ヒッピールックに代表される1970年代ファッションが復活してきました。さまざまな制約があり、気持ちが縮こまりがちな今、自由で開放的なセブンティーズのムードに引き寄せられるところがあるようです。リバイバルの主役は、“ラブ&ピース”を合言葉としたヒッピーな装い。“きれいめ&リラックス”のテイストにアップデートするのが現代風“ネオヒッピー”の流儀です。
たとえば、「ディオール(DIOR)」がオンラインで発表した2021-22年秋冬コレクションのセレブスナップでは、女優のドリー・ヘミングウェイ(Dree Hemingway)がマルチカラーのストライプを施したマキシ丈スカートを着用。すっきりとした印象のストライプ柄でスタイリッシュに仕上げたところがレトロに偏らない今のさじ加減。セレブリティーの着こなしをお手本に、リアルなスタイリングに取り入れるコツを、「ディオール」の2021-22年秋冬シーズンと、2022年プレ・スプリングシーズンのスナップからアイテム別に紹介します。
“タイダイ柄”×ストライプの“柄on柄”コーデで動きをプラス
ヒッピーのキーモチーフといえば、タイダイ柄。音楽フェスティバルやビーチレジャーで見られるTシャツスタイルがおなじみですが、スペインのファッションブロガー、ガラ・ゴンザレス(Gala Gonzalez)は、ゆったりしたライトなアウターをチョイス。面積が広い分、タイダイ特有のボヘミアンムードも強まって見えます。
ドローストリングスの超ワイドパンツと合わせて、さらにリラックスしたムードに。ストライプ柄のパンツと、タイダイ柄のアウターで柄on柄に仕上げました。マルチストラップのフラットサンダルも伸びやかな印象。そこに、クラシックな「レディ ディオール」を携えることでカジュアルさを抑え、品格を添えているのがポイントです。
“デニムジャケット”はシアースカートとブーツで強弱を演出
70年代ファッションで欠かせないのが、デニム仕立てのウエア。ヒッピーが好んだ反権力・反体制のシンボル的な素材です。デニムジャケットをタフなムードで着こなすのが当時の着こなしでしたが、現代版のスタイリングではロマンチックやフェミニンなムードをミックスするのがポイントです。
モデルのエレーナ・ペルミノヴァ(Elena Perminova)は、デニムジャケットに透けるシアースカートを合わせて、エアリーなムードをまといました。足元にはゴツめブーツを配して、強弱のあるテイストミックス“ネオヒッピー”に仕上げています。太ベルトでウエストをしっかりマークしつつ、バケットバッグで抜け感を出す小技も効いています。
“フレアデニム”はブラックアイテムでクールさを強調
裾が広がるフレアデニムは、ヒッピーファッションの代名詞的なボトムスです。風をはらむ裾から感じる自由で奔放な雰囲気は、今の私たちが求めるムードそのもの。半世紀を経て、現代風にアレンジするには、クールな印象を加えるのがおすすめです。
フランスの歌手、バルバラ・パラビ(Barbara Pravi)は、プラットフォームブーツを選んで、フレアなデニムパンツに負けないインパクトを添えました。チェーンバッグを体の真正面に斜め掛けすることで、ブラックの引き締め効果もパワーアップ。スリーブレスの白シャツに刺しゅう入りの黒トップスを重ねて、ブラックの3点コンビネーションを強調しています。
“フラワープリント”は甘さを抑えたダークロマンチックが決め手
“ラブ&ピース”のメッセージを代弁する花柄は、ヒッピーの分身のようなモチーフです。当時の若者を指す“フラワーチルドレン”という言葉でも知られています。幸福感や開放的な気分を象徴するモチーフでもあり、70年代ルックのお約束的存在。モダンに着こなすなら、ダークカラーを選びましょう。
アテネで開催した2022年プレ・スプリング・コレクションに来場したミランダ・カー(Miranda Kerr)は、甘さを抑えた黒がベースの花柄ワンピースを着用。首周りが詰まったレディーライクなシルエットがクラシカルな雰囲気を演出しています。一方で、正面に入った深いスリットで適度にセンシュアルさを漂わせて二面性をアピール。渋めのトーンでまとめた“ダークロマンチック”のコーディネートが、着こなしの鍵となっています。
“カフタン”は脚見せでチャーミングかつヘルシーに
アフリカやアジアを含め、世界的な連帯感と共感を重んじたヒッピーにとって、民俗調の装いは特別な意味を持っていました。ゆったりとしたフォルムのカフタンも、ヒッピー文化を示すアイテムです。ゆるっと着るのが一般的なスタイリングでしたが、“ネオヒッピー”では、チャーミングにアレンジしています。
モデルのカミーユ・ロウ(Camille Rowe)は、ミニワンピース風のカフタンをキュートに着こなしました。ウエストは共布ベルトで絞って、すっきりとした印象。カフタン特有のくつろいだムードは保ちながらも、ベビードールのような見え具合にひとひねり。脚見せでヘルシーさも際立たせました。
70年代ファッションは、のどかで気負わない雰囲気が持ち味。緊張から解放されたいと願う、今のマインドにもなじみます。ほかにもフリンジや丸眼鏡、バンダナなどさまざまな選択肢があるので、多彩にアレンジできます。セレブが披露したさすがな着こなしをお手本に、70年代スタイルを取り入れて、“ネオヒッピー”な気分に浸ってみませんか。