、そういった人たちに評価されるのはうれしいです。
ファーストアルバム「D.A.N.」
WWD:CDのアートワークもすごくセンスがいいと思うが、それはどう考えた?
川上:アートディレクターは、僕たち3人が尊敬しているZAN(ザン)というクリエイティブ・ユニットにお願いしました。普段は古着を再構築して新しい服を作ったり、写真を撮ったりしている人たちで、昔から知っていて、任せても絶対いいものができるという信頼もありました。それでアイデアを出してもらいながら、みんなで話し合って詰めていきました。
櫻木:2人ともセンスよくて、考え方も尊敬できます。
市川:撮った写真も最高なんです。
櫻木:今回、CDのジャケット写真だけでなく、歌詞カードの裏面の写真も撮影してもらい、それで「この曲にはこの写真が合うね」とかみんなで話し合いながら、使う写真を決めていきました。なので、歌詞カードの裏面の写真にも注目して、曲を楽しんでもらいたいです。
市川:僕らのアー写も作業の合間にポラロイドで撮影してくれて、それも自然体な雰囲気が表れていて気に入ってます。
WWD:アートワークに対する強いこだわりを感じるが?
櫻木:アートワークはかっこいい方がいいと思うし、ものとしてほしくなるものを目指して作っています。今回のCDジャケットはすごくD.A.N.っぽくて、これを見たら、バンドのイメージが伝わる。タイトルの文字が小さいのも、シンプルで好きです。
川上:自分たちの作品なので、細かいところまでこだわって、自信を持って出したい。このCDは自分たちで見ても最高だなって思いますね。
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自分たちの意志でバンドをコントロールしていく
反骨精神は「けっこうある方だと思うよ(笑)」と櫻木。
WWD:CDは自主レーベル「Super Shy Without Beer(SSWB)」と「Bayon production」との共同で発売されているが、自主レーベルにこだわる理由は?
川上:自主レーベルを作ったのは、最初は意志表明的な感じでした。
櫻木:レコード会社に言われてやるのではなく、自分たちのクリエーションや活動に対して、意志を持ってやっていこうという感じで。
川上:そうはいっても自分たちで全部できるわけではないので、僕らのやりたいことを理解してくれて、話し合える人とやっていきたいなと思っていて、そこで「Bayon production」の北澤さんに出会って。
市川:北澤さんはすごく柔軟に話を聞いて僕らの意見を尊重して、やりたいことをやらせてくれている。自分たちが誰かにコントロールされるようになったら、何のために音楽をやっているのか分からないので、しっかりと意志を持ってやっていきたい。
川上:今は自分たちのやりたいことができているので、すごく幸せです。
WWD:D.A.N.からはどこか反骨精神を感じるんだけど、そういうのは持っている?
川上:どうですかね。ありますかね。
櫻木:いや、けっこうある方だと思うよ(笑)。
WWD:楽曲はどういう感じで作っている?
櫻木:まずは作曲から始めるんですが、僕が事前にデモを作って持っていったり、3人でセッションしながら作ったりしています。心地良さを重視して、みんなでこんなのがカッコいいとか話しながら作っていくことも多いです。詞に関しては、仮歌の時は英語みたいな感じで、その音とかリズムを集中して聞いて、こういう言葉がはまりそうだなっていうのをいっぱい書いていって。ファーストバース(最初の言葉)で、曲の本質的なものを決まるので、それを考えて、あとは自分の中で、言葉のつながりを考えながら書いていく。
WWD:言葉は自然と出る?
櫻木:いつも苦戦します。また書かなきゃって思うとつらいです(笑)。
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無機質と有機的なバランスこそバンドの核
サッカーコラムを書けるほどのサッカーファンだという川上
WWD:音楽以外で影響を受けたものは?
櫻木:写真とかは大きいです。写真家とかそんなに詳しくないけど、写真は買ったりします。写真の質感というか、雰囲気を見て、参考にしています。
川上:曲とかも写真からイメージがわくこともあったりするよね。
市川:曲を作っている時に、「この曲、あの写真の雰囲気と似ているよね」って話したりして。曲作りにおいてもイメージを共有する時に写真を使ったりもしています。
櫻木:写真家のウィリアム・エグルストンとか好き。光の感じ方、捉え方とか、写真を見ているとすごいなって感じます。どんな感じで世界を見ているのか、気になります。そういうのを想像するのもおもしろくいですね。写真を好きになったのは、ドイツの写真家のアンドレアス・グルンスキーの展示を見てからなんです。そう考えると、音楽もそうなんですが、ドイツのもの作りには影響を受けているかも。すごくミニマルな感じとか、それが自然と融合して、有機的なものと無機質なものがうまく調和しているのが好きです。
WWD:音は無機質だけど、演奏はすごく熱量があるのも、そういうところからきているのかも。生演奏にこだわるのも、そうしたバランスが好きだから?
櫻木:そうだと思います。無機質だけど、有機的。そういうバランスが好きです。
市川:逆のものをいいバランスで組み合わせるっていうのに惹かれます。
川上:無機質と有機的なもののバランスが僕らの核の部分になっていると思います。
WWD:他に影響を受けたものはある?
川上:僕はスポーツですね。もともとサッカーをやっていて、辞めてから音楽を始めたんですけど。辞めて違う視点でサッカーを見るとやっぱりいいなって感じです。
櫻木:川上は本当にサッカー好きで、サッカーコラム書けるよね?
川上:いつでもコラムのオファー待ってます(笑)。
櫻木:UKだとサッカーと音楽の関係が密接じゃないですか。そういうことを語らせたら、ずっと話してると思います。
川上:イギリスだとサッカーの試合で入場する時にアンセムがかかったり、NBAでも、試合前にDJが会場を盛り上げたりして、やる方も見る方もワクワクする。海外だと音楽とスポーツって結びつきが強いんですけど、日本はその辺りがまだまだ弱い。
櫻木:海外のスポーツ選手だと、聞いている曲もセンスいい人多いよね。
市川:日本だとスポーツやっている人だと、音楽を含めて、カルチャー好きな人ってそんなにいない感じがする。
川上:でも、テニスの錦織選手は試合前にNujabes(ヌジャベス)を聞いているって言って、センスいいなって驚いた。スポーツにもリズム感って必要だから、そういういい感覚を持っているから世界のトップレベルにいるんじゃないかって。だから、スポーツ選手はいい音楽聞いた方がいいのになって思います。
READ MORE 3 / 3 メンバーはみんな古着好き
売れる、売れない、よりも多くの人に曲を聴いてもらいたい
古着好きなメンバーだが好みが1人1人違う、と川上
WWD:ファッションに対してこだわりはある?
櫻木:基本的にはみんな古着好きですね。
市川:三茶とか下北とか、行きつけの古着が何軒かあって、そこで買ってます。
川上:ファッションに興味を持ち始めて、それこそ最初は「ジーンズメイト」とかでしたけど、徐々に人と違う服が着たいって思い始めて、古着を着るようになりました。古着って、それ1点だけじゃないですか。それが魅力。
WWD:3人で買いに行ったりもする?
櫻木:3人で服買いに行こうって感じはないですね(笑)。仲がいい古着屋があって、そこには服を買いにいくというよりもスタッフの人に会いに行くって感じです。
市川:高校時代から通っている古着屋も何軒かあって、たまり場的な感じ。そこに行って、いいものがあったら買っています。
櫻木:服でも「この形がいい」「この色がいい」とか話しするのもおもしろいよね。
川上:古着は好きなんだけど、その中でも好みが1人1人違っていて。
WWD:ブランドに対するこだわりは?
川上:特にないですね。ただ、靴とかは古着だとすぐダメになっちゃうから新品とかの方がいいかも。
櫻木:そうだね。靴やメガネとかは、新品でなるべくいいものを選ぶようにしていますね。
WWD:次作はもう制作に入っている?
櫻木:まだ制作はしていないです。今はインプットをする時期かなと考えていて。
川上:次作も自分たちのやりたいことをやるっていう感じで。
市川:今回のアルバムは自分たちが本当にいいと思うものを追求してできた。次も同じよう作っていく。
川上:今回、できなかったこともあるので、次はよりブラッシュアップできたらいいなと。
櫻木:間違いなく、洗練されたものができると思います。
WWD:将来は?
川上:無理せず、楽しく生きていけたらいいです(笑)。
櫻木:みんな家庭を持ったりして。それで年に1回くらい海外にライブに行ったりして。
市川:幸せって感じられていたらいいよね。
WWD:すごく自然体ですが、もっと売れたいって思う?
川上:売れたらいいけど、無理して売れたいとは思わない。
櫻木:商業主義に走り過ぎないというか、それは大事なことだと思うけど、自分たちのやりたいこととバランスよくやっていきたい。
市川:売れる、売れないはともかく、多くの人に自分たちの曲を聞いてもらいたいっていう思いはあります。
櫻木:今の時代本当にいいものなら、伝わっていくと思うので、僕らは高いクオリティーの音楽を作り続けていきたいです。