ファッション

ファッションデザイナーはスピリチュアルがお好き ゲン担ぎから“シャーマン”起用まで

 コロナ禍で不安な状況が続いていますが、こういう世の中だと占いやスピリチュアルが流行る、という話があります。ウェブメディアではまさに、占いコンテンツが花盛り。編集者の友人いわく、「占いコンテンツのPVはエグい(猛烈にいい)」。他の記事とはレベル違いによく読まれるらしく、それゆえ人気記事のランキングからあえて外している媒体もあるそうです。誕生石や星座、ラッキーチャームにちなんだお守りジュエリーも引き続き人気ですし、「お財布は“一粒万倍日”に買う・使い始める」という話が市民権を得るようになったのも、ここ最近のスピリチュアルブームの一環と言えるかもしれません。

 そんなことをなんとはなしに考えていたら、先日「WWD」の米国版に大変興味深い記事を見つけました。記事タイトルは「デザイナーはなぜスピリチュアル好きなのか」。もうタイトルからして絶対面白い予感しかしません!しかもこの記事、8月13日の金曜日を狙ってアップされていたんですよ。13日の金曜日は、キリスト教圏では昔から不吉とされている日ですね。だから「デザイナーたちは今ごろ、ウサギの足(ラッキーチャームといわれるものの一つ)を探しているはずだ」と記事冒頭にはありました(笑)。

 同記事によれば、「ファッション業界では、占い師、タロットカード、お守り、さらにはシャーマンまでもが(←!)長きにわたって重用されている」と。であるからして、「ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)が5を、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が7をラッキーナンバーにしていたことなんて、デザイナーたちのスピリチュアル好きエピソードのほんの一部に過ぎない」らしいです。「現在『バーバリー(BURBERRY)』を率いるリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)のラッキーナンバーは17なので、彼のインスタのアカウントにも17と入っているし(@riccardotisci17)、Tシャツのプリントなどにもよく17が使われている」とも。

ムッシュディオールも大の占い好き

 他にも、同記事にはスピリチュアル好きデザイナーの話がてんこ盛りです。例えば、「かつて『ディオール(DIOR)』のデザイナーを務めたジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferre)は17を忌み嫌っていたので、コレクションルックには毎回17番がなく、16bis(=16番その2)となっていた」とか、「ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)はファッションショーのとき、靴の中に家に代々伝わるラッキーコインを必ず入れていた」とか。こういうのは、スピリチュアルというより験(ゲン)担ぎと言った方がいいかもしれないですね。

 フェレ以外でもイタリア人には17を避ける人が多いと書いてあるのですが(日本人が4=死を避けるのと同じですね)、「イタリア人でもティッシはタロットカードの17番目である“星”を気に入っているから17を好んでいる」とも。あ、ここで注意点ですが、元記事はこれら全エピソードについて本当かどうか裏を取っているわけではないと思うので、あくまで「そんなウワサがある」というレベルで楽しんでくださいね(笑)。

 まだまだエピソードは続きます。「クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)はまだソルボンヌ大の学生だった1970年代に、パリのファッション業界人の間で人気だった占い師を訪ねた。そこで『アルノーという名の人物が、あなたの人生で非常に重要な役割を果たす』と予言され、走り書きのメモを渡された」と。数年後ラクロワは、それが彼を「ジャン・パトゥ(JEAN PATOU)」から引き抜き、87年に彼自身のクチュールハウスを立ち上げさせたラグジュアリー界の巨人ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)のことだったと気付く。そして占い師から受け取ったメモを見返してみると、なんとそこには彼が使用するようになっていたロゴが描かれていた……!!と話は続きます。いいですねいいですね、徐々にスピリチュアル濃度が増してますね(笑)。

 お次は「ディオール」の現アーティスティックディレクター、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)について。彼女がタロットカードや占いを好んでいることは、コレクションを見ていても感じますよね。21年春夏のクチュールコレクションはタロットカードの世界観を壮麗な刺しゅうで表現していましたし、お守り風リングなどのジュエリーも多数企画しています。「もともと、ムッシュディオール(Christian Dior)自身も非常に占いやスピリチュアルが好きで、マダムドラエ(Madame Delahaye)という占い師を信頼していた」と記事にはあります。

 マリア・グラツィアは以前の「WWD」米国版のインタビューに「私は占いやタロットの世界に魅了されている。タロットや星座のモチーフは、どの国の顧客も理解できる、視覚的で普遍的な言葉のようなもの。そうした謎めいたモチーフをイブニングガウンに刺しゅうすることは、夢のような美しさを形あるものに変えるということであり、それはクチュールが最も得意とするもの」と語っています。

屋外ショー増加でシャーマン起用がトレンド?

 さて、先ほど「ファッション業界はシャーマンまで重用している」という話がありました。驚かれた人も多いでしょう。私もその一人です。単なる占い師だったら、fortune tellerとかforecaster、divinerとか他にもいろいろ単語があるので、ここでシャーマン(shaman)というミステリアス度マシマシな単語を使っているのにはそれ相応の意図があるんだと思うんです。というわけでオックスフォード英英辞典でshamanを調べてみたところ「特に北アジアや北米の一部の人々の間で、善悪の精霊の世界に通じて影響力を持つと見なされている人のこと。通常は儀式の際にトランス状態になり、占いやヒーリングを行う」とありました。いやー、イメージはしていましたがやっぱり単なる占い師よりも意味が強いですね。

 シャーマン登場でスピリチュアル濃度もマックスですが、実は私、シャーマンについての話は以前も聞いたことがあるんです。あれは2019年の秋、弊紙の現編集統括、向千鶴とパリ出張でコレクション取材をしていたときのこと。そのシーズンは雨が多く、向が「屋外ショーが雨にならないように、シャーマンを起用しているメゾンがある」と話していました。そのときは冗談だと思っていたんですが、これのことだったのか!と。

 記事には、「『ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)』が、インスタグラム上でザ・ウェザー・サン(The Weather Son)という名前で活動しているブラジルのシャーマン、オスマール・サントス・スクリトリ(Osmar Santos Scritori)氏をいくつかのショーで起用したと複数のメディアが報じている」とあります。それだけしか書いてないので、起用されたシャーマンが実際どのような働きをしたのか(晴れるように祈祷するのか、どんなアイテムを使うのか、実際晴れたのかなど)は分かりません。非常に気になりますね!

 「コロナ禍で屋外ショーが増えているため、雨が降らないようにシャーマンを起用するブランドが増えるかもしれない」とも書かれていました。なんとなんと、シャーマン起用が今後のトレンドになるかもしれないのです。「情報筋によれば、『アライア(ALAIA)』は7月4日に行われたピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)の屋外デビューショーでシャーマンを起用した」と。その甲斐あってか、「待ち時間の最初の方は少し雨がぱらついたものの、ショーは成功した(=晴れた)」と。

 以上のような内容が「WWD」米国版の記事からの抜粋ですが、皆さん楽しんでいただけたでしょうか。「ファッション業界は非常に浮き沈みの激しいビジネス。それゆえ業界人には占い好き、スピリチュアル好きが多い」とも記事にはあり、非常に納得した次第です。繰り返しになりますが、この記事はあくまでも「そんなウワサがある」くらいの感じで楽しんでくださいね!

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