東急不動産は、原宿エリアの活性化のため草の根活動に取り組む。その一つがプロデュース集団のニューピース(東京、高木新平社長)との協業だ。リノベーションした古民家を会場に、アーティスト作品を集めたギャラリーを9月22日まで開催する。同社が神宮前交差点で建設中の大型複合施設(2023年開業予定)に向けて、草の根で原宿のカルチャー発信を盛り上げる。
神宮前交差点から一本入った場所の古民家を改装した「アンノン原宿(UNKNOWN HARAJUKU)」を発信拠点にする。3年前に東急不動産がこの物件を購入し、古民家の趣をそのまま残したイベント施設にした。開催中の展示販売会「アンノンギャラリー2021サマー」(8月6日〜9月22日)のほか、ポップアップストア、展示会、撮影、演劇など多目的に使い、さまざまな分野のクリエイターが発信し、交流する場として定着させる。
東急不動産・渋谷プロジェクト推進第二部の大西諒氏は「さまざまなクリエイターの力を借りて、次世代の消費にアプローチしていきたい」と話す。同社は東急プラザ表参道原宿、キュープラザ原宿などの大型商業施設や大型店舗の運営を行なっているが、それだけでは消費の変化に十分に応えられていないという。人気ファッションブランドや飲食店のリーシングでは対応できないカルチャーへの関心に、小回りが利くアンノン原宿で応える。「商業施設はどうしても複数年の賃貸借契約や安くない家賃などの縛りがある。アンノン原宿は若いクリエーターが自由に表現する場であり、短いサイクルで内容を変えていく」
背景には原宿の発信力低下への問題意識がある。かつては新しい若者文化を次々に生み出した原宿だが、地価高騰に伴い、大手資本でなければ出店が難しい街になった。結果的に街の個性は薄まる。デジタル化の進展、そして長引くコロナ禍によって若い活力がストリートから失われている。
東急不動産は23年に神宮前交差点に開業予定の大型複合施設「神宮前6丁目地区第1種市街地再開発事業」をにらみ、従来の商業施設開発とは異なるアプローチが必要と判断し、若手を中心にプロジェクトチームを立ち上げた。
協業相手であるニューピースの田中佳佑クリエイティブディレクターは「原宿は多くのカリスマを生んできた街。世の中の軸足がネットに移ろうとする中、オフラインとオンラインを融合した新しいスタイルで、刺激的なコミュニティーを作りたい。東急不動産のような大きな会社にしか出来ないことがたくさんある」と話す。取り組みは始まったばかりだが、SNSやECなどとも連携し、リアルならではの体験価値を磨く。